■1991年に発売されたクルマを振り返る
今から30年ほど前、日本は未曾有の好景気にわいていました。1989年には日経平均株価が3万円を超え、東京23区の土地をすべて売ればアメリカ全土を買うことができるといわれたほど、当時は土地の価格が上昇。
1980年代の終わりから1990年代の初頭にかけて起こった、いわゆるバブル景気です。
同時期には日産「シーマ」や「R32型 スカイラインGT-R」「Z32型 フェアレディZ」、トヨタ「セルシオ」、ユーノス「コスモ」「ロードスター」、ホンダ「NSX」など、今も語り継がれる名車が数多く誕生しました。
しかし、1990年にはバブル崩壊への序章が始まり、1991年には明らかに土地価格が下落、そして1993年には完全に不況という状態になります。
一方、バブル崩壊が始まっていた1991年ですが、まだ各メーカーとも余力があり、素晴らしいクルマが登場しました。
そこで、1991年にデビューした記憶に残る名車を、3車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「ビート」
1991年5月、ホンダはそれまでにないミッドシップオープン2シーターの軽自動車「ビート」を発売。
ボディはキャビンを車体中央よりもやや後ろに配置した絶妙なバランスで、低いボンネットからリアまでなだらかに上昇するラインは美しささえ感じられたほどです。
ルーフは手動式のソフトトップを採用して手軽にオープンエアモータリングが楽しめ、ソフトトップを開けても閉めてもスタイリッシュなフォルムを実現。
室内はシート生地にゼブラ柄を採用するなどポップな印象で、着座位置が低かったことから体感的なスピードが速く感じられたほどです。
リアアクスルのほぼ直上に横置きに搭載されたエンジンは660cc直列3気筒SOHCで、「アクティ」や「トゥデイ」のエンジンをベースに開発。専用の3連スロットルが奢られ、カムシャフトやピストンも専用となっており、最高出力は自然吸気ながら64馬力を発揮します。
サスペンションは4輪ストラットの独立懸架を採用し、パワーステアリングレスのクイックなハンドリングによって軽スポーツカーを体現。
スピードを出さなくても「ファン・トゥ・ドライブ」が体験できるモデルとして、ビートは人気となりました。
しかし、バブル崩壊の影響もあってか次第に需要は低迷し、1996年に生産を終了。
なお、同時期にスズキからFRの「カプチーノ」が登場し、1993年にはMRでガルウイングのオートザム「AZ-1」が発売されたことで、後にこの3車種は「軽のABC」と呼ばれました。
●三菱2代目「パジェロ」
1982年5月に誕生した三菱初代「パジェロ」は、同社の本格オフローダー「ジープ」に匹敵する高い悪路走破性と信頼性を持ちながら、普段使いも可能な快適性や走行安定性を実現した新時代のクロスカントリー4WD車として高く評価されます。
しかし、本格的なクロカン車を必要とするユーザーは限られており、発売当初の初代パジェロはヒットには至りませんでした。
ところが、1980年代の終わりにスキーブームが起こり、アウトドアレジャーが盛んになると徐々にパジェロの人気が急上昇。
そして1991年1月に、悪路走破性や走行性能、快適性、安全性を大きく向上させた2代目パジェロがデビューしました。
ボディバリエーションはショートとロングに大別され、ショートでは標準の3ドア「メタルトップ」と、2ドアで後席がオープントップとなるアクティブな「Jトップ」を設定。
ロングでは3列シートでラグジュアリー性を兼ね備えた「ミッドルーフ」、後席がハイルーフとなる「キックアップルーフ」が設定され、さらにロング/ショートともに5ナンバーボディとワイドフェンダーが装着された3ナンバーボディがラインナップされました。
エンジンのバリエーションも3リッターV型6気筒ガソリンと、2種類の2.5リッター直列4気筒ディーゼルターボを設定し、豊富なグレードを展開することであらゆるニーズに対応。
また、4WDシステムはパートタイム式とフルタイム式、両方の長所を併せ持つ新開発の「スーパーセレクト4WD」を搭載し、高い悪路走破能力を発揮するだけでなく通常のオンロード走行時など、あらゆる走行モードにおいて高い操縦安定性、安全性、経済性を実現しました。
2代目パジェロはクロカン車を中心とした「RVブーム」の火付け役となり、バブル崩壊が始まったさなかでも大ヒットを記録。その後もブームをけん引する存在でした。
●アンフィニ「RX-7」
バブル景気の頃のマツダは5つの販売チャネルを展開し、前述のコスモやロードスターという名車を生み出しました。
まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったマツダは次の一手として、1991年10月に次世代のスポーツカー、アンフィニ「RX-7」(FD3S型)を発売。
外観はロングノーズ・ショートデッキやダブルバブルのルーフといった古典的なスポーツカーの要素を取り入れつつも、複雑な曲面を組み合わせた流麗なフォルムとすることで、新たなスポーツカー像を作り上げました。
エンジンは最高出力255馬力を発揮する654cc×2ローター・2ステージツインターボロータリーを搭載し、ボンネットやサスペンションアームをアルミとすることで車体の軽量化とともに優れたハンドリング性能を実現して、名実ともにピュアスポーツカーと評され国内外から高い人気を獲得します。
内装ではタイトなコクピットの眼前に5つのアナログメーターを配置することで、スポーツカーをドライブしているという高揚感を演出。
デビュー後も繰り返し改良がおこなわれて、1999年には最高出力280馬力に到達し、より走行性能を高めた魅力的な限定車や特別仕様車も多数登場しました。
しかし、排出ガス規制の強化やスポーツカー需要の低下もあり、RX-7は2003年に生産を終了。現在はネオクラシック・スポーツカーの人気の高まりから再評価されています。
※ ※ ※
今回、紹介した3車種は、どれもバブル絶頂期に開発がスタートしたモデルで、かつて、あるメーカーの開発者に聞いたところ、この時期に発売されたモデルはクオリティが高いといいます。
バブル崩壊後に開発されたモデルは積極的に原価低減が図られたことから、1990年前後のモデルはオススメできるともいわれました。
ただし、今となっては30年も前のクルマですからうかつには手が出せませんが、近年のネオクラシック人気も、そうした品質の高さが関係しているのではないでしょうか。
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みんなのコメント
いい車です
このデザインとロータリーターボの
加速、コーナーリングスピード
運転してると楽しくて全く飽きません
確かに燃費は良くないですが
まめにメンテすれば壊れませんよ
さていつまで乗り続けられるかな?