3列目までにグランクラス級のキャプテンシートを採用
ちょっと感のいい人ならば、その名を聞いただけで、クルマのキャラクターがおおよそ想像できるに違いない。
トヨタ新型ハイエースは超巨大化! 今のうちに4ナンバーの現行モデルを買っておくべき?
「グランエース」。
おそらく語源は「グランドハイエース」であろう。そう、ハイエースから商用車臭を消し去り、豪華仕様に整えたのであろうことがわかる。ガテン系の移動や機材運搬で人気なのが嘘であるかのように、超豪華に仕立てられたのが「グランエース」なのである。
結果として、国内最大サイズの高級ミニバンとなった。プレミアムミニバンの世界を圧倒的な魅力でリードするアルファード/ヴェルファイアの雰囲気をそのまま注入しつつ、大きさでははるかに凌ぐ。
全長で約400mmも長く、全幅で約150mmもワイドなのである。上背も約60mmも高い。立体駐車場への乗り入れが気になる1990mmである。威風堂々とした佇まいであり、クルマというより巌のよう。
アルファード/ヴェルファイアのようにケンカ腰のルックスではないのは良心だろう。肩で風切ってガニ股で歩くような無粋さを感じなかったことにホッと胸をなでおろした。
最大の特長は、車内の豪華さにある。新幹線のグランクラス級のキャプテンシートが組み込まれる。そしてそれは、アルファード/ヴェルファイアでも我慢席であった3列目にも採用されているのだ。つまり、2列目と3列目の4名がグランクラス級の快適性を享受できるのである。
4列シート仕様もある。さすがに4列目までグランクラスとはならなかったが、2名×4列=8名がゆったりと移動できることに違いはない。
3列目まではグランクラスであり、4列目だけ標準車といった趣きだ。
商用車特有のヘナヘナした感覚がない!
グランエース誕生の最大の狙いは、来たる東京五輪が迫っていることと関係がある。2020年の夏には世界から多くのVIPが日本にやって来る。そんな富裕層の送迎が、当面の主目的である。羽田空港から都内の高級ホテルにエスコートする。あるいは浅草や銀座などの観光地へのドライブの共をする。都内に点在する観光に誘導するためのビックサイズミニバンが必要だったのである。
ニーズは送迎であり、ターゲットはVIPや企業役員や芸能人であり、それが証拠に、これまでのところ法人需用が7割を占めると言う。
となると気になるのは走り味である。法人ターゲットモデルの常で、ステアリングを握るドライバーへ気づかいはやや低くなる。あくまで主役は後席のVIPだからだ。
実際にハイエースベースであることから、アルファード/ヴェルファイアほどの快適性は、広さ以外は得られない。後席の居住性は、これでもかというほど広く、モデルのような長身の男性でさえ、足をピンと伸ばせるものの、FR駆動であることから、アルファード/ヴェルファイアよりも床が高く、乗り降りがややよじ登る感覚が残るし、床が高いことにより頭上の圧迫感も気になった。
ただし、堅牢なボディ剛性を得るために、フロア下にはラダーフレーム構造かと思うほどの補強がされているし、トヨタが環状骨格構造と呼ぶ補強が加わる。食パンの耳のように、外周をぐるりと強化しているのだ。それにより、商用車を連想させるようなヘナヘナした印象はなかった。
サスペンションにも細工が行き届いている。リヤは車軸式サスペンションを採用している。新開発だ。
フロントタイヤは最大45度まできれる。そのキレ角は圧巻で、交差点でのUターンに苦労することはない。試乗撮影中に差し掛かった狭い交差点で、グランエースよりも約0.8mも全長が短いルノー・メガーヌ・スポーツツアラーGTがガードレールを気にしながら回転している背後で、まるでマイクロバス風の巨体が鮮やかにクルリと曲がり終えてしまうのは圧巻である。
搭載するエンジンは直列4気筒2.8リッターディーゼルであり、ドライバーズフィールに特筆すべき点は感じられなかった。加速は可もなく不可もない。
パーソナル性を徹底的に抑え込むことで、かえって後席の高級感を際立たせている。そんな印象だった。
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