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F1チーム代表の現場事情/ハース:表彰台の誘惑に負けず冷静に4位を確保。着実にチームを前進させている小松代表

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F1チーム代表の現場事情/ハース:表彰台の誘惑に負けず冷静に4位を確保。着実にチームを前進させている小松代表

 大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、メキシコシティGPで14ポイントを獲得したハースの小松礼雄代表に注目した。メキシコではオリバー・ベアマンが4位でチームにとって最高位タイの結果を出し、エステバン・オコンが9位に入った。

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 過去数週間は、ハースとそのチーム代表である小松礼雄にとって、激動の時期だった。

 好結果というものは、たいていの場合、チーム代表にとって物事を容易にするように見えるが、実際にはその裏で難しい決断が求められることが多い。そして、それこそがまさに小松が今年直面した状況だった。

 各チームが2026年の新レギュレーションに焦点を移すなかで、今季のマシンを改善できる領域を特定したハースは、アップグレード開発を進めるか、リソースを翌年のプロジェクトに温存するの選択を迫られた。コストキャップを考慮しなければならない以上、単純な計算で答えが導き出される問題ではない。小松の決断は、現行マシンの改良を優先するというものだった。

 その判断には明確な論理があった。もしアップグレードが一歩前進をもたらすものであれば、ハースはより多くのポイントを獲得し、コンストラクターズ選手権でひとつかふたつ順位を上げるチャンスを得られる。その結果、チームはより多くの賞金を獲得することになる。さらに、アップグレードをアメリカGPに間に合わせ、それが期待どおりの効果を発揮すれば、ホームレースでアメリカのチームとしての存在感を強く示すことにもつながる。

 とはいえ、リスクがあることも、チームは過去の経験から理解していた。というのも、2年前に同じサーキットにアップグレードパッケージを持ち込んだ際には、期待した効果が得られず、レースドライバーたちが「かえってマシンが遅くなったのではないか」と疑問を呈する結果に終わったからである。小松は、そのような失敗を絶対に繰り返したくはなかった。

 幸いにも、今回の新パッケージは非常にうまく機能した。2025年のこれまでの開発の成果によって、すぐさま高いレベルで走れるという自信をチームは持っていた。アメリカGPはスプリントフォーマットであったにもかかわらず、明確な前進が見られ、オリバー・ベアマンはスプリントでトップ8でフィニッシュ(後にペナルティで降格されたが)、日曜決勝ではポイントを獲得した。

 メキシコシティへ向かうにあたり、小松はフリープラクティスが3回ある通常の週末で、アップグレードの性能をより深く理解できることに期待を寄せていた。ベアマンはFP1でマシンを平川亮に託し、走ることができなかったものの、FP2からすぐにリズムをつかみ、予選でトップ10入りを果たした。

 さらに心強かったのは、エステバン・オコンがアップデート仕様のマシンに快適さを感じていたことである。オコンもチームメイトのすぐ後ろのポジションにつけており、小松は土曜夜、両方のマシンがポイント圏内で戦えると、チームメンバーに対して自信を示していた。

 しかし、小松は、実際に2台のマシンがどれほど多くのポイントを稼ぐことになるか、おそらく予想していなかっただろう。

 ベアマンは圧巻の走りで4位を獲得。その過程でマックス・フェルスタッペンとジョージ・ラッセルを見事なタイミングでオーバーテイクする場面もあった。一方、オコンも異なる戦略で好走し、9位でフィニッシュした。

 ベアマンはレース後半、長い間3番手を走行していた。しかし小松は自らのエンジニアリング面の経験から、後方のメルセデスドライバーたちとオスカー・ピアストリをカバーするために2ストップ戦略に切り替えるというチームの決断を支持した。これにより、フェルスタッペンが1ストップで3位に上がったものの、ベアマンは4位を確保することができた。

 小松は、表彰台にこだわることで、8位まで順位を落とすリスクがあることを理解しており、ハースにとって初の表彰台を狙うという誘惑に流されることなく、現実的に最も良い結果を持ち帰るための決断を冷静に下したわけだ。

 しかし、チェッカーフラッグが振られた瞬間の小松は、冷静ではいられなかった。感情を抑えきれない様子で、拳を突き上げ、目頭を押さえる姿が見られた。

 ハース代表としての最初の年は印象的なものだったが、2025年は、開幕戦オーストラリアで苦戦し、懸念される幕開けだった。だが、チームの対応は迅速かつ的確で、数週間のうちに問題を修正し、そこから確実に前進を遂げた。かつては開発面で苦労していたチームが、今ではその分野を強みとみなすことができるようになったのである。小松は、メキシコシティで獲得した14ポイントは、チーム全員の努力に対する大きな報酬ととらえている。

 アメリカ大陸で行われたアメリカGPとメキシコシティGPは、ハースにとって非常に重要なグランプリであり、チームオーナーのジーン・ハースが現地を訪れていた。そこで大きな成果を出したことは、よりいっそう大きな意味を持つ。小松は今もハースを確実に前へと導き続けている。

[オートスポーツweb 2025年11月02日]

文:AUTOSPORT web
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みんなのコメント

6件
  • tak********
    小松さんはしたたかだよね
    これまでも戦略とかチームオーダーや
    トヨタとの提携などで本領発揮してる。
  • hab********
    スプリントフォーマットは、いかに車のセッティングの”詰め”の時間が奪われていることがよくわかるね。
    もう要らないでしょ、スプリントセッション。
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