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鏡文字の「TURBO」ロゴ BMW 2002 ターボ オイルショックに襲われたレジェンド 後編

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鏡文字の「TURBO」ロゴ BMW 2002 ターボ オイルショックに襲われたレジェンド 後編

当時としてはライバルを寄せ付けない速さ

ターボチャージャーを与えた2002のために、BMWはオーバーフェンダーでトレッドを広げ、バンパーの下へフロントスカートを追加。アグレッシブなスタイリングを、レッドとブルーのストライプが引き締めた。

【画像】鏡文字の「TURBO」ロゴ BMW 2002 ターボ 同時期の3.0 CSL 最新M2とM4も 全135枚

果たして、2002 ターボが獲得した最高速度は210km/h。0-97km/h加速を7.0秒以下でこなし、当時としてはライバルを寄せ付けない速さを誇った。

ところが、有望だった小さなクーペをオイルショックが襲う。ガソリン価格は高騰し、燃費の悪いクルマの需要は急速に縮小。社会的な実情とかけ離れたモデルを開発したとして、BMWは一部のメディアからバッシングを受けてしまう。

結果的に、2002 ターボの生産は10か月で打ち切られた。その期間にラインオフしたのは、僅か1672台。カタログ上の燃費は、2.0Lエンジンながら6.9km/Lだった。

今回ご登場願ったポラリス・シルバーが眩しいクーペも、その貴重な1台。1974年式で、3色のレーシング・ストライプと、マイレ社のアルミホイールが凛々しい。ボディカラーは、ほかにシャモニー・ホワイトが選択肢として用意されていた。

グラスファイバー製フロントスカートに貼られた、鏡文字の「TURBO」ステッカーは、オイルショックに伴う世論へ配慮し生産後期には省かれている。この例は、それ以前に作られた車両だとわかる。

少し離れた場所から眺めても、2002 ターボの佇まいは意欲的。1970年代らしいスタイリングを、ブラックのラバー製リアスポイラーが強調する。

市街地でも扱いやすい滑らかな反応

内装は、ブラックのビニールで包まれている。見た目とは裏腹に、モータースポーツを想起させるような変化は得ていない。ダッシュボードの上へ、時計と一緒にVDO社製のターボブースト計が追加されている程度だ。

ブラックのスポーツシートは、座り心地が良い。サイドボルスターが高く、通気性はいまひとつだが。

ターボエンジンをクランキングさせると、特徴の薄いノイズで目覚める。アイドリングは1100rpmで落ち着き、特にうるさいわけではない。

まず印象的だったのが、日常的な条件での従順さ。滑らかに反応し、市街地でも扱いやすい。高速道路の速度域で、比較的静かなことにも感心させられた。110km/hで巡航していても、助手席の人と普通に会話できる。

停止状態からの急加速は、この時代のモデルには似合わない。もっとも、試乗したエリアは交通量が多く、完璧なオリジナル状態の2002 ターボを思い切り飛ばすことは難しい。

少なくとも過去の経験から、ターボチャージャーがブースト圧を高めれば、最高の喜びを享受できることは知っている。トランスミッションは、ゲトラグ社製の4速マニュアル。当時は5速もオプションで用意されていた。

道路利用者の少なくなったタイミングを見計らって、2速でエンジンを引っ張る。3速へシフトアップする直前に、100km/hへ届いてしまった。

ドッカンターボ的なエネルギッシュさはない

古いターボエンジンへ期待するような、弾けるパワーの高まりはない。4000rpmを過ぎた辺りでタービンが機能し始め、力強さが増していく。だが、数秒間アクセルペダルを緩めるとブースト圧が落ち、再び活気づくまでラグが生じる。

2002 ターボの最高出力は172ps。車重は1034kgと軽量だが、ドッカンターボ的なエネルギッシュさは秘めていない。

かといって、個性は豊か。見た目は可愛らしくも感じられるが、清々しく速い。これ以上に高速なホットハッチは数えきれないとしても、ドライバーにはふんだんに情報が伝わり、体験は濃密だ。

ステアリングラックは、旧式なウォーム&ローラー式。負荷が強まると手のひらへ充分な感触が伝わり、コーナリング・マナーはBMWらしい。アクセルオフで、ノーズが内側へ巻き込まれていく。

当時の試乗レポートを読み返すと、テールスライドに興じた内容が少なくない。しかし、リアタイヤのグリップ力を打ち負かすには、2速でブースト圧を高めたまま、タイトコーナーで一気にパワーを展開する必要があり、容易ではない。

恐らく、筆者のスキル不足が影響しているのだろう。ステアリングホイールも軽くない。とはいえシャシーバランスは素晴らしく、素直に扱えることは間違いない。

乗り心地は、見た目へ合わせたように硬め。それでも、サスペンション・ストロークは長く、近年のスポーツサルーンより遥かに快適。ブレーキは不満なく効き、ペダルのフィーリングもソリッドだ。

2002の最後を彩った生粋のエンターテイナー

筆者が試乗できた時間は限られていたものの、2002 ターボは生粋のエンターテイナー。ドライバーを圧倒させることなく、思う存分楽しませてくれた。ブースト圧を維持し続ける必要はない。リラックスして走るのも、また悪くない。

悔やまれるのは、発売されたタイミングの悪さ。2002 tiiの2倍の価格が与えられたことも、販売面での成功を遠ざけた。新時代を告げるBMW 3シリーズは1975年に控えており、既に2002は新鮮味を失いつつあったことも事実だろう。

それでも、ターボチャージャーが2002の最後を彩ったことは間違いない。熱気に満ちた、強い輝きを放ちながら。

撮影:(Bernardo Lucio)ベルナルド・ルシオ

BMW 2002 ターボ(1973~1974年/欧州仕様)のスペック

英国価格:1万8720マルク(新車時)/15万ポンド(約2700万円)以下(現在)
販売台数:1672台
全長:4219mm
全幅:1621mm
全高:1410mm
最高速度:210km/h
0-97km/h加速:7.5秒
燃費:6.9km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1034kg
パワートレイン:直列4気筒1990ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:172ps/5800rpm
最大トルク:24.5g-m/4000rpm
ギアボックス:4速・5速マニュアル(後輪駆動)

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