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【欧州でも通用するEV】ニオES6プレミア・エディション 中国の新ブランド

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【欧州でも通用するEV】ニオES6プレミア・エディション 中国の新ブランド

高性能版は218ps+326ps

text:Mike Duff(マイク・ダフ)

【画像】ニオとアウディ、ジャガーのEV SUV 全91枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


ニオES6は中国の新興電気自動車メーカー、ニオ社の2作目となる純EV。ひと回り大きいクロスオーバーのニオES8と基本的なアーキテクチャを共有するが、ES6は小柄で低く、スポーティ。価格も安めに設定される。

中国には、われわれも知らないような新興電気自動車メーカーが沢山存在している。その中でもニオ社はEVの実販売台数でトップに立つメーカーだ。2019年に発売した同社初めてのモデル、ES8は既に1万5000台以上を顧客へ届けている。

今回のES6を追加する目的は、販売台数を大幅に伸ばすこと。最終的には中国以外の市場での販売も計画されている。

ES6に搭載されるパワートレインは2種類。どちらを選んでも4輪駆動で、標準モデルには218psの永久磁石モーターが前後に1基づつ搭載される。

試乗車となったプレミア・エディションと、追って登場する高性能版に搭載されるのは、フロント側は同じ218psの永久磁石モーターだが、リア側は326psの誘導モーター。低速域での効率性に優れる永久磁石モーターをフロントに残すことで、高性能バージョンでも航続距離を伸ばす狙いがあるのだろう。

新基準のWLTCモードと比較して甘い数字の出るNEDCモードでの数字ではあるものの、高性能版のES6の航続距離は、標準の70kWhのバッテリーで429kmとうたわれている。スタンダード版では420kmだ。

大容量の84kWhバッテリーパックを選べば、スタンダード版の489kmに対し、高性能版は510kmも走れるという。ニオによれば、だが。

印象的に良いパワートレインの仕上がり

ES6の0-100km/h加速に要する時間は、高性能版のプレミア・エディションで4.7秒。テスラ・モデルXやジャガーIペイスに並ぶ、4秒台チームに入る。最高速度は199km/hでリミッター制御される。

骨格にはアルミニウム製のストラクチャが用いられ、ボディ剛性はとても屈強。ねじり剛性で4万4930Nm/degに達するという。ちなみにロータスのアルミニウム製タブのねじり剛性は2万7000Nm/degある。

サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン式で、リアがマルチリンク式。アダプティブダンパーが標準装備され、プレミア・エディションと高性能モデルにはエアスプリングも採用する。

シャシーとパワートレインの開発は、ニオが有するヨーロッパとアメリカの拠点で進められている。英国にもオックスフォード近郊にオフィスがある。

パワートレインの仕上がりは印象的に良い。ES6はより高価なES8と比べればパワーで劣るとはいえ、プレミア・エディションはテスラ並みの加速性能を保つ。苦労知らずに、驚くほどのスタートダッシュを披露する。

ES6の試乗は、天津近郊にオープンしたV1オートワールドと呼ばれるサーキットで行われた。一般道ではない、クローズドコースという設定は中国では一般的。試乗時間は30分ほどあり、縛りもゆるく、コース内を自由に運転することはできた。

サーキットはSUVと特に親和性の高い環境ではないが、ES6は内臓が横に押しつぶされそうになるほどの横Gをコーナーで発生。加速力も、速度が上がるにつれて強くなっていく印象だった。

回生ブレーキ・ソフトウエアは要改善

最も長いストレートでは130km/hに届き、そこから速度はさらに伸びそうな印象。広くはない試乗コース上では最高速度の199km/hは出せなかった。ニオによれば、スポーツカーではないES6のラップタイムは、BMW M4に4秒遅れるだけだという。

グリップレベルは充分に高いものの、ハンドリングバランスは明確に前輪駆動のスタイル。最も活発なドライビングモードを選択しても、スタビリティコントロールが介入し、テールスライドは発生しない。そのかわり、高いコーナリングスピードで走ることも難しくはない。

2周ほど本気でサーキットを走らせると、パワートレインはオーバーヒート気味になった。この状態では回生ブレーキの強さに制限がかかり、出力も抑制される。穏やかに1周すれば充分に冷え、もう一度サーキットアタックに挑めるようだ。

ブレーキは運動性能で残念な部分。ハード面はブレンボ製を採用し、サーキット走行にも充分に対応できる。だがボッシュ製のソフトウエアは、ブレーキペダルを強く踏むと緊急ブレーキだと判断するeブースト機能が搭載され、意図しない過剰な制動力が立ち上がる。サーキットでは、スムーズな走りの足かせとなっていた。

車両開発のディレクター、ダニーロ・テオバルディによれば、今後スムーズな制御に改善していくという。

ニオES6は、クルマとして静止状態の質感も高い。車内は広く、インテリアデザインの仕上がりも良い。一部に安価な素材が使われていることは確かだが、目を凝らして探さなければ気にならないだろう。

インフォテイメント・システム用モニターは11.3インチと大きく、グラフィックも高精細。組み立て品質も、テスラ水準に届いている。

一部の性能はトップ水準に届いている

ES6には、ニオ製の非常に知的な音声認識システムも搭載する。英語の勉強はこれからのようだが、前席だけでなく後席から中国語で話しかけても、充分理解できていた。

ダッシュボードの上部には、人の顔を模したグラフィックが表示される専用の円形モニターをオプションで追加できる。音声認識時に会話している人の方を向く、かわいい絵文字のような表情が表示され、子供は気にいるだろう。

ES6には、運転支援システムも搭載する。2020年に向けて、部分的な自律運転システムにアップデートされる予定だという。テスラと同様に、クルマに搭載されているOSをワイヤレスでアップデートできるのだ。

ニオES6は2019年6月に中国で発売が開始されている。ニオ製のモデルが今後数年間に欧州で発売される予定を認める幹部はいなかった。しかし、ES6を欧州で販売できない技術的な不足は、ないといっていいだろう。

中国での発売価格は、政府の補助金を適用しなくても4万ポンド(568万円)からと魅力的。同カテゴリーで比較して、部分的な性能がトップ水準に届いていることを考えると、欧州でしばらく待たされることは残念に思える。

歴史あるブランドがEVモデルの投入に手を焼いている昨今。マゴマゴしていると、ニオのような新興ブランドから、訴求力のあるモデルが提供される日がやって来そうだ。

ニオES6プレミア・エディションのスペック

価格:約5万6000ポンド(795万円)
全長:4850mm
全幅:1965mm
全高:1758mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:4.7秒
航続距離:429km(NEDC)
CO2排出量:0g/km
乾燥重量:-
パワートレイン:永久磁石モーター+誘導モーター
バッテリー:70kWh
最高出力:218ps+326ps
最大トルク:73.8kg-m(総合)
ギアボックス:シングルスピード

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