2019年のジュネーブ国際自動車ショーには報道関係者向けのいわゆる“プレスデイ”が2日間設けられていたが、初日のみ姿を見せた”幻”のモデルがあった。それは、マクラーレン・オートモーティブの新型車「スピードテイル」だ。
ひとことで表現すると、ほかを圧倒するインパクトであった。「申し訳ないが、詳細はまだ公表出来ません」と、広報担当者が言うように、パワートレーン(おそらくガソリンエンジン+モーターのハイブリッド仕様と思われる)や、車体寸法は非公開であった。現時点で判明している情報と言えば、最高出力1050psで、最高速は403km/hに達するというたった2点のみだ。
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エクステリアはまるで速度記録に挑戦するレコードブレイカーのようだ。車名に「テイル(尾)」と入っているように、キャビンの後ろを可能なかぎり長くして最適な空力特性を狙っている。
マクラーレン・オートモーティブは、とにかく独創的なスポーツカーづくりで知られる。ゴードン・マレイというF1でも知られた設計者がかかわっていた時代は、「F1」という3座の独創的なハイパースポーツカーで名を馳せた。派生モデルはルマン24時間レースで優勝している。
最近登場した「600LT(および600LTスパイダー)」も独創的だ。コクピットのうしろから上に突き出したエグゾーストパイプを採用したのも衝撃だった。設計者によると「ハンドリングのために、重いものはすべて中心に集めたほうがいいので、排気系も車両中心部に集約した」というのが理由だった。排気管を短くするための方策だというのだ。
とはいえ、これら2つのモデルとは比べものにならないほどスピードテイルは独創的だ。
マクラーレンのスポーツカーが新しい時代に入ったことがよくわかるコンセプトモデルだ。
スピードテイルでなにより注目されていたのは、「エアロン」と呼ぶテールスポイラーだ。ボディパネルの一部になっていて、高速走行時やブレーキング時などダウンフォースが欲しいときに持ち上がる。
20インチのフロントホイールは空気の外乱をふせぐため、独特な形状のカバーで覆われているのが特徴だ。ただし、ブレーキの熱を逃すため、小さな開口部が設けられている。いっぽう、後輪は完全に覆われている。
ウィングミラー(いわゆるバックミラー)は、カメラで代用されている。フロントホイールハウスのうしろ、マクラーレン車のアイコンである上にはね上がるディヒドラルドアにカメラなどはビルトインされている。なお、カメラは電動格納式だ。
室内モニターはAピラーの根元に設置されている。レクサス「ES」と似たシステムかもしれないが、モニターサイズははるかに大きい。
くわえてほかのマクラーレンモデルにない特徴が、3座レイアウトだ。ドライバーは中央に座り、その左右にひとが座る。ゴードン・マレイによる「F1」と共通するレイアウトだ。
ゴードン・マレイはドライバーを中央に座らせる理由として(F1マシンのように)左右の重量バランスを最適化することをあげていた。「スピードテイルもおなじ考えです」と、広報担当者は述べた。
ガラスで覆われたドーム型のキャビンは、高い空力性能とともに室内に開放感を与えている。実用性も考えられているのだ。
独創的なスピードテイルの価格は約2億8000万円。ただし、限定106台はすでに完売したという。納車は2020年ごろという。
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