最近のスポーツモデル、昔に比べたら乗り心地が良くなっている。
先日試乗したばかりの新型BMW M4コンペティション、マイナーチェンジしたレクサス IS Fスポーツ、マツダ ロードスター、GT-R。挙げたらきりがないほど。それほどスポーツモデルの乗り心地が進化し良くなっている。
昔は乗り心地など二の次で、とにかくコーナーで踏ん張ればよい、という乗り味のスポーツモデルばかりだった。どうしてか? なぜ良くなったのだろうか? を考えてみたいと思うのです。
文/松田秀士 写真/RENAULT、HONDA、編集部、NISSAN
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■ひと昔前の国産スポーツはなぜ乗り心地が悪かった?
写真は2007年発売の3代目シビックタイプRセダン。タイプRは乗り心地が向上したスポーツカーの好例。この頃と今では大きく異なる
まず、国産スポーツカーはサーキットでタイムが出ることが命だった。そのため足を固めた。日本のサーキットは高低差も少なく路面が比較的フラットだったのでそれでも良かった。
しかし、欧州車がニュルを舞台に開発を進め、サスペンションのストローク量が必要になり、その結果乗り心地も良くなっていったのだ。
我々レーシングドライバーは、フラットサーフェースなサーキット路面でも、時折出くわすギャップに足を取られアクセルを戻すような乗り心地のサスペンションには当時から閉口していた。
硬すぎると跳ねる、タイヤグリップ低下を招く。なによりも硬いサスはタイヤのグリップ低下(タれる)が早い。といったデメリットがある。だから、特にダンパーのリバンプ(伸びる側)は、ソフトにセットしたりしていた。
それどういうことですか? となる読者の方も多いことと思う。乗り心地の改善にはただサスペンションを柔らかくすれば良い、というものではないのだ。サスの伸び縮みによるホイールトラベル。これをマネージメントしなくていけないのだ。
例えば凸になった路面を通過するとしよう。
凸にタイヤが乗ると速度によるがタイヤを(後ろ)方向に押す力と(押し上げる)方向への力がかかる。
(後ろ)方向は、サスの取り付け位置とゴムブッシュ類の硬柔度やキャラクターによる。ソフトにすれば衝撃は和らぐがハンドリングに影響する。(押し上げる)方向は、おおまかにスプリング&ダンパーの性能だ。
他にもサブフレームやアクスルキャリアのブッシュ(M4はブッシュなしのボディ直付け)などがあるが、このあたりは省いて説明する。
■スポーツカーの乗り心地を良くする飛び道具と最新の進化
メガーヌR.S.などはダンパーを二重にしてダンピングを穏やかにしている
話を戻します。凸を通過する時、ボディ全体に振動感が伝わるような衝撃は、主にゴムブッシュ類の性能。でも実はイチバン差が出るのはタイヤです。これは考えたらすぐにわかりますね。レース用のスリックタイヤなんて乗り心地はありません。目的が違いますからね。ま、ここではタイヤも除外します。
で、(押し上げる)方向の話をしましょう。凸を通過して押し上げられたホイール(&タイヤ)によってサスが縮みます。その後、縮み切った反動もあり、伸びて元の位置に戻ります。走行中はこれをずっと繰り返しています。
大きな凸だとサスは縮み切りオーバーシュートしないようにバンプストッピングラバー(バンプラバー)に当たり、そこで一気にタイヤにストレスがかかります。タイヤの表面圧が急に上昇しハンドリングに影響します。
そこでスポーツカーはスプリング&ダンパーを強めのセットとし、バンプラバーに当たってもハンドリングの影響を最小限にしています。
ルノーのメガーヌR.S.などは、このバンプラバーの代わりに「HCC」というセカンダリーダンパーをダンパー内に組み込み、バンプラバーが当たる位置までバンプしたら今度はセカンダリーダンパーで受けて、もう一度ダンピングして変化を穏やかにしています。
これによって(プラス4輪操舵)スプリング&ダンパーのレベルをソフトに仕上げ、乗り心地を良くしているのです。
ルノーのメガーヌR.S.に搭載される「HCC」。この装備によってスプリング&ダンパーのレベルをソフトにし、乗り心地の向上につなげている
そこで(押し上げる)方向に押し上げられたサスが逆方向に戻るときに注目します。強いスプリングは、反力が強く、勢いよく伸びようとします。すると伸び切るので今度は逆に縮む方向に繰り返すことになります。
そこでダンパーが減衰力を発生して伸びるときの速度を遅くするのです。この時戻る方向への伸びる速度が重要。強いと、伸びるよりもクルマの重さが勝ってタイヤがズドーンと一気に落ちます。これが内臓をえぐるような乗り心地悪化に繋がるのだ。
そこで電子制御でダンパーの減衰を変化させることで路面状況やコーナリングに応じた強さを発生させ乗り心地を改善するシステムがある。
これなら「コンフォート」と「スポーツ」などドライバーがコクピットからボタンひとつでモードを変更できるから、乗り心地は多少悪化してもハンドリングに集中でき、逆に乗路心地優先で流したりもできる。さらにエアサスならスプリングレートそのものもドライブモードに応じて変更できるのだ。
サスペンションが伸びるときを的確にコントロールできれば、タイヤの面圧を徐々に変化させることになり、乗り心地もグリップ感も失われずまたタイヤにも優しい。
■最新スポーツモデルの“足”は比較的柔らかい傾向に
写真は2017年モデルのGT-R。ダンパーのセットを柔らかいノーマルモードにした時の乗り心地の良さに、路面にタイヤを素直に追従させるということがいかに大切かを再認識させられた
2016年にGT-R MY17モデルの試乗会でドイツのアウトバーンで300km/h走行を経験したのだが、ダンパーのセットを硬いRモードではなく柔らかいノーマルモードにしたほうがクルマそのものが安定し、乗り心地も良かった。
つまり路面にタイヤを素直に追従させるということがいかに大切かを確認した瞬間だった。
コーナリングではステアリングの切り始めに硬いサスを好むドライバーが多い。ロールを嫌がるからだ。ロールはコーナリング外輪のバンプ(押し上げる)方向だけでなく、内輪の(戻る)方向も同時に起こる。
このためロールを抑制するには硬いスプリングを使い、ダンパーのリバンプも強くする必要がある。よってこれまでの説明から乗り心地は悪くなる。
そこで最近のスポーツモデルのサスは比較的柔らかい傾向にある。ハンドリングの応答はボディ剛性が上がったこととバリアブルなステアリングギアボックスの進化などによってステアリングスピードを上げて解決している。
バンプラバーも、マテリアルと加工技術の進化によってバンプタッチしても急激な変化を抑制し、それによってスプリング&ダンパーを強め過ぎることがなくなった。
また、レクサス ISはホイールナットをボルト締結にしてハブキャリアとホイールの締結剛性を上げ、ホイールストロークを正確にサスに伝達できるようにしたことも乗り心地改良の一助となっている。
もう、スポーツモデルだから乗り心地が悪いという言い訳は通らなくなっているのだ。
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