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鏡文字の「TURBO」ロゴ BMW 2002 ターボ オイルショックに襲われたレジェンド 前編

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鏡文字の「TURBO」ロゴ BMW 2002 ターボ オイルショックに襲われたレジェンド 前編

半世紀前は特別だったターボチャージャー

浜辺では、老若男女が短い夏を楽しんでいる。その横を、シュワァ、シュワァ、というノイズを響かて小さなBMWが駆けていく。言葉は通じなくても、ターボチャージャーを積んでいることは理解できるはず。

【画像】鏡文字の「TURBO」ロゴ BMW 2002 ターボ 同時期の3.0 CSL 最新M2とM4も 全135枚

路肩で構えたカメラマンは、流し撮りを試みる。映画「女王陛下の007」の冒頭で使われたポルトガル・エストリル海岸の道路、エストラーダ・ド・ギンチョを運転していると、自ずとロマンチックな気分になってしまう。なんと壮大な景色なのだろう。

それ以上に筆者の心を奪うのが、1974年式のBMW 2002 ターボだ。ターボチャージャーを量産車へ採用した先駆者といえ、モータースポーツとの縁も深い。フロントスカートは長く、ボディサイドにはストライプが踊り、やる気に満ち溢れている。

ただし、アクセルペダルを蹴飛ばすたびに繰り出される怒涛のパワーを期待すると、少し肩透かしを食らう。確かにたくましいが、驚きを生むほどではない。

同じクルマ好きでも、何に感動するかは世代によって異なる。ターボチャージャーは、その好例の1つだろう。Z世代とは違って、半世紀ほど前をご存知の人なら、特別なパーツだと受け止めるのではないだろうか。

1970年代から1980年代にかけては、高性能であることの象徴だった。実際のパフォーマンス以上の、誇らしいイメージすら伴った。日用品へターボという名前が充てがわれることすらあった。

ツーリングカー選手権での勝利が目的

このターボチャージャーを自動車にいち早く導入したのは、ドイツではなくアメリカ。イエロー・ティーポットと呼ばれた、ルノーのF1マシンへ採用されるより遥か以前から、インディ・マシンのエンジンはタービンで吸気が圧縮されていた。

公道用モデルでは、ゼネラル・モーターズ(GM)がオールズモビル・ジェットファイアを1962年に投入。V8エンジンにターボを組み合わせ、話題を集めた。

それに続くように、シボレーはコルベア・モンツァ・スパイダーにターボエンジンを設定。インターナショナル・ハーベスターのSUV、スカウトにもターボ仕様が追加されている。

他方、欧州でターボチャージャーの民主化を進めた1台が、1973年のBMW 2002 ターボ。コンパクトな2ドアクーペに過給エンジンが搭載された、初めての例といえた。

それより前、1968年の欧州ツーリングカー選手権ではワークスチームの2002が、プライベートチームのポルシェ911としのぎを削っていた。自然吸気の4気筒エンジンには、クーゲルフィッシャー式と呼ばれる機械式インジェクションが載っていた。

圧縮比は11:1で、最高出力は202ps/7500rpm。大きく張り出したオーバーフェンダーと、クロススポークのBBSアルミホイールが象徴的な容姿を生んでいた。しかし、911が3戦連続で勝利。ワークス体制のBMWは、劣勢に追い込まれた。

そこで、残りのレースを有利に戦うべく、グループ5カテゴリーの緩めのレギュレーションを活用。エンジンの右側に、KKK社製のターボをドッキングさせたのだ。

短期間に確かな結果を残したターボエンジン

2002 TiK(Kはコンプレッサーの略)と名付けられた、新マシンの重量は862kg未満。幅が10Jもあるワイドなホイールの内側には、ギリギリの大きさのディスクブレーキが収まっていた。

燃費は相当悪化し、インタークーラーもなかった。それでも圧縮比を下げ、高圧の燃料ポンプを採用するなどの改良を加え、ターボエンジンは見事な性能を発揮。レーシングドライバーのディーター・クエスター氏に、4度の勝利をもたらすほど速かった。

1969年シーズンは、コンストラクターズ・タイトルをBMWが獲得。クエスターも、ディビジョン3でドライバーズ・タイトルを掴んだ。ところが、1970年にレギュレーションが変更され、BMWは欧州ツーリングカー選手権から退いてしまう。

その後は、アルピナが健闘した。排気量を変更し、キャブレターやインジェクション仕様のエンジンを開発。2002は、引き続きサーキットで暴れ回った。

モータースポーツでの活躍は短かったものの、ターボチャージャーは確かな結果を残した。ブースト圧1.0-1.2barの堅牢な4気筒ユニットは、7200rpmで284psを発揮。驚くほど粘り強く、高速走行時のノイズが静かだったことも特長といえた。

ブースト圧を更に高めれば、328psに達したという。ただし、エンジンブローの可能性との引き換えではあったが。

増強へ合わせてシャシーも入念に改良

これらの経験は、1980年代に活躍したブラバムのF1マシンへ載った、4気筒ターボエンジンへ活かされたといっていい。加えて、ターボエンジンは量産モデルに新たな刺激を追加する、ともBMWは考えた。

ちなみに、カリフォルニアでカーディーラーを営み、レーシングドライバーでもあったヴァセク・ポラック氏は、1972年に2002 tiiを改造。ターボチャージャーを搭載し、一般道を走っていたという。

本家の2002 ターボが発表されたのは、1973年5月のフランクフルト・モーターショー。モータースポーツとのつながりを感じさせる好戦的な見た目は、あえて狙ったものだった。

5枚のメインベアリングを備える4気筒エンジンは、圧縮比を2002 tiiの9.5:1から8.5:1へ変更。排気量は1990ccと変わらなかったが、エグゾーストパイプにはターボチャージャーが追加されていた。ラジエターとオイルクーラーは、専用品が組まれた。

増強へ合わせて、シャシーにも入念に手が加えられた。フロントがマクファーソンストラット式、リアがセミトレーリングアーム式というサスペンション構造はそのままながら、アンチロールバーとスプリングは強化。ビルシュタイン・タンパーが奢られた。

リアアクスルには、リミテッドスリップ・デフを採用。ファイナルレシオもtiiの3.64:1から3.36:1へ変更され、鋭い加速を引き出した。

フロントのブレーキも、ディスクはtiiと同じながら、4ポッドキャリパーへ置換。リアブレーキはドラムだったが大径化され、燃料タンクも容量が増やされていた。

この続きは後編にて。

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