電動化への足掛かりとなるSUV
英国編集部はイタリア北西部、アルプスの麓に位置するバロッコ・サーキットへ招待された。肌寒い空気が流れているが、気持ちは期待で火照っている。
<span>【画像】マセラティ 新型グレカーレとレヴァンテ 競合するパフォーマンスSUVと比較 全151枚</span>
マセラティのフラッグシップ・サルーン、クアトロポルテ・トロフェオは、正直いって今ひとつ冴えないモデルだった。しかし、ブランドが生み出してきた過去の記憶が、次期モデルを待望させる。
マセラティは、人員体制の見直しを加えつつ、新モデル開発を意欲的に進めている。今回試乗させていただいたプロトタイプの限りでは、新しいSUVはクアトロポルテとは違う成果が得られそうだ。
グレカーレは、現在のマセラティにとって非常に重要な意味を持っている。大型SUVのマセラティ・レヴァンテより小柄なセグメントに相当するモデルで、これまでにないラグジュアリーさとイタリアンなセンスを体現することが目指されている。
市場での支持が高い中型SUVを投入することで、マセラティの業績を上向かせる狙いがある。同時に、純EVへの足掛かりを作るモデルでもある。
マセラティはイタリア語で稲妻を意味する、フォルゴーレと題した電動化戦略を打ち立てている。その手始めとして、2022年には純EVのグレカーレがリリースされる予定だ。
スーパーカーのMC20にも、純EV版が登場する見込み。2ドアクーペ、グラントゥーリズモの後継モデルも、完全に電動化されるという。
半導体の供給遅れで発売は2022年春
今回筆者が試乗したグレカーレは、ガソリンと電気のハイブリッド。これまで250台ものプロトタイプが作られ、膨大な数のシステムが試されてきた集大成の1つが、間もなく仕上がろうとしている。
現状では試乗したグレカーレが、最も完成状態に近いグレカーレともいえる。COVID-19の影響で半導体の生産が乱れていなければ、本来のスケジュールでは開発を終え、販売が始まっていたという。
だが結果的にリスケジュールされ、発売は2022年の春まで延期された。細かな調整をもう少し加える時間が、技術者には与えられたようだ。
試乗車はプロトタイプということで、車内の殆どにはカバーが掛けられていた。ダッシュボードだけでなく、センターコンソールにも。そのため、インテリアの印象はお伝えすることが難しい。
カバーの隙間から覗き見た限りでは、レザーがふんだんに用いられ、ダッシュボード上部には大きなインフォテインメント用タッチモニターが鎮座している様子。
マセラティの特徴といえるアナログ時計は、ロイヤルブルーの文字盤はそのままに、デジタルで表現されているようだ。時間だけでなく、加速Gにブレーキやアクセルペダルの踏み込み量など、表示情報も選べるという。
レザー張りのフロントシートは、適度に柔らかくサポート性にも優れ、良いバランス。SUVというフォルムを活かし、リアシート側の空間も広いように見えた。頭上空間も足元空間も、ゆとりがあるようだ。
2.0L 4気筒ガソリンのマイルドHV
パワートレインは、300psを発揮する2.0L 4気筒ガソリンターボのマイルド・ハイブリットが、試乗車に搭載されていたもの。モデナで製造されるスーパーカー、MC20が搭載する3.0L V6ツインターボ、ネットゥーノ・ユニットのデチューン版も選べるという。
トランスミッションは、エンジンを問わずZF社製の8速ATが組まれる。先述のとおり、純EV版のグレカーレも追って登場する予定だ。
グレカーレはすべて四輪駆動。内燃エンジンの場合は、アルファ・ロメオがステルヴィオに採用する、Q4システムと基本的に同じと考えて良い。通常、駆動力は50:50で前後の車軸へ割り振られる。
マセラティの技術者によれば、特定のモデルで特定のドライブモードを選べば、すべてのトルクをリアタイヤへ伝達させることも可能だという。リアタイヤのグリップやトラクションの限界を超えても、伝達を止めないらしい。
恐らくトロフェオを名乗るであろうグレカーレが、該当するモデルになるのだろう。かなりダイナミックな設定だといえる。
少し長くなってしまったが、バロッコ・サーキットでの試乗と行こう。指定されたコースは全長約5km。適度にチャレンジングで、イタリア・ピエモンテ地方に見られるような、起伏が大きくカーブの続くルートが再現されている。
アスファルト舗装も荒れ気味。量産間際のグレカーレにとっては、おなじみの道といって良さそうだ。
この続きは後編にて。
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