クルマ文化に限った話ではなく、カルチャーというのは全般的に「流行る→廃る→忘れられる→(一部のモノが)リバイバルしてまた流行る」という循環サイクルを描く場合が多い。身近な例で言えば80年代に大流行し、その後はダサさの代名詞にもなった「ハイウェストのパンツ」や「アラレちゃん眼鏡(黒縁の大ぶりな眼鏡)」が、昨今の若い女性にやたらと愛用されているような現象のことだ。
そしてクルマで言えば、80年代末期に六本木のカローラとも呼ばれた4世代前のBMW 3シリーズが今、「リバイバルしてまた流行る」というフェイズに入りかけているように思える。
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「六本木のカローラ」も「4世代前のBMW 3シリーズ」も言葉としてちょっと長いため、以下は「E30」と呼ばせていただこう。E30というのはこの3シリーズの型式名で、自動車好きはこのクルマのことを「イーサンマル」と呼ぶのだ。
E30は1982年に登場した。BMW 3シリーズとしては2代目にあたる比較的コンパクトなサルーン。現在の3シリーズは「……5シリーズか?」と感じられるほど大柄になっているが、この時代の3シリーズは当初のコンセプト通りのコンパクトさを維持していた。全長4325mmというのは現行トヨタ プリウスより短く、1645mmという全幅はスズキの現行ジムニーシエラと同一だ。
ドイツ本国にはさまざまなエンジンが存在していたが、日本に正規輸入されたのはざっくり言って1.8リッターの直列4気筒と、2リッター/2.5リッターの直列6気筒。それぞれに前期型と後期型があったり、通常エンジンのほかに「M3用の2.3リッター直列4気筒」があったりもしたのだが、ここではマニアックな部分は割愛させていただく。
ボディタイプは4ドアセダンを基本に、2ドアクーペとそのカブリオレ(オープンモデル)、4ドアステーションワゴンが用意されていた。トランスミッションは4速ATまたは5速MTで、駆動方式はいわゆるFR。つまりフロントにエンジンを搭載して後輪を駆動するという、現在の3シリーズと変わらぬBMWこだわりの方式だ。
このE30が、1980年代後期のニッポンで売れに売れた。
時はまさに1985年9月のプラザ合意を経たバブル前夜および真っ只中。若手実業家や大手企業勤務の会社員、あるいは「ええとこのボン」と呼ばれる類の大学生各位がこぞってE30を購入し(学生の場合は買ってもらい?)、主に六本木などの繁華街で婦女子を送迎等するためE30をフル稼働させた。そしてその結果として街にE30があふれかえった。これが「六本木のカローラ」という古語の由来だ。
そんなE30型BMW 3シリーズも、1991年2月頃とされるバブル崩壊のせいだろうか、それとも1991年7月に次期型3シリーズが登場したせいだろうか、ブームは急速に収束した。
その後も一部のカーマニアは依然としてE30を好む場合もあったが、多数派を占める一般浮動層は「あぁ、六本木のカローラね(笑)」と、(笑)付きでのみE30のことを思い出すようになり、そしていつしか思い出すこともなくなった。E30のことを思い続けたのは、それを30万円とか40万円とかの「有効な激安商材」とみなした街道沿いの中古車店主だけだ(あとはごく一部のカーマニア)。
しかし最近、そんな風向きも変わりつつある。
冒頭で挙げた「カルチャー循環サイクル」のリバイバル局面に入ったのか、街道沿いの激安店ではない専門性の高いショップが、こぞってE30を仕入れてレストア(修復)しはじめたのだ。
「まぁそりゃそうでしょうよ」と筆者は思う。なぜならばE30型BMW 3シリーズは、今の時代だからこそ逆に光る魅力に溢れているからだ。
まずは全体のフォルムと細部。昨今の自動車のボディラインやディテールは基本的には装飾過多なため、場合によっては(申し訳ないが)食傷としてのげっぷが抑えられないことも多い。だがE30のスクエアでありながら若干の丸みも感じる絶妙な潔さと、細部のシンプルで清廉な処理は、現代のこってり系自動車デザインのなかでかなりの異彩を放つ。
そして冒頭付近で挙げた「コンパクトさ」だ。
さまざまな基準や背景が異なる時代の製品を、単純に比較するのはフェアではない。だがそれでもあえて比較してみるなら、E30は最新の3シリーズと比べて「大相撲の力士2人分」は確実に軽い。類似グレード同士で比べて330kgも軽いということだ。
クルマというのは「軽けりゃいい」というものでは決してないが、同時に「軽けりゃ軽いほど運転は楽しい」という側面は確かにある。そして現代の3シリーズよりも300kg以上軽量なこのクルマのステアリングを握ってみれば、おそらく99%の人が即座に「動きの軽やかさ」に衝撃を受けることだろう。
それは例えば最新の3シリーズがボクシング・ミドル級世界チャンプの村田諒太選手だとしたら、E30はバンタム級世界王者の井上尚弥選手だということだ。両者が同ルールで闘えば当然体重がある村田選手が勝利するはずだが、「どちらのファイトスタイルが好きか?」と問われれば、答えは人によりけりなはず。
その答えは別にどちらでも良く、ついでに言えば村田チャンプも井上チャンプも超絶素晴らしいアスリートだ。しかし大柄なパワーファイターだらけになってしまった近年の自動車ワールドで、軽量俊敏にして古式ゆかしいハンサムガイでもあるE30は今、なんとも絶妙にして希少な選択として注目を集めつつあるのだ。
中古車相場は、もちろん個体や販売店によりまちまちではあるが、おおむね100万円~200万円といったニュアンス。4速ATだったものが5速MTに換装されている車体も最近は多いようだ。
往年のクルマゆえ、もちろんそれなりの整備費を見込んでおく必要はある。だがそのメンテナンス手法というか弱点は、その道の専門家がすでにあらかた把握済み。それゆえツボを押さえた整備をケチったりサボったりすることさえしなければ、そうそうひどいことにはならない可能性が高い。
もちろん無理に勧めるわけではない。しかし、どのメーカー製であっても似たり寄ったりの「いかついパワーファイター」だらけになってしまった昨今の自動車事情に辟易しているなら、E30型BMW 3シリーズに2018年の今、注目してみる価値は絶対にある。
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