悪ぶる必要がないほど才色兼備なアウディ
2007年から2016年まで生産された、初代アウディA5 クーペ。最近の英国では、ラッピングフィルムで身を包み、大径ホイールを履いたカスタマイズ例が目立つ。しかし、そこまで悪ぶる必要がないほど、才色兼備なアウディだ。
【画像】才色兼備な初代クーペ アウディA5 S5とRS5 現行型と写真で比較 全114枚
幸いにも、オリジナル状態へ近い例は充分に探せる。当時のAUTOCARを振り返ると、スタイリングやインテリアの魅力に加えて、動的な能力でBMW 3シリーズへ近づいたことを称賛している。
A5には、ソフトトップのカブリオレと、5ドアのスポーツバックも存在した。それでも、特に強い印象を残したのは2ドアのクーペ。電動化へ大きくかじを切ったアウディにあって、この機会に1台を検討してみる価値はあるだろう。
8T系と呼ばれる初代A5は、B8系のアウディA4とプラットフォームを共有。欧州仕様のエンジンには、2.7Lで最高出力189ps、3.0Lで240psを発揮したV6ディーゼルターボ(TDI)と、3.2Lで264psの3.2Lガソリンターボ(TSI)が当初用意されていた。
さらに、高性能仕様のS5には、4.2Lの自然吸気V8エンジン(FSI)を搭載。最高出力は354psがうたわれた。
2007年後半に、170psの1.8L 4気筒ガソリンターボ(TFSI)が登場。2008年に210psの2.0L 4気筒ターボが追加され、1.8L版は180psへ変更されている。2009年には、170psの2.0Lディーゼルターボ(TDI)も投入された。
駆動方式は、前輪駆動が標準。だが、一部の仕様で四輪駆動のクワトロも選べた。
高級感の漂う落ち着いたスタイリング
2010年に、フラッグシップとしてRS5が登場。4.2L V8エンジンは450psへ強化され、センターデフとトルクベクタリング機能、ダイナミックダンパーなど、専用アイテムでシャシーは強化されている。
2011年にフェイスリフト。前後のライトとバンパーが新しくなり、フロントグリルも変更され、雰囲気はシャープに。
エンジンはパワーアップし、S5は3.0L V6スーパーチャージャー・ユニットへスイッチ。2014年には、ウルトラと呼ばれる2.0Lディーゼルも追加された。
英国編集部で特に好んだエンジンが、驚くほどパワフルに感じられる1.8Lガソリンターボと、3.0LのV6ディーゼルターボ。2.0Lのディーゼルターボも、洗練され不足ない動力性能を備える。
当時の英国では、ディーゼルエンジンが税金で優遇されており、現在の中古車でもガソリンターボより流通量は多い。ただし、都市部のウルトラ・ローエミッション・ゾーン(ULEZ)規制に対応するのは、2016年式以降になる。
車内空間にはゆとりがあるが、右ハンドル車の場合は、クラッチペダルが右側に寄っている。インフォテインメント・システムは古さを隠せないものの、センターコンソールのダイヤルで操作しやすい。
A5の強みといえるのが、高級感の漂う落ち着いたスタイリング。装備は充実しており、ベーシックなSEグレードでも17インチ・ホイールにレザーシートが与えられていた。Sラインでは18インチへ大きくなり、スポーツサスが組まれる。
当然ながら、S5とRS5は別格。取引価格も高い。
新車時代のAUTOCARの評価は
アスファルトの剥がれた穴を通過すれば、アウディの乗り心地に変化があったことを理解できる。長いホイールベースと優れた前後重量配分で、印象的なほど快適。驚くほど意欲的な回頭性も、特筆すべき点だろう。(2012年1月16日)
オーナーの意見を聞いてみる
ジョン・ラトクリフ氏
「2011年式A5、2.0LのTFSI Sラインを所有しています。RS5風のフロントグリルを与え、リアウインドウをスモークに。見た目の印象を引き締めるため、エンブレム類は剥がしました」
「Sラインなので乗り心地は硬めですが、コーナリングはとても良いです。ふらつきもなく、安心感が高いですね。エンジンは、ロッカーカバー・ガスケットからオイルが滲んでいて、リアのパーキングセンサーは不調ですが、修理はさほど高くないはず」
「燃費は控えめに運転して15.0km/L程度得られますが、少し気張ると13.0km/Lくらいに落ちます。期待に応える走りですよ」
購入時に気をつけたいポイント
ボディとホイール
ドアは長く、先端に傷をつけやすい。アルミホイールのガリキズも珍しくない。
エンジン
1.8Lと2.0Lの初期のTFSIでは、ピストンリングの設計上、エンジンオイルの消費が激しい。2000km毎に1Lの補充が必要だと、アウディは認めている。ただし、この型ではディップスティックが省かれ、車載コンピューターでの診断に頼らざるを得ない。
ディーゼルエンジンでは、20万kmか5年毎の交換になるタイミングベルトが用いられているが、プラスティック製のテンショナーはそこまで耐えられない。ガソリンエンジンは、タイミングチェーン式。エンジンの回転時にガタつく異音がないか確かめる。
トランスミッション
MTの場合、クラッチペダルは軽くて正解。重い場合は不具合を抱えている。シフトレバーの動きも本来軽いが、異音がないか試乗で確かめたい。クラッチペダルは、大きくオフセットしている。
マルチトロニックと呼ばれるCVTは、不具合が少なくない。完全に動かなくなる状態から振動が出る不調まで、症状は多岐に渡る。
スペンションとブレーキ
SラインやS5は、サスペンション・スプリングが硬く、乗り心地は良くない。人によっては不快に感じる場合もあるだろう。ホイールを大きくすると、更に悪化する。
ブレーキフルードは、2年毎の交換が必要。
インテリア
ダッシュボードやパーセルシェルフなどの内装から、走行時にガタガタと振動音が出るのは珍しくない。
知っておくべきこと
初代A5には、3種類のトランスミッションが設定されていた。6速マニュアルと、Sトロニックと呼ばれる7速デュアルクラッチ・オートマティックに加えて、FF車に限定してマルチトロニックと名付けられたCVTも用意された。
MTはシフトフィールが軽く、変速次第で燃費も改善できる。Sトロニックはレスポンスが良く滑らかで、A5ではベストチョイスといえるだろう。
CVTのマルチトロニックには注意が必要。チェーンドライブで、マルチプレート・クラッチと複雑な電子制御システムを備える。ステアリングホイール裏のパドルやシフトレバーで、決められたレシオ間で仮想的に変速できる。
ただし、信頼性は高くない。オーナーからは異常振動が生じたり、警告灯が点灯したり、リバースへ入らなくなる、という不具合が報告されている。
英国ではいくら払うべき?
2000ポンド(約37万円)~7999ポンド(約147万円)
初期型で、走行距離の長いA5が英国では出てくる。価格帯の後半には、フェイスリフト後の2011年式以降のA5も含まれる。S5も発見したが、走行距離は16万km程度。
8000ポンド(約148万円)~1万1999ポンド(約221万円)
2013年式から2015年式のA5が中心の価格帯。状態は全般的に良くなり、走行距離も12万km以下へ短くなる。
1万2000ポンド(約222万円)~1万5999ポンド(約295万円)
2016年式までで、走行距離が8万kmを切るようなA5を英国では選べる。
1万6000ポンド(約296万円)以上
走行距離の短い、後期型のA5やS5を選ぶならこの価格帯から。オプションなども充実している例が多い。
英国で掘り出し物を発見
アウディS5 3.0TFSI Sトロニック 登録:2015年 走行距離:11万7300km 価格:1万7999ポンド(約333万円)
フェイスリフト後のS5で、状態は良さそうだ。スーパーチャージャー付きのV6エンジンは、332psと44.7kg-mを発揮。19インチ・アルミホイールにナッパレザー・インテリア、B&O社のオーディオなど、装備も整っている。
整備履歴に関しては、紹介コメントで触れられていない。確認した方が良いだろう。
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みんなのコメント
ハンドリングのFRスポーツであるビーエムとはタイプが異なる。競技の違うスポーツ選手同士を比較する様なもので、接近と言う言い回しはアウディ側に失礼でしょう。
雪などの走破製で逆の言い回しをするのと同じこと。
内容を読んでもデータを並べただけで記者はなにもわかってない。