ブラジル最高峰の“ハコ車”シリーズ、SCBストックカー・ブラジルの2021年開幕戦が4月24~25日にゴイアニアで開催され、シリーズ3連覇の偉業を達成しているWEC世界耐久選手権レギュラーのダニエル・セラと、ディフェンディングチャンピオンのリカルド・マウリシオを擁するEurofarma-RC(ユーロファーマRC)が2ヒートを席巻。
一方で、TOYOTA GAZOO Racing Brasil(TGRブラジル)陣営の2014年SCB王者ルーベンス・バリチェロ(Full Time Sports/トヨタ・カローラ)や、今季シリーズデビューを果たすトニー・カナーン(Full Time Bassani/トヨタ・カローラ)らは規定違反やトラブルに苦しみ、3度のF1王者である父ネルソン・ピケ率いるPiquet Sports(ピケ・スポーツ)から新体制で参戦のピケJr.は、予選ノータイムからレース2への出走を諦めるなど、トヨタ・カローラ勢には厳しい船出となった。
リカルド・ゾンタもトヨタ陣営に残留。引き続き、SCBでトヨタ・カローラをドライブ
開幕を2週間後に控えたタイミングで、シリーズプロモーターのVicar(バイカー)により開幕戦の地をロンドリーナからゴイアニアへと変更されたSCBは、前述のドライバーたちに加えてシボレー陣営のLubrax Podium Stock Car Team(ルブラックス・ポディウム・ストックカー・チーム)から、元フェラーリF1所属の跳ね馬乗り、フェリペ・マッサのフル参戦が決定するなど、シリーズ史上最高の豪華ドライバー陣による勝負が幕を明けた。
レース1とレース2のインターバルをほぼ消滅させた超スプリント・フォーマットを採用した週末は予選からシボレー勢が速さを見せ、SCBで5冠を誇る“帝王”ことカカ・ブエノ(Crown Racing/シボレー・クルーズ)が久々のポールポジションを獲得。
フロントロウにはセラ、セカンドロウにも2020年チャンピオンのマウリシオが並び、4番手アラム・コデア(Blau Motorsport/シボレー・クルーズ)を含めてクルーズがトップ4グリッドを占拠した。
2021年最初のヒートとなるレース1も、終始シボレー勢同士の争いが繰り広げられ、スタートでポールシッターを出し抜いたセラが前半戦を支配。しかしルーティンピットの戦略で2台を逆転したマウリシオが首位に立つと、セラを従えてユーロファーマRCがワン・ツー体制を築き上げる。
これで今季最初の勝負は決まったかと思われたが、17周レースも残り3周の時点でマウリシオが1コーナーでまさかのスピンを喫し9番手にまで後退。これでセラが今季初優勝を挙げ、2位に帝王ブエノ、そして3位チェッカーを受けたコデアは「レース中の不規則な動き」が危険行為とみなされペナルティに。代わってIpiranga Racing(イピランガ・レーシング)の元イタリアF3王者セザール・ラモスが、トヨタ・カローラ最上位の3位表彰台に滑り込んだ。
■SCB本格デビューのマッサはレース2で失格処分に
さらにこの日は、コデア以外にも多くのドライバーが審議対象としてCBA(ブラジル自動車連盟/Confederação Brasileira de Automobilismo)からペナルティ裁定の処分を受け、バリチェロとゾンタも「規定された必須ウインドウ外でのピットストップ作業」を実施したとして失格処分に。
バリチェロのチームメイトでTexaco Racing team(テキサコ・レーシング・チーム)から参戦のカナーンも、ターン11でクラッシュしリタイアを喫する厳しいデビュー戦となった。
そんなフィニッシュ直後の進行からそのままグリッドへとなだれ込むようにして始まったレース2は、前戦10位フィニッシュだったガエターノ・ディ・マウロ(KTF Racing/シボレー・クルーズ)がリバースポールからのスタートとなり、その隣にはスピンで9番手へと落ちていた王者マウリシオが並んで1コーナーへ。
すると4周にわたって展開された首位攻防は、地力に勝るチャンピオンがディ・マウロに対しオーバーテイクを決めて勝負あり。この12周レースでは3位にもガブリエル・カサグランデ(A. Mattheis-Vogel/シボレー・クルーズ)が入り、シボレー勢が表彰台を独占する結果となった。
一方、カナーンと同じくこの週末がSCB本格デビューとなったマッサは、23番手スタートのレース1でピット作業時の不具合によってリタイアに追い込まれると、続くレース2も後方集団内で肉弾戦を演じ、苦しみながら幾度ものオーバーテイクを決めて17位でフィニッシュ。
しかしこのバトルの際に、同じくデビューレースのグスタボ・フリゴット(RKL/シボレー・クルーズ)を脱落に追いやった「不必要なアクシデント」の責任を追求され、CBAはマッサに対し「レース2を失格処分とする」裁定を下した。
「多くのバトルとオーバーテイク、マシンコンタクト、そしてクルマのトラブルなど可能な限りの要素を備え、あらゆる学習要素がそろうレースになった」と、この日曜に40歳の誕生日を迎えたマッサ。
「最初のレースではうまくスタートしてポジションを稼ぎ、オーバーテイクボタン(ファン投票により使用上限回数の決まる『FAN PUSH』)を使って2度のパッシングも決めた。でもピット作業の不具合で多くを失い、アウトラップの1コーナーでギヤをなくし、4コーナーでは止まれずに直進した。それで終わりさ」
「2戦目も後方でなんとかレースをしたいと思っていたが、前にいたフリゴットと、それに釣られた数台がブレーキで止まりきれずワイドになった。彼らはトラックリミットを離れ、僕はコーナーのエイペックスをキープしたが、戻ってきた際に僕らはヒットした。こちらには何らの意図もないアクシデントだったよ」と主張したマッサ。
続くSCB第2戦は5月15~16日にサンパウロで開催される予定だが、そのインテルラゴスでのレースを前に、CBAの技術委員会とスポーツ委員は現在も一部のドライバーとチームの結果や技術分析、そして抗議の内容をチェックし、開幕戦リザルトを暫定扱いのままとしている。
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