■どんなクルマ?
フェイスリフト? 実質マイナーチェンジ並み
フェラーリSUV マルキオンネCEOが可能性を示す AUTOCAR予想イラスト公開
SX4 S-クロスは、エスクード同様にハンガリー工場から輸入されるスズキならではの “欧製日本車” である。キザシの生産が終了した現在ではスズキの自社製乗用車としては実質的に最上級機種となり、クロスオーバー風味を押し出しつつも、Cセグメント・ハッチバック市場も視野に入れる。
今回はスズキの公式発表だと “一部仕様変更” という表現になるが、エクステリアのフェイスリフトに加えて、手直しは変速機やシャシーにまでおよぶ。一般的な相場観ならマイナーチェンジと呼ぶべき変更内容である。
とくにフロント周辺の変更は比較的大規模で、ライト/グリル/バンパーに加えて、ボンネットフード(=ボディプレスパネル)まで変更されている。
フロントグリルは従来より面積を拡大するとともに位置も上方移動したことで、押し出しは明確に強まった。それ以外にも前後ともランプはLED化、内装も基本意匠はそのままにピアノブラック調やメッキをあしらうなど、いかにも今どきの質感向上策が施される。
変速機が従来のCVTからより小気味よさが期待できるステップド6ATに換装された点はマニア筋には朗報だろう。
シャシーも手直し 新SX4 S-クロス
今回の “マイナーチェンジ” は生産国の地元である欧州では昨年秋に実施されており、彼の地ではガソリンエンジンが1.0ℓ3気筒ターボと1.4ℓ4気筒ターボの最新鋭ユニット2本立てとなったことが最大のトピック。両エンジンともCVTとの組み合わせは想定されておらず、また同じ工場で生産されているエスクードにもCVTの設定はないこともあり、今回を機にS-クロスの2ペダルを6ATに統一したということか。
ただし、日本仕様のエンジンは従来どおりの1.6ℓ自然吸気。グレードも1種類のみで、2WDと4WDという駆動方式のみのバリエーションとなるのもこれまでと変わりない。変速機と車高アップによる空気抵抗増(そして、例の一件以来の走行抵抗値の厳格化?)の影響だろうか、JC08モード燃費はそれぞれで2.0km/ℓずつ悪くなっている。
また、シャシー面でも小さからぬ手直しが施されている。サスペンション本体の変更内容はとくに公表されていない(=大きく変わっていない)が、従来よりタイヤを大径化することでロードクリアランスを20mm拡大。ボディ全高もそのまま20mm高くなっている。
■どんな感じ?
新デザインのフェイスをどう思うかは個人の趣味嗜好によるだろうが、高められた全高とも相まって、高級感は確実に増している。S-クロスがもともとこの種のクルマではスポーツ指向のデザインであることもあって、縦桟クロームメッキグリルとの組み合わせに「プアマンズ(マセラティ)レヴァンテ!?」を想起するのは、ヒイキ目がすぎるか(笑)。
タイヤの大径化はホイールのインチアップではなく、タイヤのサイズ変更による。従来の205/50R17に対して、新サイズは215/55R17。試乗車のタイヤ銘柄は2年ほど前に試乗したマイチェン前モデルと同じコンチネンタル・エココンタクト5。ちなみ、この新しいタイヤサイズはエスクードのそれと共通である。
試乗 そのタイヤの大径化がキモ
さて、今回は東名自動車道・裾野インター周辺の一般道での短時間試乗にとどまったので、断定的なことはいいづらい。
ただ、2年前に乗ったマイチェン前モデルの記憶をたぐりよせるまでもなく、乗り心地の向上は顕著。マイチェン前は高速ではしっとり落ち着くいっぽうで、市街地ではいかにも「欧州チューンでございます」的な硬さがあったが、新しいS-クロスではそれが霧散している。これはサスペンションうんぬん以前に、タイヤのエアボリュームが大幅に増えたことが最大の理由と思われる。
クルマの動きもこれまで以上にゆったり抑制が効いている。それでいて、もともと定評のあったステアリングの正確性は従来比で大きなちがいはなく、接地感もより好印象だった。
1.6ℓ+6ATの組み合わせは基本的にエスクードと同じだが、最終減速比はS-クロスのほうが少し低い。
車重は4WD同士だとエスクードとほぼ同等だが、今回の2WDはそれより60kgほど軽い。絶対的な加速性能などはCVTが有利だろうが、新しい6ATのほうが、体感的にはやはり小気味よく、微妙な速度調整もやりやすかったことは事実である。
■「買い」か?
タイヤのハイトが増えて、地上高も上がっているので、高速や山坂道ではデメリットを感じる部分もあるかもしれない。しかし、少なくとも今回の試乗では、それを想起させるようなクセも感じられず、日本で常識的に使える領域(のプラスアルファ程度まで)なら、このマイチェンモデルのほうがベターと感じる人が圧倒的に多いと思われる。
新しいS-クロスの価格は従来比で2万円強のアップ。これまでのS-クロスの価格を妥当とするなら、この程度のエクストラコストで、内外装や乗り心地がこれだけレベルアップししているなら「安い」と思えるだろう。
また、4WDでも200万円台前半という価格は、一見すると競合他車より安く見える。しかし、側突方面エアバッグや自動ブレーキの類は用意されないので、内容を吟味すると特別に安いとまではいえない。また、輸入車ゆえに装備を細かく取捨選択することもできず、また1.6ℓという排気量が日本の税制では中途半端……というあたりが弱点となるかも。
というわけで、日本でも1.0ℓや1.4ℓの最新鋭ターボで上陸してくれたほうが魅力は大きい……なんてことはスズキもとっくに承知しているはず。せっかく素晴らしい乗り心地を得たS-クロスだけに、もう一歩、国内でも積極的な姿勢を見せてほしい。
スズキSX4 S-クロス(FF)
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