2021年1月に開幕戦の幕が切って落とされる独創的EVオフロード選手権『Extreme E(エクストリームE)』の初年度シーズンに向け、北米カリフォルニアに拠点を置くピュアEVメーカー『Fisker Inc.(フィスカー)』が、公式シリーズパートナー就任に向けた協議を重ねていることが明らかになった。また、将来的にはエントラントとしてワークスチームを送り込むことも検討しているという。
かつて『アストンマーティンDB9』や『BMW Z8』のデザインを手掛けたことで知られる創業者ヘンリック・フィスカーの手により産声を上げ、2011年にはプラグインハイブリッドの『カルマ』でロードカー市場に参入したフィスカー・オートモーティブは、惜しくも2013年に経営破綻。その後ヘンリックは、紆余曲折を経て完全電気自動車を開発製造する新会社『Fisker Inc.(フィスカー)』を立ち上げた。
エクストリームE:ユナイテッド・オートスポーツ、提携先のアンドレッティに参画しEVオフロード戦へ
現在、シザーズドアを採用するスポーツモデルの『EMotion(エモーション)』に加え、2022年に量産化予定のSUV『Ocean(オーシャン)』と、その派生ピックアップトラック『Alaska(アラスカ)』に社運を賭けるフィスカーは、このフルEVの世界で「もっとも感情を揺さぶる持続可能な電気自動車と先進的なモビリティソリューションのクリエーター」になるべく、この新EVオフロード選手権との提携を目指している。
このアライアンスに対し、エクストリームEの創設者兼CEOであるアレハンドロ・アガグは「純粋なEVメーカーであるフィスカーがエクストリームEに参加し、最初のチャンピオンシップを開始する可能性に興奮している」とその参戦可能性にも言及しつつ歓迎の意を示した。
「世界でもっとも持続可能なレースシリーズを構築することは、彼らの新しいSUV『オーシャン』の発売とプロモーションに向けた完璧なプラットフォームとなり、プロダクトの耐久性を証明する挑戦的なテスト環境を提供することになるだろう」と続けたアガグ。
2021年1月に開幕が迫ったこの新生EVオフロード・シリーズは全5戦で争われ、気候変動や環境問題によって大きなダメージや悪影響を受けている世界中の過酷な環境が舞台に。また、各地域をまたぐシリーズのベース基地として、元貨客船を改装した“フローティング・パドック”も採用される。
■北極圏・グリーンランドで初の本格モータースポーツイベント実施へ
その全5戦の内訳は、2021年1月22~24日にセネガル・ラックローズ近郊を舞台にオーシャン(海洋)ラウンドが行われ、3月4~6日に第2戦としてサウジアラビア北西部アル・ウラ地方のシャラーンでデザート(砂漠)ラウンドを開催。
続いてネパールのカリガンダキ渓谷では、グラシア(氷河)戦が5月6~8日に争われ、8月27~29日にシリーズ最初の開催候補地としてアナウンスされたグリーンランド、カンゲルルススアークでアークティク(北極圏)ラウンドが実施される。
本格的モータースポーツイベント初開催のグリーンランドを含め、この5つの開催各国では当地の環境保全活動を啓蒙するアクティビティも予定し、エクストリームEがビジョンに掲げる「人間の干渉の影響を浮き彫りにし、環境の保護と地球の保護に役立つEVの市場浸透を促進する」ことが主な狙いとされている。
またレースフォーマットにも独自のスタイルが導入され、チームは“ジェンダーフリー”を目指して男女1名ずつのドライバーで構成。ドライバーとコドライバーとして2周のレースごとに、550PSを発生するワンメイクEVマシン『ODYSSEY 21』を乗り換え、1ラップずつドライブする形式が予定されている。
フィスカー社の会長兼最高経営責任者であるヘンリック・フィスカーも、この新たなチャレンジに向け、次のように意気込みを語っている。
「アレハンドロ(・アガグ)は、フォーミュラEで完全電気自動車をモータースポーツのメインストリームに押し上げた。気候変動によってもたらされる脅威のための教育プラットフォーム構築すると同時に、オフロードレースを再発明するという彼のビジョンを全面的にサポートしたい」と続けたフィスカー氏。
「エクストリームEとFisker Inc.は、目指す使命と価値観において完全に一致している。まるで『スターウォーズ』の“ポッドレース”とダカールラリーが融合したような全5戦の世界的冒険は、電気自動車産業のテストベッドの役割を担い、究極の環境で技術革新を促すことにも繋がる」
「その結果、EVが持つパフォーマンスの可能性と環境保全メリットの両面において、重要な未来に直面する消費者により良い選択肢を提供することになるだろう」
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