2007年、プジョー308が欧州で販売開始された。一見207と似たスタイリングだったが、中身はまさに「ひとクラス上の」内容。先代307からちょっと背の高いコンセプトを受け継いだ308はどんな進化を遂げていたのか。ここでは生まれ故郷フランスで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年12月号より)
ガソリンの主力エンジンは凝ったメカニズムの最新1.6L直噴ターボ
プジョー308の国際試乗会はパリから東へ約400km、フランス・アルザス地方ソショー周辺で開催された。ぶどう畑が広がる美しい景色を持つこの地方は、プジョー家発祥の地でもある。この地を試乗会に選んだことに、プジョーの308への意気込みがあらわれている。
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308の第一印象は「207とよく似ている」というものだった。並べてみれば、ボディの張りやボリューム感などクラスの違いを感じさせるが、単独で見れば間違えてしまいそうだ。世界中のコンパクトカーに影響を与えた307の「セミトール・アークテクチャー」、つまりちょっと背の高いデザインコンセプトを受け継ぎながら、全長を74mm、全幅を53mm拡大し、全長を12mmほど下げたことで、快適な空間を実現しつつ違和感のないバランスを見つけ出している。これを307からの進化と207からの流れの融合と見ることもできる。
プラットフォームは207が「プラットフォーム1」を使うのに対し、308は307のものをアップデートした「プラットフォーム2」とする。トレッドはボディの拡大に合わせて広げられているが、サスペンションはやはり307の改良版となる。ホイールベースは2608mmと307と同じだから、全長の拡大はオーバーハングということになるが、それは安全性とスタイリングのために使われている。ちなみにフロント部は3パス衝撃吸収構造として正面からの衝突に備えている。なお安全性、軽量化、リペア性を考えてこの部分は樹脂製としている。
ボディバリエーションは現時点では5ドアと3ドアの2種類。207同様、フロントグリルとリアバンパー下のデザインを変えた、カジュアル仕様とプレミアム仕様を用意する。日本に導入されるモデルはすべてプレミアム仕様となる模様。
搭載されるガソリンエンジンは207のものと基本的に同じ。いずれもBMWと共同開発されたユニットで、1.4L自然吸気、1.6L自然吸気、1.6L直噴ターボが用意される。今後も含めて、2Lエンジンの搭載予定はないという。「小さな排気量から効率よく十分なトルクを発生させる」というのがプジョーの考え方であり、また時代の流れということなのだろう。このエンジンは凝ったメカニズムを持っており、このクラスの価格帯ではなかなか採用できないもの。量産効果を狙って、多くの車種に搭載して対応していくという狙いもありそうだ。
トランスミッションは1.4Lは5速MT、1.6L自然吸気と1.6L直噴ターボは4速AT(AL4)と5速MTが組み合わされる。日本導入モデルは1.6L直噴ターボになりそうだが、導入時には5速MTは6速化されるという。もちろん4速ATも設定されるはずだ。
ディーゼルエンジンは16L HDiと2L HDiの2種類。「308には6速ATの設定がある」という噂があったが、それはどうやら2L HDiに組み合わされる6速ATのことだったようだ。ガソリンエンジン用の6速ATも開発中とのことだが、発表までは少し時間がかかりそうだ。
ボディの作りや室内空間など207とは明確な違いがある
ここで少し疑問を感じるのが、207との差別化。それに関しては、207は1.6L自然吸気が中心で、1.6L直噴ターボはスポーツモデルという位置づけ。一方、308は1.6L直噴ターボを中心として、いずれさらにハイアウトプットバージョンも展開していくとのこと。ボディバリエーションでいえば、308は5ドアが中心になると想定しているようで、5ドアの比率を90%と見積もっている。
つまり、308は207よりもさらに実際に使う上での居住性や実用性、快適性を重視しているということになる。
それは室内空間を見れば一目瞭然で、207よりもさらに上質さを増したインテリアは快適そのもの。307では着座姿勢がややアップライト気味となっていたが、308ではそれが自然なものとなり、それでいて傾きの強いAピラーも気にならない。横方向の広がりも実感できるし、パノラミックルーフもあってか、広く明るく、とにかく開放的だ。
前席シートは大きめで優しくしっかりとサポートしてくれるし、後席シートも厚みのあるもので、シートバックの傾斜も適切で心地よい。これは後席の折りたたみをダブルフォールディングのままとしたことで可能となったらしい。
後席空間、荷室空間も207とははっきりと違う。後席乗員の足下には余裕があるし、荷室もVDA法で348L、天井まで積めば427L、後席を倒せば1201Lという大容量を確保している。
試乗コースはアルザス地方の丘陵地帯、ワインディング、オートルートが中心。ここで308が見せた走りはプジョーらしい実にしなやかなものだった。
ボディ剛性を高めて得た、ゆったりとした乗り心地
日本に導入されるという1.6L直噴ターボモデルを中心に試乗したが、サスペンションのストロークがたっぷりとあり、フロントの接地性がいいので、安心して気持ちよく走ることができる。最近のプジョーはやや猫足的味付けが薄れてドイツ車的になったと言われるが、308ではかつての「優しくて、それでいて粘る」走り味が戻ったように思う。一部路面の悪いところもあったが、そのいなし方も心得たものだった。おそらく、ねじれ剛性で10%向上したというボディ強化も効いているのだろう。
今回の試乗会では5速MTしか用意されていなかったが、ほとんど信号のない道路状況、イライラするような速度低下のない交通事情では、問題がないどころか、実に愉しいと思えるものだった。日本では少し扱いにくさが残る4速ATでも、この環境ではなんの問題もないだろう。
エンジンは分厚いトルクと効率を重視して設計されていて、でしゃばることなく仕事をする。低回転から素早くトルクを出し、踏めばきっちりと回る。エンジン単体での愉しさを感じることはなかったが、308の走り全体のテイストには欠かせないものになっている。
ディーゼルの2.0HDiにも試乗することができたが、こちらは骨太な回転フィールが印象的で、どこからでもトルクを発生する感じ。この頼もしさも魅力的だが、個人的にはガソリン1.6L直噴ターボの軽快でそれでいてトルクフルなフィーリングに好印象を持った。静かで振動が少なく、燃費もよく、排出ガスがクリーンとなれば、価格面も含めて、やはり現時点では日本市場にはガソリンエンジンがいいだろう。
新型308のセールスポイントは、快適で安全なクルマに仕上げるためにボディを拡大して車両重量が70kgほど重くなっているにもかかわらず、パフォーマンスはむしろ向上し、さらに燃費も約8%良くなっていること。プジョーによれば、その秘密はエンジンの効率化とエアロダイナミクスの熟成にあるらしい。快適性や性能を向上させながら、燃費性能も改善する、それが「プジョーのテクノロジー」と胸を張る。
さて、308の日本仕様がどうなるのか気になるところだが、その発表は2008年夏頃という。まずは5ドア1.6L直噴ターボの4速ATをリリース、その後、6速MTを導入する。2008年内には、308SW、そしてハイスペックバージョンを3ドアで投入。さらに2009年には308CC、そしてもっとハイパワーなエンジン、6速ATの追加へと続いていく予定だ。
問題は日本での価格設定。207は239万円から320万円。1.6Lターボ搭載モデル(GT/3ドア/5MT)は264万円だから、308の内容や装備を見れば同じ1.6Lターボ搭載モデルの5ドアならば300万円を超えるのだろうか。また、ベーシックなモデルは280万円あたりか。(文:松本雅弘/Motor Magazine 2007年12月号より)
プジョー 308 1.6THP 主要諸元
●全長×全幅×全高:4276×1815×1498mm
●ホイールベース:2608mm
●車両重量:1327kg(EU)
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:150ps/5800rpm
●最大トルク:240Nm/1400rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:5速MT
※欧州仕様
プジョー 308 1.6THP(4AT) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4276×1815×1498mm
●ホイールベース:2608mm
●車両重量:1355kg(EU)
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:140ps/6000rpm
●最大トルク:240Nm/1400rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:4速AT
※欧州仕様
[ アルバム : プジョー 308 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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