未来のトップドライバー候補として、これから日本のモータースポーツ界を担う若手ドライバーにスポットを当てる『ネクスト・スター』。第2回はトヨタ育成としてTOYOTA GAZOO Racingドライバー・チャレンジプログラム・レーシングスクール(TGR-DC RS)から2年目のFIA-F4を戦う佐野雄城に話を聞いた。
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TGR-DCドライバーの佐野雄城と卜部和久がル・マンを訪問「ここでレースをしたい」と刺激受ける
──まず、佐野選手がモータースポーツを始めたきっかけは何だったのでしょうか?
佐野雄城(以下、佐野):昔からお父さんがレース好きで、レースを見に行ったりしていました。最初はキッズカートに乗せもらい、そこから自分もレースが好きになって始めましたね。
──カートデビューからのキャリアを教えていただけますでしょうか?
佐野:その後は小学校3年生くらいから本格的にレーシングカートを始めて、トヨタさんのスクールを14歳のときに受講しました。スクールは14歳と15歳の2年間受けて、16歳からTDR-DCレーシングスクールでFIA-F4に参戦しています。
──メーカーのレーシングスクールが数多くあるなか、佐野選手はなぜトヨタを選んだのでしょうか?
佐野:自分はトヨタさんの育成プログラムが合っているなと感じました。理由としては、キャリアを重ねて上位カテゴリーにステップアップしていくと思いますけど、トヨタさんはいろいろなカテゴリーにチャレンジしています。ですので、育成プログラムというより、トップカテゴリーにステップアップしたとき、トヨタさんだと国内外多くのレースに挑戦できることが僕にとって魅力的でした。
──佐野選手は今年FIA-F4で2年目のシーズンを迎えています。開幕戦では優勝で幸先良いスタート切りましたが、その後の戦いはいかがですか?
佐野:昨シーズンはけっこう苦戦していた部分がありました。そのこともあり、今年はシーズンオフの長い時間で、いろいろなことを準備して開幕戦に臨み、その開幕戦でまず優勝することができました。そこから良い流れに乗りたかったのですけど、やはり難しい部分も多く、今の気持ちとしては『一筋縄ではいかないな』というのが正直なところです。
──6月にはフランスのル・マン24時間レースを訪れていましたね。そこで感じたものなどはありますか?
佐野:やはり日本とヨーロッパでは文化が異なり、ヨーロッパにはヨーロッパの良さ、日本には日本の良さがあると思うのですけど、ドライバーズパレードがかっこよすぎて、いちばん印象に残っています。パレードでのレーシングドライバーのスター性がすごくかっこよかったので、僕もああいったスター選手になりたいです。
また、パドックやチームホスピタリティなども、さまざまな建物が設営されていたのですけど、それがもう本当にすごくて『仮設なのにここまでかっこいいのか!?』とけっこう衝撃を受けましたね。
──そのル・マンではTGR WECチームの小林可夢偉代表兼選手と平川亮選手、トヨタ育成としてFIA F2に参戦している宮田莉朋選手と話している姿が見られましたが、どのような話をしたのですか?
佐野:ヨーロッパで戦うにあたり必要な部分やスキル、あとはル・マンの見どころなどを教えてもらいました。僕はそのなかで宮田選手の“メンタルについてのお話”がいちばん印象に残っていて、レーシングドライバーはマシンに乗って速く走ることが仕事だと思うのですけど、宮田選手には、そんななかで『海外の環境に適応しながらレースをする』というメンタル面での気持ちも重要になるという話をしていただきました。
■憧れのドライバーは「すごくフレンドリー」
──メンタル面の話ということですと、佐野選手はレースで緊張するタイプですか?
佐野:今(インタビュー中)も緊張しています(苦笑)。僕はレースをしているときもけっこう緊張したりします。基本的にいつもレースは楽しみではあるのですけど、今後ステップアップしていく部分では結果を残さないといけない状況です。そういったことを考えると『結果を残さないといけない』と緊張してしまう部分が大きいです。
──それは佐野選手のなかで短所になるのでしょうか?
佐野:短所でもあり長所でもあるかなと思っています。おそらくレースが楽しみで、レースに人生を賭けているから緊張するのだと思うので、そういった部分はプラスに捉えていて、レースのためならかなり頑張ることができるのが長所です。基本的に諦めるようなことはしません。
──佐野選手は現在17歳で高校生レーシングドライバーですね。学校生活とレーサーはどのように両立させているのでしょうか?
佐野:学校側もレーシングドライバーの活動は理解してくれています。夏休みはほぼレース漬けの日々になり、ふだんは授業を休むことも多いので授業内容が遅れてしまったりするのですけど、ノートを写させてもらったりなど、そういった部分で補っています。なので、意外と高校生とレーサーの両立は成り立っています。
──そうなのですね。では、高校生レーサーから見た憧れの選手などはいらっしゃいますか?
佐野:ニック・デ・フリース選手に憧れていて、ル・マンでお話させていただいたときに、対応がすごくフレンドリーでした。僕が話しかけたらいろいろと答えてくれましたし、逆にデ・フリース選手からも話しかけてくれて、『自分もこうなりたいな』と思わせてくれるドライバーでした。¥¥
──そのデ・フリース選手が参戦していたF1、そして実際に現地で見たWEC(世界耐久選手権)などを含め、佐野選手が将来参戦したいカテゴリーはありますでしょうか?
佐野:僕はもともと世界のレースに参戦したいと思っていて、今年のル・マン24時間レースで実際に世界の舞台を見ることができました。やはり、ル・マンの現場に行ったことで『世界を目指したい』という気持ちがいっそう強くなりました。
──では、その目標に向けて今季のFIA-F4を今後どのように戦っていきたいですか?
佐野:表彰台ももちろんですが、まずはもう一勝を挙げることを目指してやっていきたいです。最終的にはもちろんシリーズチャンピオンを獲得し、ステップアップできるように頑張っていきたいです。
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インタビューのはじめは本文にもあるように「緊張」しながら答えていたが、途中からは10代らしい初々しい笑顔もみることができた佐野。高校卒業後は「進学せずレーシングドライバー1本」で世界へのキャリアを進めたいと言う姿からは、将来TGRドライバーとして世界のトップカテゴリーを目指す覚悟を感じさせた。今季のFIA-F4でその覚悟を結果として表すことができるだろうか。
■プロフィール 佐野雄城(さの・ゆうき)
2006年12月12日静岡県出身。2009年にキッズカートデビューを飾ると、2015年にレーシングカートへステップアップ。2019年にはジュニアカート選手権FS-125クラスでシリーズ2位となると、2022年にはオートバックス全日本カート選手権OK部門シリーズ2位に輝き、2023年からFIA-F4に参戦している。2024年は第1戦で初優勝を挙げ、現在ランキング6位につけている。
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