■なぜいまEV本格導入? マツダがとりくんできた電動化ビジョンとは
昨今、自動車業界のトレンドは、電気自動車やハイブリッドカーに代表される「電動化」です。かつてはディーゼルエンジンの普及を推進し、電動化に懐疑的だった欧州メーカーも、いまでは方針を転換。電動化は、重要な経営課題のひとつとなっています。
めっちゃ上品? デミオからマツダ2になって進化した部分を画像でチェック!(20枚)
そんななか、現在も「内燃機関の理想の追求」にこだわっているマツダが、同社の電動化ビジョンを形にした電気自動車「電動技術検証車両(e-TPV [Technology Prove-out Vehicle] )」を発表しました。いったいなぜ、マツダはこのタイミングで電気自動車をお披露目したのでしょうか。
自動車業界は、現在電動化に向けた大きな転換期となっていて、欧州ではCO2排出削減を目的とする燃費規制が導入され、北米ではゼロエミッション規制、中国では新エネルギー車(NEV)規制、日本では2050年までに乗用車の温室効果ガス9割削減を目指す長期ビジョンなど、さまざまな取り組みがおこなわれています。
そんななか、「マツダ3」に搭載予定のガソリン圧縮着火エンジン「スカイアクティブX」に代表されるように、マツダは現在も「内燃機関の理想の追求」にこだわっています。
そのような姿勢からか、「マツダは電動化に否定的」、「ガラパゴス化」、「時代遅れ」などと揶揄する人もいますが、それは大きな間違いです。
いまから12年前の2007年、マツダは技術開発の長期ビジョン「サスティナブル“Zoom-Zoom”宣言」を発表しましたが、その中のひとつである「ビルディングブロック戦略」にはこのように記されていました。
「クルマの基本性能を決めるエンジンや車両の骨格など、ベース技術を徹底的に改善し、その上で電気デバイスを組み合わせることで、CO2の総排出量を大幅に削減する」
あれから12年、筆者(山本シンヤ)は、今回ノルウェー・オスロで行なわれた「マツダ・グローバル・テック・フォーラム2019」に参加しました。その目的は、マツダが考える電動化ビジョンをかたちにした電動技術検証車両(以下、e-TPV)の試乗のためです。
ノルウェーはEVシェアが5割を超える「EV先進国」で、街中には世界中のEVが勢揃い。マツダ自身も「EVの使用環境を学ぶにはピッタリな地域」だと語っています。
マツダがこのタイミングでEVをお披露目した理由は単純明快で、「電動化の準備が整った」からです。ここではその詳細を紐解いていきたいと思います。
今回試乗したe-TPVはマツダの電動化ビジョンの中でもっともベーシックな構成となる「ピュアEV」です。見た目はSUVの「CX-30」ですが、あくまで“仮の姿”となります。
■マツダらしいEV!? 試乗で明らかになった乗り味は
e-TPVのスペックは、モーター出力が105kW(約141馬力)/265Nm、駆動用バッテリーが35.5kWhと、すでに世に出ているEVと比べると控えめに感じるかもしれません。
航続距離は未公表ですが、スペックから推測すると恐らく200km前後といった感じではないでしょうか。ただ、これにもしっかりと理由があります。
ひとつは、マツダの考える電動化の特徴は「マルチソリューション」。つまりEVにすべてを託すのではなく、距離を求めるなら内燃機関と組み合わせてレンジエクステンダー/プラグインハイブリッド/シリーズハイブリッドと、適材適所で応用させるパワートレインという考え方です。つまり、地域の特性に応じてさまざまな引出しを用意しているのです。
もうひとつは「地球環境負荷の低減」になります。闇雲に大容量バッテリーを搭載するのではなく、Well to Wheelに加えて資源採掘から廃棄までクルマのライフサイクル全体でのCO2低減を目指す「LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)」の観点から、適切な容量のバッテリーを搭載することで、本質的な地球環境負荷低減も考えているのです。
ちなみに組み合わせる内燃機関は、あの「ロータリーエンジン」です。2012年に「RX-8」が生産終了して以降、ロータリーエンジンの歴史は途切れていましたが、電動化に合わせて、当時とは違う形ではあるものの、復活を遂げます。
小型で軽量/高いレイアウト性に加え、動弁系無し/シンプルな塊構造/滑らかな燃焼/フルバランスといったロータリーエンジンのメリットが、マツダの電動化技術をサポートします。
今回は技術展示のみでしたが、こちらと組み合わせたモデルも非常に楽しみです。
マルチソリューションにより、「EV=航続距離」という呪縛から逃れたことで手に入れたメリットは多々あります。
モーター/インバーター/DCDCコンバーター/ジャンクションBOXの一体化に伴うユニットの小型化により、ボンネットを開けるとスペースはスカスカ。
床下に薄く配置されたバッテリーパックも、CX-30のホイールベース(2655mm)内にしっかりと収められているので、居住性に関しても内燃機関モデルとほぼ同じと考えて良いと思います。
昨今、EVはバッテリー容量に合わせてボディサイズが決まってしまい、本来EVを使いたい人のための物になっているかというと疑問がありましたが、マツダの考え方は適切な車両パッケージングに貢献するはずです。
プラットフォームは他社のような専用品ではなく、マツダ3から採用された多方向環状構造ボディを用いた次世代プラットフォーム「スカイアクティブビークルアーキテクチャ」です。
じつは、スカイアクティブビークルアーキテクチャは企画当初から電動化を視野に入れた設計で、変更は最小限だといいます。むしろバッテリーパックと車体を強固に結合(多方向環状構造ボディの進化)することで、車体剛性はさらに進化しているそうです。
では、実際に乗るとどうでしょうか。運転席に座りシートポジションを合わせてスタートします。筆者はこれまでさまざまなEVに乗っていますが、第一印象は「ほかのEVとは違う」でした。
もちろん動力減となるモーターは内燃機関と違い「応答遅れ」はほぼゼロ、アクセルを踏んだと同時に加速が始まる、という意味では同じです。
しかし、ほかのピュアEVのように「内燃機関とは違うでしょ」というようなモリモリ湧き出る力強さではなく、あくまでもドライバーのペダル操作に合わせて必要なだけ力強さが増していく自然なフィーリングです。
言葉として正しいかわかりませんが、EVというよりも「静か」で「シームレス」で「超滑らか」な内燃機関、と表現したほうが良いかもしれません。
e-TPVに乗って「これくらいのサイズのクルマであれば、こんな加速をしてくれるよね」というような、動力性能に対する期待値と実際のパフォーマンスはリンクしており、絶対的な動力性能に関しても十分以上だと思いました。
一般的にEVは無音といわれますが、実際は電車と同じくインバーター音が聞こえます。しかし、e-TPVは「トルクの向き」と「大きさ」をドライバーに感じさせるために独自のサウンドがプラスされています。
そのサウンドを言葉で例えるのは難しいですが、強いていえばEVと内燃機関がミックスしたようなイメージでしょうか。乗っていて違和感はまったくありませんでしたが、個人的には無理に内燃機関に似せる必要はないと感じたのも事実です。
ただ、このサウンドをプラスしたことで、ロードノイズ(ノルウェーの舗装路は条件がとくに厳しい)をはじめとする走行音が逆に緩和される効果があり、結果的に静粛性にも大きく寄与していることが体感できました。
■「マツダ車最良」の動的質感!? 2019年秋公開の新型EVの姿とは
ハンドリングに関しては、マツダの新世代商品に通じるブレのない走りに安心する一方、新たな驚きもありました。
一般的に多くのEVは低重心/前後バランスの最適化で落ち着きある走りを実現するモデルが多いのですが、e-TPVはそれに加えて重いバッテリーを搭載していることを忘れてしまうような「身のこなしの軽さ」と「クロスオーバーを感じさせない路面に吸い付くような一体感」、「路面を選ばずフラット感と質の高い乗り心地」が備わっていました。
これは多方向環状構造ボディや伝達経路の高剛性化による応答遅れの低減や力の伝達のコントロール、モーターによるGベクタリンクコントロール作動領域の拡大が効いているそうです。
例えるなら、「見た目はCX-30、走りは高級プレミアムセダン」といったイメージで、動的質感の高さは技術検証車ながら「マツダ車最良」の仕上がりといっても過言ではありません。
マツダ3にはガソリン、ディーゼル、スカイアクティブXとパワートレインが豊富にラインアップされていますが、「車両全体のバランス」という意味では、残念ながらどれも決定打に欠けるのも事実です。
しかし、e-TPVに乗って感じたのは、マツダが目指す走りの理想である、クルマに乗っている状態が「自然で違和感がない」、走る/曲がる/止まるの「究極の滑らかさ」がもっとも体現できているクルマだと感じました。
このように単なる電動化に留まらない所は、「じつにマツダらしいな」と感じた一方で、内燃機関モデルは今後どう進化させるべきか考えさせられました。
筆者は、ガソリン、ディーゼル、スカイアクティブXがEVのような滑らかな特性を目指すのではなく、むしろ各々の“個性”を活かす方向に進化させていくべきだと思います。
どれも同じで単なる燃料違いだけなら、あえて複数のパワートレインを揃える必要はないかなと考えました。
このパワートレイン/プラットフォームを採用した量産モデルは2019年10月におこなわれる東京モーターショー2019で世界初公開され、2020年に市場導入される予定です。
そのモデルは「既存のモデルではなく新型車」という以外、今回はノーアナウンスでしたが、マツダ関係者は満面の笑みで「ご期待ください」とのこと。この走りにふさわしいデザインはセダン、ハッチバック、それともクーペでしょうか。
2020年に、マツダは創立100周年を迎えますが、その門出にふさわしいクルマに仕上がっていることを期待しています。
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