ワンメイク・ラリーの専用マシン
こんなGRヤリスを待っていた。ラリー仕様のサスペンションとダートタイヤを履き、余計な内装などは剥ぎ取られている。駆動系に必要な調整が与えられているものの、基本的にパワーアップしておらず、極めて扱いやすい。夢のGRヤリスだ。
【画像】GRヤリス・イベリアンカップ 多彩なラリーマシン グループBのフェラーリ308ほか 全121枚
トヨタ・ガズーレーシング・イベリヤン・カップと呼ばれるイベントは、スペイン・トヨタと、マドリードを拠点にするモーター&スポーツ・インスティテュート(MSi)社、ポルトガルのトヨタ代理店、カエターノ社との共同で運営されている。
ワンメイク・ラリー・チャンピオンシップで、欧州大陸の西端、イベリア半島に設定されたグラベルコースを中心に9ステージで構成される。専用マシンの費用は、税などを抜いて6万5800ユーロ(約894万円)とのこと。
2022年だけでなく、2023年と2024年にも既に開催が決まっている。今回は、そのカップ・マシンのステアリングホイールを握らせていただいた。
車両開発を主に担当したのが、MSi社。公道用のトヨタGRヤリスをベースに、かなりの手が加えられている。内装パネルはほぼなく、ハードシェルのバケットシートとロールケージが組み込まれ、消火器を追加。公表できない部分もあるという。
GRヤリスでサーキットパッケージを選択すると、トルセンLSDが前後に搭載される。だがこのカップ・マシンには、クスコ社が開発した機械式LSDが組まれている。クラッチも強化品だそうだ。
シャシーは入念に改良 エンジンはオリジナル
サスペンションの基本構成は、オリジナルのまま。だが、スペインのテクノショック社製コイルオーバーキットを装備し、ドロップリンクで車高が持ち上げられている。フロントストラットには、補強用のブレースが追加された。
ブレーキは基本的にノーマル。ラリー仕様のダート用15インチ・ホイールの内側へ、ぎりぎりに納まっている。ターマック用ホイールは、もっと大径だという。タイヤはミシュランだ。
オイルサンプのガードが追加され、車内換気用のエアインテークがルーフに開けられている。ヘッドライトは明るさを増し、触媒を残したままエグゾーストも専用のものが組んである。サウンドが素晴らしい。
トヨタの1.6L 3気筒ターボエンジン自体には、手は加えられていない。だが、そもそも充分にパワフルといえる。
小さなドアミラー・カバーは、カーボンファイバー製。フロントフェンダーはアルミニウム製で、多少ぶつけても叩いて元の形に戻せる。肉厚で赤いマッドフラップが、トミ・マキネンの勇姿を彷彿とさせる。
今回筆者が試乗させてもらったのは、MSi社の開発ドライバーで、ラリー・スペインでの優勝経験を持つペペ・ロペス氏のマシン。短いダートサーキットで、その能力を確かめてみた。
遥かに生々しく、軽く、より繊細
公道用のGRヤリスとは異なり、深いバケットシートとロールケージが組まれているため、GRヤリス・イベリアンカップへの乗り降りは少々難しい。身体を曲げてシートへ腰を下ろすと、通常のヤリスとは異なるドライビングポジションに気づく。
明らかに座面位置が低い。通常のGRヤリスは少々高すぎた。フロアに近い位置へ座っているから、常に視界に入っていたバックミラーが邪魔にならない。
発進は、拍子抜けするほど簡単。クラッチはつなぎやすく、ステアリングホイールは指先で回せるほど軽くダイレクト。運転席からの視界も良い。
基本的には、イベリヤン・カップのメカニックがクルマをセッティングしてくれる。ドライバーが気を揉むような装備は、何ひとつない。
フロントタイヤの切れ角はそのままだが、スピードが乗ると自由度も増すため、これ以上は必要ない。6速MTには、レブマッチ機能が残されている。
アクセルペダルを踏み込むと、傍若無人な個性が顕になる。カップ・マシンは遥かに生々しく、軽く、より繊細に操縦できる。路面に砂が浮いたグラベルコースを、衝撃的な勢いで加速していく。
最高出力260psと、最大トルク36.7kg-mという数字に変わりはない。それでも、スリップしながら加速できるし、コーナーでは小石を撒き散らしながらスライドできる。
シャシーは僅かにアンダーステア基調ながら、タイトコーナーでは、アクセル操作に対して鋭くも病みつきになるオーバーステアで反応。クスコ社製のLSDの効能が、存分に発揮される。
GRヤリスの素質の高さへ気付く
ハンドブレーキ・ターンも自在ながら、クイックな身のこなしで、極めてきついヘアピン意外は必要なかった。それ以外のコーナーでは、軽いきっかけを与えてやれば、鋭くボディをスイングしながらノーズがインへ食らいつく。
ダートタイヤが砂埃を巻き上げる。バラバラと小石がボディシェルへ当たる大騒ぎの中、勢いよく短いストレートめがけて加速していく。
3周ほど走ると、カップ・マシンとすっかり親しくなれた。ステアリングホイール上部の黄色いマーカーは、ほとんど左右に倒れたまま。12時を指すのは、ごく僅かな時間でしかない。安定性が担保されつつ、自在に操れる。ひたすら楽しい。
タイヤのグリップ力にも驚かされるが、どこまで路面を掴ませ、どこからスライドさせるかは、アクセルペダルの踏み方次第。長いサスペンションのストローク量と、軽量化されたボディシェルが、その自由度を高めている。
GRヤリス・イベリアンカップの高い能力を発揮させるには、妥当なステージが必要になる。ラリーイベント以外で存分に楽しむことは、現実的には難しい。
同時に、トヨタGRヤリスの素質の高さにも気付かされた。ボディを軽量化し、サスペンションのストロークを少し長くするだけで、郊外の道を一層爽快に疾走できそうだ。
トヨタ・ガズーレーシング GRヤリス・イベリアンカップ(欧州仕様)のスペック
欧州価格:6万5800ユーロ(約894万円)
全長:3995mm(標準GRヤリス)
全幅:1805mm(標準GRヤリス)
全高:1455mm(標準GRヤリス)
最高速度:225km/h(予想)
0-100km/h加速:5.0秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1280kg
パワートレイン:直列3気筒1618ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:260ps/6500rpm
最大トルク:36.7kg-m/3000-4000rpm
ギアボックス:6速マニュアル
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チョロQ