のRSであるRS 2 アバントから、RSモデル=アバント(ステーションワゴン)というコンセプトを現代に受け継ぐ “最速ワゴン”。その最新モデルとなるRS4アバントに試乗し、実用性と快適性、ダイナミック性能を高次元で融合するハイパフォーマンスカーの洗練度を試した。
コンセプトを受け継ぐアバントのハイパフォーマンスモデル
“RS”は、アウディにとって特別なモデルにのみ与えられるコード名だ。1994年、初のRSモデルとなったアウディRS 2 アバントが誕生する。当時の80アバントをベースにポルシェと共同開発されたというスペシャルモデルは、RSモデル=アバント(ステーションワゴン)というイメージを鮮明に打ち出した。そのコンセプトを現代に受け継いでいるのが、RS4アバントだ。
2020年にベースとなるA4シリーズにビッグマイナーチェンジが施されたのだが、それに合わせて、RS4アバントにも改良の手が入った。
まずエクステリアでは、フロントまわりが大きく変わった。ブラックアウトされたグリルの上端には、3分割のスリットが備わった。これは、1980年代のラリーマシン・スポーツクワトロへのオマージュだ。ヘッドライトやバンパー、エアインレットの形状変更をはじめ、専用デザインのサイドシルを装着し、リアライトも新デザインとなった。またルーフレールやリアディフューザーはグロスブラックとなる。全幅はベースとなるA4アバント比で+20mmの1865mmだが、メリハリのある造形によってまったく別物の様相だ。
インテリアはA4シリーズのモデルチェンジにあわせて10.1インチタッチパネルモニターを採用した最新のインフォテインメントシステムを採用する。これによりセンターコンソールにあったダイアル式コントローラーが省かれた。ステアリングはRS専用のフラットボトム形状で表皮にはアルカンターラ素材を用いている。
その万能ぶりは洗練度を増し、確実に進化し続ける
エンジンは、アウディが設計を主導し、ポルシェもパナメーラなどで採用する2.9リッターV6ツインターボで、最高出力450ps/最大トルク600Nmとスペックに変更はない。トランスミッションには8速ATを組み合わせている。
クワトロシステムは、最近はアウディもオンデマンド式を採用するようになってきたが、RSモデルのものは、機械式センターディファレンシャルを搭載したフルタイム4WDだ。通常時は前後40:60のトルク配分で、状況に応じてフロントに最大70%、リアにおなじく85%の駆動力が与えられる。これに加えて左右後輪へのトルクを可変配分するリアスポーツディファレンシャルを組み合わせることで、より、スタビリティを高めている。味付けとしてアンダーやオーバーを感じることのない、ニュートラルな操舵感覚だ。
またサスペンションには、「DRC(ダイナミックライドコントロール)付スポーツサスペンションプラス」が標準装備されている。これは右前と左後、左前と右後の対角線上に位置するショックアブソーバーを油圧パイプと各中央バルブを介して連結し、ピッチングとローリングの動きをコントロールするというもの。「オート」、「コンフォート」、「ダイナミック」、「インディビジュアル」の4種類のモードを選択できるアウディドライブセレクトと連動して機能する。
足元には、ブラックの5ダブルスポークデザインの20インチホイールに、タイヤは275/30ZR20のコンチネンタル・スポーツコンタクト6を装着していた。さらにオプションのセラミックブレーキを装着して、バネ下重量の低減が図られており、ドライブモードを「コンフォート」にして走れば、20インチという大径サイズを感じさせず乗り心地よく、ノイズも穏やかで実に快適だった。この新型からフロントサイドにアコースティックガラスを採用していることも静粛性の向上に一役買っているようだ。
ワインディング路で「ダイナミック」モードへと切り替えると、性格が豹変する。オプションのRSスポーツエキゾーストシステムがうなりをあげ、エンジンは鋭く吹け上がり、コーナーの進入で強めにブレーキングすると、ブリッピングを入れて小気味よくシフトダウンする。車両重量は1820kgもあるのだけれど、ステーションワゴンをドライブしていることを忘れてしまうほどの一体感があった。
アウディは、約27年にわたってRSモデルという“最速ワゴン”を営々とつくり続けてきた歴史がある。代を重ねるごとに洗練度は高まっており、そしてこの新型は実用性を損なうことなく、驚異的なダイナミック性能と快適性をバランスさせるそのレベルが、またひとつ確実にあがったといえるものだ。
文・藤野太一 写真・柳田由人 編集・iconic
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