BMW7シリーズをもとに、重要無形文化財保持者(人間国宝)である奥山峰石氏がインテリアを手がけた「PURE METAL EDITION」が登場した。通常モデルとは異なるポイントは?
売り上げ好調の高級車セグメント
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BMW 750Li xDrive Excellenceをベースに、鍛金の重要無形文化財保持者(人間国宝)である奥山峰石氏がインテリアに加飾を施した特別仕様、「Pure Metal Edition」が2台限定で販売される。価格は2650万円で、1月29日より同社のオンライン・ストアで販売を開始する。
奥山氏が手がけた装飾については後で紹介するとして、ビー・エム・ダブリュー株式会社のマーケティング担当の、このように特別な仕様を仕立てた背景の説明が興味深かった。
まず驚いたのは、コロナ禍にあって日本車、輸入車を問わず新車の販売台数が減ったものの、BMW7シリーズが属する高級車セグメントでは売り上げが伸びているという事実だ。2020年1月から11月末までの累計では、対前年比で約3割アップ、しかも年初から右肩上がりの傾向にあるという。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui富裕層はコロナ禍の影響を受けていないこと、高級ブランドのSUVが続々と投入されていること、公共交通機関での移動を避ける人が増えたことなど、要因はいくつかあるけれど、日本における高級車市場は活況といっていい状態なのだ。
このマーケットで差別化を図り、存在感を出すためには、いいモノであるのは当然として、体験や物語を買いたいというニーズに応える必要があるとのことだ。そこで、ドイツのクラフツマンシップを注ぎ込んだ究極の機械であるBMW7シリーズと、奥山氏の匠の技を組み合わせた、ということになる。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui凝ったインテリア・トリム
4枚のドアのトリムには、日本三大桜に数えられる福島県の三春滝桜が描かれた。しかも満開の桜ではなく、葉の落ちた冬のしだれ桜で、これは春を待つ生命の息吹を表現したものだという。一方、後席のセンターコンソールに置かれる純銀のカップには、満開の桜が描かれ、冬から春への季節の移ろいを車内で感じることができる。
そして金属の塊に見えるように、メタル粒子の方向まで揃えたというこだわりのボディカラー「BMW Individual ピュア・メタル・シルバー」が、鍛金をあしらったインテリアをさらに引き立てる。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui奥山氏の鍛金の技法は非常に凝ったもので、まず紙に描いた下絵を赤銅の板に写し、糸鋸で切り出す。一方で、銀の板にも同じ下絵を写し、こちらは切り抜く。切り抜いた部分に赤銅の板から切り出した模様を合わせて、打ち込むのだという。
トリムに描かれた桜の枝をじっくり眺めると、とても金属で表現されたものとは思えない繊細なものだった。たしかにこのインテリアには、たんなる「いいモノ」を超えた物語がある。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui乗る人の心に響く7シリーズ
発表会には奥山峰石氏も出席し、貴重な話を聞くができた。
現在83歳の奥山氏は、40歳のときに職人から作家へと転身している。まず尋ねたのは、職人がつくるものと、作家が手がけるものとの違いだ。
「職人のときには、注文してくださった方が満足するものをつくることを心がけていました。役に立つもの、売れるものをつくる、ということですね。作家になってからは、じぶんが好きなものをつくり、それをみんなが喜び、幸せな気持ちになってくれればいいと考えながら作業をしています」
Hiromitsu Yasui話のなかで、僕がおもしろいと思ったことはいつくかあるけれど、なかでも、奥山さんが故郷の山形を離れて上京したきっかけに、芸能界への憧れがあったということが、とりわけ印象に残った。
「同い年の美空ひばりとか、あとは石原裕次郎も好きでした。ああいう華やかな世界がうらやましいと思ったんでしょうね」
石原裕次郎にはなれなかった奥山さんではあるけれど、作品で人の心を震わせるアーティストになったのだから、夢を実現したと言える。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu YasuiベースになったBMW 750Li xDrive Exellenceも、こんなに滑らかに動くクルマがあるのかと驚かされる快適なモデルで、実用の道具という領域ははるかに超えている。そこに奥山さんが手がけたインテリアがくわわって、乗る人の心を震わせ、幸せにする力がさらに強力になった。
ビー・エム・ダブリュー株式会社は、今後もこうしたコラボレーションに取り組んでいくという。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
捨てるほど金あったって、このデザインでは恥ずかしくて乗れないだろう!