現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 米と伊の一流ブランドがコラボした奇跡のクルマ……かと思ったら大ゴケした「クライスラーTCバイ・マセラティ」

ここから本文です

米と伊の一流ブランドがコラボした奇跡のクルマ……かと思ったら大ゴケした「クライスラーTCバイ・マセラティ」

掲載 9
米と伊の一流ブランドがコラボした奇跡のクルマ……かと思ったら大ゴケした「クライスラーTCバイ・マセラティ」

 この記事をまとめると

■クライスラーはかつてマセラティとコラボしたクルマを手掛けていた

途中までアメリカで作って仕上げはイタリアでまたアメリカに輸送して販売!? 世界一長い生産ラインをもつと言われた「キャデラック・アランテ」って何もの?

■オープン2シーターでソフトトップとデタッチャブルトップの双方を標準装備していた

■セールスは大失敗といえるほど不発に終わった

 アメ車とイタ車がくっついた!?

 フォードで最年少役員となって、ついには社長の座をゲットしたリー・アイアコッカは、ご存じのとおり両親がイタリアからの移民でした。それゆえ、アルゼンチン系イタリア人のアレハンドロ・デ・トマゾとの親交など、イタリアを贔屓するのは当然のことだったでしょう。

 たとえばデ・トマゾにフォードのエンジンを供給したことによって、パンテーラ(全米のフォード・ディーラーで販売されました)や、ロンシャンなどクルマ好きが忘れられないモデルが数多く生み出されたのです。 が、アイアコッカがフォードを追われ、クライスラーのトップについてからのコラボレーションとなるといささか様子は異なります。アメリカ製シャシー&エンジンをイタリアンボディで包むというイケてるアイディアだったのに、どうにも売れなかった悲劇のモデル、それがクライスラーTCバイ・マセラティです。

 1978年、フォードを解雇されたアイアコッカはすぐさまクライスラーからお呼びがかかり、同社の社長にまんまと就任。すると、コンパクトシリーズのKカーや、いまでも人気のミニバンをヒットさせ、周囲は「さすがフォードで辣腕をふるっただけのことがある!」と大絶賛。当然、社内での権勢はとどまるところを知らず、なんでもかんでも思いのままに振る舞っていたそうです。むろん、その間もデ・トマゾとの親交は続いており、1984年には彼が所有していたマセラティの経営危機に援助の手まで差し伸べていました。

 ちょうど、そのころにアイアコッカはクライスラーの顔となるモデル、いわゆるハローカー(Hallo car)の開発を決定。ここにデ・トマゾが「だったらオレにやらせてよ」と手を挙げたのか、クライスラーとマセラティのコラボレーションがスタートしたのです。

 ただし、役員会はハローカーをあくまで「Kシリーズのテコ入れ」モデルとすることを強く求め、アイアコッカ社長はしぶしぶKカーのエンジンやシャシーを使うことを承諾。このとき、デ・トマゾは「なんだったらまたフォードに頼むか」と悪い冗談をとばしたとか。

 Kカーは前述のとおり、モーターパーク(同社のディーラー、略してモパー。アメリカではひところクライスラーはモパーと呼ばれていたそうです)のヒット商品、つまり大衆向けの廉価モデルというポジション。ゆえに、エンジンだって2リッターくらいの省エネ型ですから、デ・トマゾがせせら笑うのも仕方ありません。

 それでも、このエンジンにターボを装備した「ターボII」を搭載し、なんとか面目を保つことに。シャシーはこれまたダッジ・デイトナというマイナーモデルから拝借し、Kシリーズっぽく全長を切り詰めるというパッケージング。

 そして、ボディはマセラティがプロデュースしたオープン2シーターで、ソフトトップとデタッチャブルトップの双方を標準装備というメルセデスベンツSLを意識したつくり。それでも、当時のマセラティ・ビトルボシリーズに一脈通じるエッジの効いたデザインで、いまとなってはエモいと表現できるスタイルかと。

 1986年、ロサンゼルスショーでクライスラーTC(ターボ・コンバーチブルの略)バイ・マセラティはついに発表され、居合わせたアイアコッカとデ・トマゾの仲良さげな写真が撮られています。

 が、発売はイタリアンジョブの例にもれず2年待ち(笑)。ようやく1988年に路上を走り始めたのですが、やっぱりタイミングは悪くて、前年の1987年にGMのキャデラック・アランテ(こちらもアメリカ製エンジン&シャシーをピニンファリーナの工場で生産し、アメリカに空輸するという荒業)が登場しちゃってたんですね。

 あの手この手でテコ入れするも大失敗

 また、3万3000ドルという値段も販売の足を引っ張った模様で、似たようなコンセプトのクライスラー・ルバロンのほぼ2倍となると、モパーファンといえども躊躇するのは無理もないところ。

 で、アイアコッカはKカーのテコ入れだったはずのクライスラーTCバイ・マセラティをさらにテコ入れしなければならない羽目に。500台限定でヘッドカバーにマセラティの文字が鋳込まれたエンジンを搭載したモデルを作ったのですが、ピストンはマーレ、クランクシャフトはカリフォルニアのクレーン、タービンはIHIというオールスター! しかもバルブヘッドをコスワースが16バルブへとカスタムという、いかにもデ・トマゾ好みなチューニングが施されていました。

 が、それでも2.2リッターターボのパンチ力はアメリカ人には効き目が薄かった。ついにアイアコッカが当時の提携先だった三菱から3リッターのV6エンジンを仕入れたものの、起死回生に至ることなく生産中止の憂き目となりました。

 当初、月販5000~1万台を目論んでいたのですが、蓋を開けてみれば総生産台数7800台(1989~1991)という目も当てられない売上げ。フォンドメタル製オリジナルメッシュホイールを履かせたり、ネプチューンの鉾をクライスラーの五角形マークのなかに入れたり、あるいはヨーロッパメイドらしい艶感のクロームとか、決して出来栄えは悪くないのに!

 おそらくは、逆パターンのほうが良かったのかもしれませんね。つまり、クライスラーのエンジンでなく、マセラティのカリカリチューンをルバロンみたいな大人っぽいボディにぶち込むってアイディア。

 切れ者のアイアコッカやデ・トマゾの悪知恵をもってしても、クライスラーTCバイ・マセラティはどうにもパッとしなかったとは、なんとも切ないお話です。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

スズキの“400cc“に注目集まる! 「EURO5+適合エンジン」搭載! 電子制御フル装備の新型「DR-Z4S/SM」EICMA2024で実車展示
スズキの“400cc“に注目集まる! 「EURO5+適合エンジン」搭載! 電子制御フル装備の新型「DR-Z4S/SM」EICMA2024で実車展示
くるまのニュース
アウディ、北海道で氷上ドライビング体験イベント開催へ…2025年1月
アウディ、北海道で氷上ドライビング体験イベント開催へ…2025年1月
レスポンス
アストンマーティン、F1サンパウロ苦戦の原因はフロアの交換? ”普通じゃない”バウンドはチグハグなセットアップ影響か
アストンマーティン、F1サンパウロ苦戦の原因はフロアの交換? ”普通じゃない”バウンドはチグハグなセットアップ影響か
motorsport.com 日本版
いつもやってるけど……はたまたま運がよかっただけ! 大きな事故に繋がりかねないクルマのちょっとした危険行為
いつもやってるけど……はたまたま運がよかっただけ! 大きな事故に繋がりかねないクルマのちょっとした危険行為
WEB CARTOP
三井住友海上、顧客連絡先が不明の保険代理店 新たに38社確認 計95社に
三井住友海上、顧客連絡先が不明の保険代理店 新たに38社確認 計95社に
日刊自動車新聞
弱い人には恐怖の「車酔い」は運転でカバーできる! 誰でも実践可能な同乗者に辛い思いをさせないテクニックとは
弱い人には恐怖の「車酔い」は運転でカバーできる! 誰でも実践可能な同乗者に辛い思いをさせないテクニックとは
WEB CARTOP
首位坪井か、2位牧野か。SF最終大会鈴鹿を前に思い出す2015年FIA-F4最終戦。長い因縁をもつふたり
首位坪井か、2位牧野か。SF最終大会鈴鹿を前に思い出す2015年FIA-F4最終戦。長い因縁をもつふたり
AUTOSPORT web
鈴鹿を疾走する謎のフォーミュラの中身はシビックタイプRのエンジン!? HRCがK20Cをベースにした新しいレース用エンジンを開発していた
鈴鹿を疾走する謎のフォーミュラの中身はシビックタイプRのエンジン!? HRCがK20Cをベースにした新しいレース用エンジンを開発していた
WEB CARTOP
ホンダ新型「“最上級”7人乗りSUV」発表に反響多数!? 「音響やべえ」「すごすぎ」顔面進化&「スピーカー31台」搭載も!? 全幅2mの「MDX」メキシコに登場
ホンダ新型「“最上級”7人乗りSUV」発表に反響多数!? 「音響やべえ」「すごすぎ」顔面進化&「スピーカー31台」搭載も!? 全幅2mの「MDX」メキシコに登場
くるまのニュース
重量わずか4kgのフレームに軽量な新開発V2エンジン搭載 ドゥカティ「パニガーレV2」新型モデル発表【EICMA2024】
重量わずか4kgのフレームに軽量な新開発V2エンジン搭載 ドゥカティ「パニガーレV2」新型モデル発表【EICMA2024】
バイクのニュース
ホンダN-VAN e 新価値もプラスした商用EV 使い方次第で楽しさが広がる 【試乗記】
ホンダN-VAN e 新価値もプラスした商用EV 使い方次第で楽しさが広がる 【試乗記】
Auto Prove
【試乗】シビックの「e:HEV」と「RS」でアクセスのリヤウイングを試した! 「こんなに変わるの?」な結果に狐に摘ままれたような気分!!
【試乗】シビックの「e:HEV」と「RS」でアクセスのリヤウイングを試した! 「こんなに変わるの?」な結果に狐に摘ままれたような気分!!
WEB CARTOP
ホンダ「リード125」がLEDトランクライトなどで使い勝手向上!3色追加でカラーリング変更!  
ホンダ「リード125」がLEDトランクライトなどで使い勝手向上!3色追加でカラーリング変更!  
モーサイ
テクノロジーは、亡き人を再現できるのか? 人間の存在を揺るがすヒューマンミステリー『本心』
テクノロジーは、亡き人を再現できるのか? 人間の存在を揺るがすヒューマンミステリー『本心』
バイクのニュース
レーシングチームがAI自律運転”A2RL”に挑むアドバンテージ。TGM池田代表「我々なら、レーシングカーの”速度”をイメージできる」
レーシングチームがAI自律運転”A2RL”に挑むアドバンテージ。TGM池田代表「我々なら、レーシングカーの”速度”をイメージできる」
motorsport.com 日本版
ホンダの原付二種スクーター『リード125』、デザイン刷新し2025年1月発売へ…34万1000円から
ホンダの原付二種スクーター『リード125』、デザイン刷新し2025年1月発売へ…34万1000円から
レスポンス
BYDがまさかの300万円切りドルフィンを日本で発売! 日産サクラに迫る安さで買える普通車EVの誕生でどうなる?
BYDがまさかの300万円切りドルフィンを日本で発売! 日産サクラに迫る安さで買える普通車EVの誕生でどうなる?
THE EV TIMES
『ランクル250』がサイバーな出立ちに!? モデリスタのコンセプト、反響次第で製品化も…SEMAショー2024
『ランクル250』がサイバーな出立ちに!? モデリスタのコンセプト、反響次第で製品化も…SEMAショー2024
レスポンス

みんなのコメント

9件
  • sae********
    クライスラー・TC以外にも
    キャデラック・アランテもありましね。世界一長い製造ラインと言われていた。
    こちらも商業的には大失敗しました。
  • PD4204
    古き悪しき米車の一例。
    少し前の、ニューヨーカーやインペリアルフランクシナトラバージョンとか酷いものでした。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1215.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
アランテの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1215.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村