■さらなる熟成と信頼性の向上が図られた「エボVI」
ひとクラス大きい「ギャランVR-4」の心臓部と、コンパクトな「ランサー」のボディを組み合わせて誕生した「ランサーエボリューション」。すべてはWRC(世界ラリー選手権)で活躍するためというピュアスポーツ4WDセダンです。
【画像】ランエボVIとトミー・マキネン・エディションを画像で見る(21枚)
1992年の初代から2016年の10代目まで生産されましたが、その魅力が再認識されて人気が再熱しています。第2世代へと進化した「エボ」シリーズの完成形ともいえる、「ランサーエボリューションVI」について紹介します。
1995年にベースとなるランサーがフルモデルチェンジしたため、第2世代へと進化したランエボ。1996年の「エボIV」、1998年の「エボV」に続き、1999年にさらに各部が熟成された「エボVI」が誕生しました。第2世代の集大成ともいえるモンスターです。
先代にあたるエボVが、オーバーフェンダー装着などで3ナンバーとなるワイドボディへと発展。これはWRCによる新規定を受けてのものでしたが、これによりコーナリング性能のさらなる向上と、強力な制動力を誇るブレーキの装着が可能となりました。
そしてエボVIは、トレッドの拡大によるワイドボディでのアドバンテージをさらに活かす改良が施され、さらに戦闘力と信頼性の向上が図られています。
ボディサイズは全長4350mm×全幅1770mm×全高1415mm(GSR)とエボVとまったく同じですが、WRCのレギュレーション変更(空力パーツのサイズ制限)に対応させながら、空力性能とおもに冷却性能の向上による信頼性のアップを図る改良がおこなわれています。
外観的には、フロントリフトアップ抑制のためにナンバープレート位置変更、フロントバンパーにオイルクーラーベンチレーターやエアブローダクトの増設、フォグランプの小型化、ウィッカ型迎角可変ツインリアスポイラーの採用などがおもな変更点です。
もちろんメカニズムにも手が加えられており、4G63型2リッターターボエンジンには、エンジンオイルクーラーを大型化させ、吸気入口の径を拡大することで高回転域での効率をアップさせた改良が施されています。ちなみにミッションは5速MTのみとなっています。
足まわりは基本的にエボVを踏襲し、フロントには倒立タイプのストラットを、リアにはマルチリンク式を採用。225/45R17のタイヤサイズも同じですが、エボVI用に新デザインのOZ製ホイールを装着しています。
このエボVIもほかのランエボ同様、競技向けの「RS」と公道用の「GSR」のグレードが用意されましたが、一般道では硬すぎるといわれたサスペンションに手を加えて乗り心地をアップさせた「GSR」に対し、「RS」のセッティングは硬派なエボVと同じで、さらに世界初となるチタンアルミ合金製タービンホイールを採用。ターボエンジンの高回転域での性能を向上させるなど、グレードによるキャラクター分けがおこなわれています。
WRCでは、1999年の第1戦から2001年の第10戦まで全38戦に投入されましたが、1999年度は5勝を記録し、エースドライバーのトミー・マキネン選手が4年連続でドライバーズチャンピオンに輝く偉業を達成しています。
■性能を特化させた「エボ6.5」的な記念モデルも登場
このトミー・マキネン選手が記録した4年連続ドライバーズチャンピオンを獲得して気を良くした三菱は「トミー・マキネン エディション」という、さらなるスペシャルな限定車も登場させました。
もともとホモロゲーション取得のためのスペシャルなマシンがランエボですが、このトミー・マキネン エディションは、ありがちな記念モデルではなく、内容的にはマイナーチェンジに近いほど手が加えられ、「エボ6.5」といった内容でした。
WRCをほうふつとさせる専用カラーリングと専用インテリアだけでなく、ターマック(舗装路)での走行を念頭にエンジンとハンドリングを新たに専用チューニング。車高を10mmダウンさせ、フロントストラットバーの装着やステアリングのクイック化などが施され、さらに空力性能を向上させた専用フロントバンパーを装着する本気ぶりです。
結果としてこのエボVIは、通常版のRSとGSRで7594台、トミー・マキネン エディションで2705台の販売台数を記録。商業的にも成功しています。
現在の中古車市場では、やはり20年前後も経つモデルだけあって流通量は少なめですが、探せば120万円から購入可能です。ただ車両状態が良好なものは200万円オーバーのタマもあり、すでにプレミア価格がつき始めています。
なかでも「トミー・マキネン エディション」は、すでにプレミア価格状態。300万円前後で流通しており、当時の新車価格327万8000円(GSR)に迫る勢いです。
またエボVIは、三菱がワークスとしてWRC参戦した最後のモデルであることも、さらなるプレミア価値を高めている要因のひとつ。純粋に乗っても良し、綺麗にレストアしてコレクター気分を味わっても良しと、もっとも価値のある「ランエボ」といえるでしょう。
※ ※ ※
第2世代の「ランエボ」の完成形であり、ミツビシ・ワークス最後のチャンピオンズカーというプレミアがついたエボVIは、今でも憧れている人が多いのではないでしょうか。
とくに海外ではプレミアムモデルとして価値が高いようで、なかには日本円で700万円近い値段をつける個体もあるのだとか。考えてみれば、日本でランチア「デルタインテグラーレ」やフォード「コスワース」などが高額で取引されるのと同じように、世界的に認められた名車である証拠でもあります。
とくに「トミー・マキネン エディション」は当時筆者も憧れた1台。さすがにがむしゃらに飛ばせるトシではないのですが、いまだに憧れるカッコ良さがあります。「いつかはランエボに乗りたい」とお考えのドライバーには、「今でしょ」と勧めたくなるモンスターマシンです。
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