9月15日、WEC世界耐久選手権第7戦の決勝レースがトヨタの“ホーム”である富士スピードウェイで行われた。過去「10戦9勝」を誇り同地での通算10勝目を目指して母国ラウンドに臨んだTOYOTA GAZOO Racing(TGR)は、アクシデントが多発する6時間のレースで7号車、8号車の両トヨタGR010ハイブリッドが上位争いを展開。しかし、セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組の8号車は、表彰台を目前にしてドライバースルー・ペナルティを受け総合10位でのフィニッシュに。
また、マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ニック・デ・フリース組の姉妹車7号車トヨタは接触でダメージを負い、痛恨のリタイアに終わった。この結果、最終戦バーレーンでの小林とデ・フリースの逆転チャンピオンは厳しいものとなっている。
トヨタを「コーナーに追い詰め」リスクを負わせたポルシェ。ロッテラー組が富士を制し王座奪還に視界良好
全8戦で競われている今季2024年シーズンのWEC。終盤第7戦の舞台は、日本の富士スピードウェイだ。晴天に恵まれた『富士6時間耐久レース』の決勝は定刻11時に開始された。このスタートでTGRの2台はブエミ駆る8号車が2番手から4番手に、姉妹車の7号車を駆るコンウェイも4番手から5番手へと順位を落としてしまう。
その後、7号車と8号車が順位を入れ替えるも、7号車はタイヤの摩耗に苦しみ予定よりも早めにピットインし、デ・フリースへとドライバーチェンジ。まもなく8号車もピットインし、ハートレーへとバトンを繋いでいく。
レースの前半で苦戦を強いられたトヨタ勢だったが、折り返しを過ぎる頃にはチームの給油とタイヤ戦略が功を奏し始める。デ・フリースが乗り込んだ7号車は15号車BMW MハイブリッドV8と50号車フェラーリ499Pをコース上で攻略。さらにピットで6号車ポルシェ963をかわしてトップに立った。また、僚友の8号車も着実に順位を上げていき、ハートレーが2台のフェラーリをパスし、平川へと表彰台争いを託す展開に持っていった。
7号車ではデ・フリースから可夢偉に交代した4時間目、TGRの2台は攻めの戦略でタイヤ、燃料ともにライバルよりも有利な状況で終盤戦へ入っていく。しかし、ここでバーチャルセーフティカー(VSC)が導入されたことで、ほかのすべてのハイパーカーがピットインするチャンスを得ることとなり、トヨタの思惑が外れる。
続いて出されたセーフティカー(SC)で各車のギャップはリセットされ、残り1時間半でスプリントレースの様相となった。8号車の平川は3番手で再スタートを切ったが35号車アルピーヌA424にかわされてしまう。また、一時はレースをリードしながら8番手まで順位を落とすこととなった可夢偉の7号車はバトルのなか、コカ・コーラ・コーナーで5号車ポルシェ963と接触。リヤサスペンションと車体に修復不可能と判断されるダメージを負い無念のリタイアとなった。
残された8号車は、平川がハーツ・チーム・JOTAの2台をパスし、35号車アルピーヌがペナルティを受けたことで3番手に返り咲き表彰台を獲得するかに思われた。しかし平川が最後のピットアウト直後に、首位を走る6号車ポルシェ963に進路を譲らなかったことが「青旗無視」と判断されドライブスルー・ペナルティを受けることに。これにより8号車は首位から58.879秒遅れの10番手まで順位を落としてレースを終えることとなった。
ホームの富士で2015年以来の2敗目を喫したTGR。この結果、ドライバー選手権での逆転戴冠は困難なものとなったが、マニュファクチャラー選手権ではランキング2位に下がるも首位ポルシェとの差はわずか10ポイントで、自力でのチャンピオン獲得も可能。チームはタイトル防衛に向け、11月2日(土)に行われるシーズン最終戦バーレーンへと意識を切り替える。
■「避けられませんでした」「3位表彰台なら納得のいく結果だった」/TGR WECチーム 決勝後ドライバーコメント
●小林可夢偉(チーム代表兼7号車ドライバー)
「とても難しいレースでした。2度目のセーフティカー導入が我々には運の尽きでした。再スタート後、私はポルシェ5号車とのバトルを数周にわたって繰り広げましたが、ストレートでの速度差は明らかでした。そのため、ライバルは最初の3つのコーナーでオーバーテイクを試みました。第3コーナーで私はイン側にいて、ポルシェ5号車も同時にコーナーに進入したため、接触は避けられませんでした」
「残念なことにその時、他の箇所も接触してしまい、レース中に修復するにはダメージが大きすぎました。今日は我々の日ではありませんでした。応援してくれたファンの皆さまに申し訳なく思います。最終戦のバーレーンではもっと強くなって戻って来たいと思います」
●マイク・コンウェイ(7号車ドライバー)
「2台ともに大変な一日だった。残念ながら我々の7号車は接触を喫し、修復不能なダメージを負ってしまい完走することができなかった。これによりポイントを得られなかったのはドライバーズチャンピオン争いにおいて、もちろんマニュファクチャラーズチャンピオン争いにおいても痛い結果だ」
「応援してくれたホームのファンの皆さまとすべてのパートナー、そしてトヨタ従業員の方々のためにも望んでいた結果ではなく、本当に悔しいレースとなってしまった。しかしまだシーズンは終わっていないし、最終戦は長い戦いで獲得ポイントも大きいので、全力で挑んで雪辱を果たしたいと思う」
●ニック・デ・フリース(7号車ドライバー)
「チーム全員にとって受け入れがたい結果となってしまった。レースウイークを通して苦戦を強いられた。我々のレースペースは上位を争うには充分でないなかで、ドライバーズとマニュファクチャラーズの両選手権のためにも、可能な限りのポイントを獲得することを目指すだけだった」
「我々の戦略はとても良かったと思うが、不運なレース状況で、狙ったとおりにはいかなかった。本当に残念だ」
●セバスチャン・ブエミ(8号車ドライバー)
「我々にとってはちょっとした災難のようなレースだった。ライバルよりも速さでは劣るなかで、まずまずのスタートを切ることができた。他の車両は我々よりも加速が良く、TGRコーナー(1コーナー)への進入でポジションを上げるのは不可能だった」
「そこから順位を上げていくことはできたが、不運なタイミングでセーフティカーが導入されてしまった。最後のドライブスルーペナルティがなければ表彰台フィニッシュができていたはずで、それなら納得のいく結果だったと思う。すべてを洗い直し、バーレーンでは力強くなって戻って来るよ」
●ブレンドン・ハートレー(8号車ドライバー)
「我々はかなりクリーンなレースを戦った。セブ(セバスチャン・ブエミ)はタイヤを大事に持たせて走るという素晴らしい働きで、我々は戦略で順位を上げるチャンスを得ることができた。ペースではライバルに及ばなかったが、ベストを尽くした。全力で戦ってくれたチームに本当に感謝している」
「我々にとって重要なレースだったが、さまざまな要因で残念な結果に終わってしまった。しかし気を落とすことなく、マニュファクチャラーズ選手権を決める次戦バーレーンでの巻き返しを図るよ。今週我々をサポートしてくれたトヨタ関係者、パートナー、そしてファンの皆さま全員に心から感謝したい」
●平川亮(8号車ドライバー)
「本当に残念な一日だったのは確かです。ファンの皆さまやパートナーの皆さまの前で良いレースをしたかったのですが、そうはなりませんでした。あらゆることを試し、一時は期待の持てる展開となりましたが、最後は望みどおりにはいきませんでした」
「シーズンは残り1戦となりましたが、なんとしてもチャンピオンを獲得し、良いかたちでシーズンを締め括れるよう頑張ります。今週ずっとハードワークで支えてくれたチームのみんなに感謝します。また、パートナーの皆さま、ファンの皆さま、応援ありがとうございました」
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みんなのコメント
ポイント持って帰るだけでも最終戦が楽になったかもしれないのに。