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「もったいない」という想いだけで温存したクルマは、さらにもったいない状態になるという事実

掲載 更新 68
「もったいない」という想いだけで温存したクルマは、さらにもったいない状態になるという事実

最近でレッカーや引き取り目的でトラックに乗る機会が多かった筆者。その結果、愛車のルノー・ラグナにはまったく乗れていませんでした。いつしか車検が切れ、さらにナンバーが盗難に遭い(!)、車両置き場に佇んでいるだけの「クルマに乗りたくても乗れない状態」となっていたのです。

こうしたクルマを動かすのはなかなか骨の折れる作業ですが、先日、久しぶりにエンジンをかけてみました。もともと割とコンディションの良かったクルマなのに、なかなか苦労しました。今回はそのとき感じたことをまとめてみたいと思います。

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■急に言われると実に困る「駐車場の退去勧告」

実は今回、どうしてもエンジンをかけなければならない事情がありました。それは「車両置き場の引っ越し」をする必要に迫られたからなのです。

私がここ数年、自分のクルマや、仕事がらみで一時的に預かっている車両を駐車する目的で借りていた土地でした。市街化調整区域で家屋の建築等ができず、さらに駅から遠いので、一般的にはさほど条件のよくない土地かもしれません。しかし、不便だからと言っても、駅からバスが走っており、そのルートの終点から歩いてすぐだったこと、高速道路の入口までの距離が近くて便利だったことなど、個人的にはなかなか重宝していました。

そんな土地を、大家さんが売却することにしたようで、退去してほしいと連絡を受けたのが昨年末のこと。代わりにの土地探しもあるので、少し猶予を見てもらって、この二月末に退去ということになっていたのでした。

よく一箇所に居座ってしまうことを「根が生える」と例えたりしますが、クルマも置いたままにするとまさに「根が生えたような状態」になってしまうものです。さらに車検が切れてしまうとと、公道を走らせることもできません。短時間だけエンジンをかけたとしても、走らなければバッテリーがすぐに上がってしまいます。おかげで車両置き場は、不動車や簡単にはエンジンのかからないクルマだらけとなり、さらに植物の蔦が絡まって「根が生えたような状態」になってしまっていたのです。

こうなると、いざ退去を余儀なくされたりしたとき、その知らせが単純に想定外である以上に、車両を移動させるだけでも難儀するので実に困りものです。ルノーはまだしも、どうしようもないクルマは解体業者さんを呼んで仕方なく廃車にしたりしました。そんなことで、とても忙しい二月末だったのです。

■「もったいない」と思う気持ちがもったいないクルマを産む

私のルノー・ラグナ。まだ3万キロ台だった個体が廃車になる「ギリギリのところで拾ってきたクルマ」でした。どういうわけか、私の所有した輸入車はすべて左ハンドルだったのですが、ラグナも右ハンドル設定もある中で珍しい左ハンドル車だったのです。

走行距離が少なく、さらに「川崎33」という二桁の分類番号が引き継げることも重なって引き取ることにしました。同時代のクルマでは、シトロエン・エグザンティアの方が好みではありました。しかし乗った人は口を揃えて絶賛するこのラグナに興味はあったものの、たまに売り物が出ても納得できる価格の個体は少ないだけでなく、そもそも売り物がほとんどないクルマでした。

引き取って車検を取り、二年ほどは足として使用していました。大阪や長野などもこのクルマで出かけ、まったく疲れず、反応の良いステアリングも好印象でした。カタログ上はさほどパワフルではなく、むしろ大丈夫かなあと思うほどでしたが、速度が乗ると高速巡航が心地良いのです。噂に違わずとても良いクルマでした。指標とされることが多いW124型メルセデス・ベンツと比べても引けを取らない「実用車原器」のような説得力を持ったクルマだったと思います。

ですので、車検が切れそうになった時点でも廃車にせず、車両置き場で待機させることにしたのです。

しかしこのクルマ、色褪せがひどい。前オーナーさんの時代は日の当たる部分と日陰との差が大きい駐車場だったのか、はたまた部分的にリペイントしたのか、車体の前半がカサカサの色あせ状態で、後ろは光沢が残った状態になっていました。

「落ち着いたら車検を取って、リペイントもしたい」

そう思って温存してきたクルマでした。しかし、青空駐車だと保管場所の環境としてシビアな上、バッテリーも上がり、エンジンがかけにくくなります。このような状態になるにつれて、エンジンをかける回数が減ります。そうして次第にクルマが朽ちていくのです。

携帯型ジャンプアダプターにかかれば大きなクルマも一発でエンジンかかるのですが、バッテリーが空になってから数ヶ月経って、さらに空っぽの状態ではどうしようもない様子。最近まで使っていた国産車とケーブルで繋ぎ、しばらく置いておいてからかろうじてエンジンがかかる状態でした(ちなみにエンジン始動後は怪しげな片言の英語で音声アラートが発せられ、ブレーキが固着しているのか「異常なのですぐにクルマを停めて工場に持っていけ」みたいなことをクルマが色々喚いていました)。

結局「もったいないから取っておこう」と思うことそのものが、クルマを「もったいない状態にする元凶」なのです。今回、車両置き場の引越しに関連してエンジンをかけたラグナを前に込み上げてきた反省点でした。

ちなみに、ラグナ以外の廃車を頼んだクルマたちにしても同様です。クレーンで積み上げられて解体されるとなると、一瞬は心が痛むというか、クルマとしての一生を終えるのだなあ、などと感傷的になってしまったりするものです。しかし、よく考えてみると、その原因を作ったのは自分ですし、スクラップになるというより、使えるものはパーツとして活用されたりもするわけです。どうせこうなるなら、もっと早い時期にその手続きを進めておけばよかったのかもしれません。結局、何もせずに草むらに置いておくだけというのは、解体するよりもよくないことだなあ、と感じたのが率直なところでした。断捨離ではありませんが、思い切って片付けをすることでいろいろな「気づき」があるものです。

■維持するだけで「スタミナと胆力が必要」な自動車コレクション

そう考えると、改めて感心させられるのは、コレクターの皆様の「自動車平和維持活動」です。私など、こんな実用車の一台ですら深草の具と化していたのに、周囲ではお一人で10台以上もお持ちの方もいらっしゃいます。果たして、そういう方はどうしておられるのでしょうか。

このクルマは部品がない、といった悩みの前に、維持していく上で必要なのは「スタミナと胆力」だと思うのです。これはクルマ好きの仲間で言われることなのですが、2台所有までは普通に回るものの、3台を超えてくると、その管理が大変になってくるようです。定期的にエンジンを始動させ、暖気して、あるいは近所をぐるっと回る。この程度のこともままならなくなってくるのですから。

やはり理想的としては常にバッテリーをフル充電状態にしておき、自然放電しないようにキルスイッチなどで端子が外れるようにする。できれば屋内保管。そして何より、いつでもクルマと生活をともにする。クルマと向き合うことが億劫にならないような環境を整えることも大切なのかもしれません。やっとエンジンのかかったルノー・ラグナを前に感じた反省は、やがて熱心なカーガイの皆さんへの敬意へと変わっていくのでした。

■とはいえ、今年こそはリフレッシュプロジェクトをスタートさせていきたいもの

3月に入り、新しい車両置き場を紹介してもらうことができました。ラグナもそちらに引っ越しをして保管しています。スペース的にはこれまでより少し狭くなりますが、クルマを維持管理できる器と同じで、多めにあれば良いだろうと思っても結局草むらに埋もれてしまうので、これくらいがちょうどいい、あるいは少し小さいかな…くらいの方が良いのかもと思っています。

心機一転、今年こそはラグナをリフレッシュさせたいものです。今回の一連のできごとを経験して、前向きな気持ちが強くなりました。今後二年間安心して乗れるように整備して、車検を受ける(フロントのナンバープレートの再発行もしてもらう)、外装をリペイントする、内装のウッドパネルもリペアしたい。さらに、エアコンのコンプレッサーが動いたり動いていなかったりのようなので、これも直したい…などと、あれこれ目論むといったいお金がいくらかかるのか、心配になってきます。このあたり、部品も心配です。そもそも時間はどのくらいかかるのでしょうか。

しかし、あるものはしかるべく動くようにする。そしてできるだけ快適に乗れるようにする。単純に元に戻すというだけではなく、常にクルマと一緒にいたくなるようにコンディションを整えておくことは大事なのかもしれません。いざ乗ろうとしたときに、エンジンがかからない。不具合が多く快適ではない。こうしたことが、クルマを動かすモチベーションを低下させ、クルマが草むらで根を生やす原因となるのでしょうから。

自戒をこめて書き留めておきたいと思いますが「"もったいない"という想いだけで温存したクルマは、さらにもったいない状態になる」になるだけ。日々、少しずつ乗ってあげられるクルマしておくこと。これこそとても大切なことだなあと感じます。乗れるクルマだけを迎え入れ、乗れなくなりそうなときは手放す。こうしたことも大切なことなのだろうと、今回のできごとで学んだのでした。

今回、久しぶりにカサカサになったラグナのエンジンをかけてみて、クルマへの思いも新たにしました。ラグナのエンジンがかかったとき、意欲的で清々しい気持ちになって、なんだか2021年の春の訪れを感じることができたように思います。

[ライター・カメラ/中込健太郎]

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