自動車ガラスの黒縁設計
自動車のフロントガラスや窓ガラスをよく観察すると、黒い縁取りが施されているのが分かる。この部分は「黒セラミック」、通称「黒セラ」と呼ばれる重要な機能部品である。ガラスに貼り付けるシールやフィルムではなく、製造工程でおよそ560~800度の高温で焼き付けられるため、経年劣化で剥がれることはほとんどない。
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黒セラの最も重要な役割は、接着剤の紫外線保護である。車体にフロントガラスを取り付ける際、専用の接着剤でガラスの内側を固定する。この接着剤は長期間の紫外線や直射日光にさらされると劣化しやすい。黒セラはガラスと車体の接着部分を覆うことで、紫外線から守り、接着剤の寿命を延ばす役割を果たしている。
さらに黒セラは、接着部分を外から見えなくすることでデザイン性を高める効果もある。車種によっては、黒セラのドットの大きさを徐々に変えるなど、見た目の美しさに配慮した工夫も施されている。
黒セラは窒化物、炭化物、酸化物、ホウ化物などの無機質を加熱して固めたセラミックスである。耐熱性、耐食性、耐摩耗性、電気絶縁性など、多様な特性を備えている。
本稿では、あまり知られていない自動車ガラスの黒い縁取りの役割と、電気自動車(EV)化が進むなかで進化する自動車ガラス技術の最新動向を解説する。
黒セラ技術の差別化
日本の自動車用ガラス市場は2024年に1136百万米ドル(約1700億円)の規模に達した。IMARCグループの調査によると、2025年から2033年にかけて年平均成長率6%で拡大し、2033年には1920百万米ドル(約2900億円)に達すると予測されている。
世界市場でも自動車用ガラスの需要は増加傾向にある。Fortune Business Insightsによれば、2024年の198億600万ドルから2032年には425億9000万ドルに達し、年平均成長率(CAGR)10%で成長する見込みだ。
この成長をけん引するのは、乗用車や商用車の保有台数増加、先進運転支援システム(ADAS)の搭載、安全性や技術革新への関心の高まりである。
市場における差別化要因のひとつが黒セラ技術だ。従来は黒セラの製造に2回の焼成が必要でコストがかかっていた。しかし近年は製造技術が改良され、一度の工程で高品質の黒セラを形成できるようになった。焼成回数の削減はコスト低減だけでなく、生産効率の向上にもつながり、各社の競争力強化に寄与している。
また、日本企業のAGCは自動車用ガラス市場で圧倒的な存在感を示している。世界でもトップクラスのシェアを誇り、世界中で走る自動車の3台に1台にAGCのガラスが使用されている。この事実は同社の技術力の高さを裏付けるものである。
セラミック素材の耐久性
フロントガラスのルームミラー付近には、黒い点々が配される車種が多い。この黒いドットは「センターバイザー」と呼ばれ、ルームミラーに視線を移した際に隙間から入る太陽光の眩しさを防ぐ役割を果たしている。
センターバイザーの黒い部分も、ガラス縁の黒セラと同様にセラミック素材でできており、フロントガラスに焼き付けて一体化されている。そのため経年による剥離はほとんどなく、車両寿命にわたって機能を維持する。
近年は焼成工程の一体化や材料技術の向上により、高品質な黒セラミック層の形成と生産効率の向上が進んでいる。また、黒セラの意匠性を高めるため、ドットの大きさを徐々に変化させたグラデーションなど、デザイン面での工夫も取り入れられている。
この結果、センターバイザーは機能性と美観を両立させる要素となった。単なる日差し対策にとどまらず、車両のデザイン向上にも寄与する重要な部品である。
パノラマルーフ市場の拡大
自動車業界では電動化が急速に進み、EVの普及とともに自動車ガラスの役割も変化しつつある。パノラマルーフや大型ウィンドウの増加により、従来の黒セラミック縁取りのデザインや機能も進化する可能性が高い。
IHS Markitによると、パノラマルーフ市場は2020年から2025年にかけてCAGR5.2%で拡大する見込みだ。特にEVとの親和性が高く、遮熱・断熱性能に優れた「Low-Eコートガラス」の採用が進むことから、今後さらに普及が進むと予想されている。
また、透明・半透明の高機能境界デザインや調光技術、AR表示の採用も広がりつつある。2025年1月にはBMWがフロントガラス全体にARヘッドアップディスプレイを搭載した新型「iDriveシステム」を発表しており、将来的にはフロントガラスを広いディスプレイとして活用し、車載情報やエンターテインメントを楽しむ時代が到来する可能性がある。
こうした技術革新により、「黒縁取りは絶対必要」という従来の固定観念に縛られない多様なスタイル・機能モデルへの変化も見込まれている。自動車ガラスは視界確保の機能に加え、快適性、エネルギー効率、情報表示などを統合した多機能部品として進化を続けている。(木村義孝(フリーライター))
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