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ボルボ V60 B4モメンタムとBMW 318iツーリングに見る、ベーシックグレードの合理性

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ボルボ V60 B4モメンタムとBMW 318iツーリングに見る、ベーシックグレードの合理性

ブランドの主力が集うDセグメントには魅力的なモデルが多い。ここでは、そうした中でもっともベーシックなV60と318iツーリングに注目した。果たしてこの2台は、積極的に選びたくなる実力を備えているのだろうか。

ベーシックグレードの選択は合理的かもしれない
ここでは欧州Dセグメントワゴンのベーシックグレード2台を紹介するが、意外なことにどちらも一番人気モデルというわけではないらしい。ちなみにV60におけるモメンタム比率はおよそ24%。3シリーズツーリングにいたっては318iが占める割合はわずか5%ほどという。

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「じゃあ、自分はもっと高級なグレードを買おう」と思うか、「だったら街中であまり見かけないベーシックグレードのほうが自分の好み」と受け止めるかは、ちょっと大げさにいえば生き方の問題かもしれないが、そこまで話を広げずとも、合理的な理由からベーシックグレードを選択するケースだって決して少なくないと思う。

シート素材は、その最たる例かもしれない。今回はたまたま2台ともオプションのレザーシートが装備されていたが、標準のシートはどちらもクロス張り。この辺は趣味の問題ではあるけれど、滑りやすいレザーシートよりホールド性の優れたファブリックシートの方が好きというドライバーもいるだろうし、デザイン次第ではファブリックの方がおしゃれということだってありうる。

もしくは、自分には必要のない豪華装備のために何十万円も払いたくないと考える向きだってあるはず。幸い、ボルボもBMWもグレードによって安全装備に差をつけることはないので、この点は安心。このクラスにしては贅沢な3眼カメラ+モービルアイ・アイQ4を全車に標準装備している3シリーズなんて、ベースグレードになればなるほどお買い得感は高まるといっても過言ではない。

それに「みんなが買うから高いグレードにする」という姿勢よりも「本当に必要なものを慎重に選んで買う」方が、消費者の姿勢として賢いのではないか。「ほー、あえてそのグレードを選ぶなんて、なかなか知的でよくわかっていらっしゃるじゃないか」。知り合いのクルマ選びをそんなふうに見ている人は、アナタのまわりにもきっといるはずだ。

V60 B4の499万円という車両価格は驚きである
今回、俎上に載せたベーシックグレードの1台目はV60 B4モメンタム。ボルボの主軸ワゴンであるV60は2020年秋のアップデートで全モデルが電動化され、ベーシックグレードのB4にも48Vマイルドハイブリッドシステムが装備された。

もともと197ps/300Nmとパワフルな2Lガソリンターボエンジンにハイブリッドが組み合わされたのだから走りが力強いのは当然だろうが、そんな実力派ワゴンが499万円で手に入るのだからコストパフォーマンスは驚くほど高い。ちなみに試乗車は60万7000円のオプション付きだが、これを加えても559万7000円という魅力的な価格設定となっている。

新世代ボルボの象徴であるプラットフォーム「SPA」は、導入当初はしなやかさがやや足りなかった乗り心地と大入力が加わった時に微振動が残るところが弱点だったが、V60はデビュー当時からそうした点に改良のあとが見られたほか、最近の年次改良などで足まわりは一層のしなやかさを手に入れた。もはや、その乗り心地に注文をつけたくなるところは、ほぼ残っていない。

滑らかにストロークするサスペンションのおかげでワインディングロードでの安定感も上々。ロールが小さく抑えられている点も安心感に結びついている。しなやかな乗り心地は高速道路でも変わらず、ハイウエイクルージングは得意科目といっていいだろう。

エンジンは、低回転域でモーターのサポートが入るのでレスポンスは良好だし、トップエンドまできれいに吹き上がる。ベルト駆動のスターターモーターを備えているためにアイドリングストップ後の再始動も滑らかで好ましい。

こうなってくるとトーマス・インゲンラート氏がデザインした内外装がますます魅力的に見えてくる。ブロンドと呼ばれるホワイト系のインテリアは明るく、まるでしゃれたホテルのロビーにいるような気分を味わえる。

ADASに関していえばアクティブレーンキーピングの操舵にもう少し滑らかさが欲しいが、これを除けばパワートレーン、シャシ、デザインとも不満らしい不満はない。デビューからわずか3年でV60は熟成の領域に入ったようだ。

318iのパフォーマンスに不満を感じることはない
一方のBMW318iは、モデル名より実際のエンジン排気量の方が大きいという最近では希有な存在。こちらはハイブリッドが与えられておらず、2Lガソリンターボエンジンは156psと250NmでV60 B4に一歩及ばない。エンジンのパフォーマンスでBMWがボルボに負けるとは、往年のバイエルンファンには受け入れがたいことかもしれない。318iツーリングの車両価格は523万円でV60に近いが、試乗車は165万円のオプションを装備し、合計で688万円と「いい」お値段となっている。

まずは市街地を走り始める。ランフラットタイヤの影響もあって、目地段差を乗り越えるたびにゴツンというショックが伝わってくるのは残念。また、路面のうねり具合によってはボディの上下動が1回では収まらなかったり、ボディが前後でシーソーのように動くピッチングも感じられたりしてあまり褒められない。

もっとも、高速道路で100km/h前後に達すると俄然ハーシュネスが改善され、フラット感も高まる。さすがドイツ車、さすがBMWである。ちょっと厳しいことも指摘したが、ボディや足まわりの剛性感が高く、振動は伝わってきてもダンピングが良好で安っぽさを感じさせない点は高く評価したい。

エンジンは低速域からトルク感があるし、フィーリングも滑らか。「電気パワー」のアシストがあるV60ほどの力強さはないけれど、ハイウエイからワインディングロードまでパフォーマンスが物足りないと感じたことは1度もなかった。その点、かつての318iとは大違いである。

エクステリアデザインは、テールライトが薄型化されるなどして未来感は強まったが、BMWらしい端正な佇まいはそのまま。インテリアも安っぽさはないが、正直、デザイン性は高くなく、オシャレ感ではV60に遠く及ばない。

一方、アクティブレーンキーピングは常にスムーズにハンドルを切ってくれるほか、3眼カメラが遠く離れた前走車もしっかり認識しているらしく、アダプティブクルージングによる加減速も滑らかで安心感は強かった。この点はV60に対する明確なアドバンテージと言えるだろう。

優等生なのがV60 B4で318iは一芸に秀でている
もうひとつ、318iで魅力的だったのが、ワインディングロードでの走りだった。もっとも、これについては注釈が必要だ。ハンドルをいったん切れば、あとは路面のうねりなど関係なく安定したコーナリングフォームを示す点ではV60が勝っていたのだが、318iにはどこか心が浮き立つような楽しさがある。

その理由が最初はうまく呑み込めなかったのだが、繰り返し乗るうちに謎が解けた。前後の重量バランスがV60より50対50に近い318iはノーズの入り方が俊敏。しかも、前車軸荷重が1トン近いV60はフロントタイヤを常に労りながらハンドル操作をするのだが、318iはもっと自然な感覚で操舵できる。このあたりも、ストレスなくコーナリングを満喫できる理由のひとつだと言えるだろう。

というわけで、1台のクルマとして見たときに満遍なく高得点を獲得しているのはV60だった。それでいながら318iよりも値付けが安いのだから、お買い得であることは間違いない。

いっぽうで、318iのアドバンテージはADASの高い完成度とワインディングロードでの走りの良さときわめて明快。つまり、苦手科目の少ない優等生がV60で、一芸に秀でているのが318iだったことになる。どちらもそれぞれに魅力的だが、あえて1台を選ぶなら、優れたデザイン性のV60により強く惹かれたというのが正直な気持ちである。(文:大谷達也/写真:小平 寛)

ボルボ V60 B4モメンタム 主要諸元
●全長×全幅×全高:4760×1850×1435mm
●ホイールベース:2870mm
●車両重量:1710kg
●エンジン:直4 DOHCターボ+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:145kW(197ps)/4800-5400rpm
●最大トルク:300Nm/1500-4200rpm
●モーター最高出力:10kW/3000rpm
●モーター最大トルク:40Nm/2250rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTCモード燃費:12.8km/L
●タイヤサイズ:225/50R17
●車両価格(税込):499万円

BMW 318iツーリング 主要諸元
●全長×全幅×全高:4715×1825×1470mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1610kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1998cc
●最高出力:115kW(156ps)/5000rpm
●最大トルク:250Nm/1300-4300rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・59L
●WLTCモード燃費:15.4km/L
●タイヤサイズ:255/50R17
●車両価格(税込):523万円

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みんなのコメント

7件
  • こうして見ると、新世代ボルボのデザインは洗練されてて美しいなと思う。
  • 駆動方式に拘らなければボルボの方が運転しやすそう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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