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取り巻く5つの懸念材料 スバルの未来はどっちだ!?

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取り巻く5つの懸念材料 スバルの未来はどっちだ!?

 2018年9月28日、スバルはブレーキやステアリング(ハンドル)についての出荷前検査での不正が発覚した、と発表した。

 2017年10月に発覚した完成検査問題、燃費データ不正問題に続いて、今度は安全装備そのものについての不正が明るみにでた形で、特にアイサイトなど安全技術を信頼性の大きな柱にしてきたスバルにとって、これは非常な痛手となる問題だ。

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 6月に中村知美氏が新社長に就任、7月に新中期経営ビジョン「STEP」を発表と、新たな船出の直後にいきなり暗雲が立ち込めてしまったスバル。

 しかし、そもそも先代の吉永泰之氏から中村知美氏への社長交代は、先述の完成検査問題、燃費データ不正問題こそが引き金となったものだ。あまり言いたいものではないが、足元は相当バタついているのではないだろうか。

 そこで今回は、モータージャーナリスト桃田健史氏に、前中期経営ビジョン「際立とう2020」の遂行度振り返りを踏まえて、スバルの未来を予想してもらった。

※本稿は2018年5月のものです


文:桃田健史/写真:ベストカー編集部


初出:『ベストカー』 2018年6月26日号

■前中期経営ビジョン「際立とう2020」の遂行度は?

 順調な北米戦略の遂行。これが、2014年発表の中期経営計画「際立とう2020」における事実上の使命であり、その思惑は2018年5月時点では成功している。

 そのひとつ前の中期経営計画「Motion-V」では、北米市場向けに大幅な商品改良を施し、北米の販売拠点であるSOA(スバル・オブ・アメリカ)によるディーラー再編、そしてマーケティング戦略「LOVEキャンペーン」が相乗効果を生み始めた。そうしたビジネス路線を盤石にすることが「際立とう2020」の骨子だった。

 結果的に、北米主軸をより明確にすることで北米での販売台数は順調に伸び、2018年4月時点で販売台数ベースで全米7位のブランドにまで成長。逆の見方をすると、スバル全体としての伸びは北米に偏りすぎだといえる。

 2018年3月期の決算報告資料によると、世界各市場でのスバルの販売台数の 2012年3月期との比較では、北米市場は2.4倍と大幅増なのに対し、日本や欧州など北米以外の市場全体では1.1倍と微増なのだ。

 2019年3月期の予想についても、前期比での伸びぶんのほとんどが北米頼みとなるが、売上高と営業利益はそれぞれ4.6%減と20.9%減に落ち込む。原因は今期比で6円の円高水準を見込むからだ。

 こうした北米一本足打法を続けるなかで、課題となるのが生産体制。SIA(北米の生産拠点)は、2016年にそれまでの北米トヨタ向けの「カムリ」生産を中止し、北米向け「インプレッサ」に振り分けた。

 生産能力は最大で45万台程度と見込まれ、さらなる北米市場拡大のためには北米第2工場の新設が必然。

 スバルはこれまで北米生産にさらに一歩踏み込むことへの投資リスクを避けてきたが、日本市場の伸び悩みを鑑みて「際立とう2020」末期までに日米生産体制の再編の準備が必要となるだろう。

 そして、2018年7月に発表予定の新中期経営計画で注目されるのが、中国市場への対応だ。2018年に3000万台越えが確実視されている中国で、スバルの過去6年間は上下動を繰り返しており、安定感に欠けている。

「際立とう2020」で掲げた“スバルブランドを磨く”との観点が最重視される市場は中国。近年、SUVシフトが進む中国においても、アメリカでの「LOVEキャンペーン」を超越する新しいマーケティング戦略が望まれる。

 そして、気になる新しい商品戦略だが、米ZEV法や中国NEV法(※いずれも各国が掲げる排ガス規制)に対応したPHVの導入と次世代アイサイトが筆頭となる。

 だが、水平対向・フルタイム4WDというスバルの原点がスバルブランドの飛躍を下支えすることはこれまでも、そしてこれからも変わりない。

■今後のスバルを待ち受ける5つの懸念材料

(1)先進安全装置、アイサイトの優位性は続いているのか?

 ADASと呼ばれる先進運転支援システムとして、自動車メーカーが中心となって開発している世界で唯一の商品がアイサイトだ。

 イスラエルのモービルアイ、そしてドイツのボッシュとコンチネンタルが牛耳るこの技術領域で、スバルの「エンジニアの人力を使ったアナログっぽい開発志向」でしか実現しないきめ細かな制御は、世界自動車産業全体から高い評価を得ている。

 ただし、ステレオカメラのみならず、今後はシングルカメラの採用を公言しているスバルが、これまでどおりADASでの優位性を確保することは難しくなる。

 スバルとしては自動運転レベル3でのさらなる技術の追求を進め、レベル4以上の完全自動運転でスバル独自の世界観の創出を目指す。

(2)電動化の準備は遅れていないか?

 出遅れ、という表現ではなく、必要に応じて随時対応、という路線を描く。

 まずは、スバルとして販売台数が多い北米市場での法規にマッチングするところから始めるのが当然だ。つまり、カリフォルニア州環境局のゼロエミッションヴィークル規制法(ZEV法)への対応としてプラグインハイブリッド車を北米市場に導入する。

 いっぽうで、2019年から市場の全需10%を電動車両とすることを定めた中国の新エネルギー車規制法(NEV法)に対しても、ZEV法向け商品との共通性を高めるだろう。

 日本では北米や中国のように、「いつまでに、どのような電動化を実現せよ」という法律が生まれる可能性は低いため、市場全体として売れ筋であるハイブリッド車をフォレスターなどを筆頭として導入する。

(3)中村知美新社長体制でも北米一本足打法が続くのか?

 基本的にはそうなるが、そもそもスバルは決して、北米一本足をよしとしてきたわけではない。

 2005年頃に北米市場でのシェア拡大を目指していた当時の富士重工。それまでの設計思想では、アメリカ人の体格ではスバルのクルマは少し小さかった。そこで、インプレッサを皮切りにアメリカ人好みのクルマに対する研究を進めた。

 こうしたアメリカシフトについて当時、日本の自動車専門誌で「日本市場を軽視する動き」という否定的なコメントが目立った。

 ところが、日本のユーザーはこうしたアメリカシフトによる負の部分をあまり感じることはなく、日本市場を重視したレヴォーグの登場を大歓迎した。

 日米市場、各々の志向に合わせて、スバルの世界戦略が進む。

(4)日本国内にアセントのような3列シート車がないのはどうなのか?

 アセントは、3列シート車という括りではない。北米市場におけるミッドサイズSUVとの位置づけだ。スバルオブアメリカに対して、全米のディーラーから「アウトバックやフォレスターを卒業した顧客が乗れる、もう少し大きなクルマが欲しい」という声が増加したことがアセント誕生の主な理由だ。

 日本市場においては、アメリカのディーラーと同じような声は聞こえてこないため、アセントの日本導入の可能性はほぼゼロだ。

 他方、マツダがCX-8を作ったのは、日本市場でのミニバンからの離脱への対応策だ。スバルとしてはディーラーや顧客から、スバルのミニバン、またはミニバンに代わるものを欲する声もほとんどない。よって、日本向け3列シート車の誕生の芽はない。

(5)「100年に一度の変革」にスバルは耐えられるのか?

 かなり難しいと言わざるを得ない。

 最近、巷を賑わしている「自動車産業界100年に一度の大変革」の本質とは、自動運転、電動化、コネクテッドカーという3つの技術領域と、シェアリングエコノミーの台頭や都市化の加速などが融合して起こると考えられている。

 スバルとしては次世代技術について今後、トヨタなどの大手メーカーとの連携が必須で、スバル主導型の技術革新の余地は一気に減少する。そうしたなかで、スバルが生き残る道はただひとつ。「スバルらしい、まったく新しいサービス」という世界を作り上げることだ。

 技術屋集団としての意識が強いスバルが、サービスという出口戦略に向かって大きく舵を取ることは難しい。だが、それを早期に遂行しなければ、スバルに未来はない。

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