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【新時代のイタリアンエレガンス】 マセラティ・グランカブリオに現地試乗 楽しくないはずがない

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【新時代のイタリアンエレガンス】 マセラティ・グランカブリオに現地試乗 楽しくないはずがない

リュクスなカブリオに求められる資質とは

一年を通じてもっとも太陽の長い時期に、北イタリアの湖畔リゾートからアルプスのワインディングロードにかけて、マセラティの新しいグランカブリオに試乗してきた。

【画像】マセラティ新型グランカブリオ試乗の様子をみる 全44枚

現地に着く前からもう、エクスペリエンスとして天気にさえ恵まれれば人生でも指折りのドライブ体験となるであろうことは、たやすく想像のつくところだ。

ところが天候不順の欧州では北イタリアも荒れ模様で、前日に他国のジャーナリストが豪雨の中で走っていると聞いて同情したが、幸いにも翌日の我らが本番は快晴に恵まれた。

当然ソフトトップのオープンカーは天気に左右される。幌を下ろして走る「ハレ」の瞬間に最適化されているとはいえ、閉めている「ケ」の平時にも快適性や密閉感、もっといえば守られ感が損なわれるようでは、今日のカブリオとして選ばれる資格をたちまち失う。

結論からいえば、太陽光が眩しくて試乗のラスト1/3は幌を閉めたものの、新しいマセラティ・グランカブリオは尻上がりに好印象を増した。どういうことか、説明していこう。

まず欧州発表値のサイズ、全長4966×全幅1957×全高1365mmは、日本上陸済みで先行するクーペ版の4965×1955×1410mmとは、水平方向は計測時の誤差といっていい。

クローズ時に55mmも低く、どの角度から眺めてもミニマムな幌のルーフは電動開閉式で、50km/h以下なら約15秒で開閉可だ。指でタップしてスワイプ&ホールドか、オプションでジェスチャーコントロールも設定できる。もうひとつグランカブリオ独自の装備として、フロントシートにはネックウォーマーも備わる。

快適性を担保するために練り込まれた造り

クーペと比べて内装で異なるのは、ルーフ開閉のようなグランカブリオ特有の機能だけではない。

オプションとはいえソナス・ファベールの計16個のスピーカーによるオーディオシステムのうち、サブウーファーはコンパートメント埋込ではなくリアシート2座の間に挟み込まれ、「フレッシュエア」テクノロジーというオープントップ用の独自チューニングが施されている。

ボディパネルでクーペと共通するのは車体前半分とドアパネルぐらいで、Aピラーそしてルーフ電動開閉システムを収めるリア周りは、まったく別仕立てだ。

外から見えないアンテナを収めるリアのトランクリッドだけがグラスファイバー・コンポジット製で、パネル類はほぼアルミ。グリーンハウス周りは超高張スチールでフロア周りもアルミで強化されている。かくしてボディ剛性面では補強を図りつつも車重増は+約100kgに抑えた。

トランク収納スペースは幌収納のため天地方向は短いものの、ミニマム131L、最大172L。これはクーペの約55%にあたる大きさで、ゴルフバッグ×2個は何とか収められそうだ。

プレチャンバー燃焼機構を備える2992ccのV6ツインターボ、550ps仕様のネットゥーノをフロントミドに積む点も、クーペとまったく変わらず。ただいざ幌を下ろして走り出すと、気筒休止中であろう速度域でも、エンジンの響きがごく近く感じられる。

前後ウィンドウを上げたままの状態なら、外界と繋がりつつも車内の会話はよく通る。ドライブモードをコンフォートかGTに入れて市街地をクルーズする限り、グランカブリオは穏やかなパレードカーだ。

汗をかくにも涼し気なイタリアン・エレガンス

ただしワインディングでアレグロのリズムで駆けだすと、グランカブリオはガラリと趣を異にする。狭い峠道で手に余るどころか、操舵に対して手の内に収まるような軽快さでふるまい始める。ミズスマシ的な平行移動ではなく、姿勢変化を感じさせて曲がっていくタイプのハンドリングだから、楽しくないはずがない。

それにしても66.28kg-m/550psというアウトプットは他のスポーツカーブランドならV8相当だが、ネットゥーノは2気筒少ない分だけ鼻先が軽く、プレチャンバー機構によって高回転まで伸びる心地よさも味わえる。オープンでグランカブリオを操る快楽に、かくして乗り手は徐々に絡めとられていく。

低速コーナーか発進時以外にフロント駆動配分されないAWDで、ナチュラルな後輪駆動フィールやハンドリングを保つため、フロントのトラクションはスパイスより下味として時々、引っ張ってくれる程度。

ドライ路面の公道ならほぼFRだ。51;49という前後重量バランスの良さ、強靭なボディ剛性に加え、VDCMというマセラティ独自の、ヴィークルダイナミクスを統合コントロールするプログラムの賢さによるものだろう。

高速巡航ではリアシート2座を塞ぐ格好になるが、事前にトランクから折畳み式ウインドウストッパーをとり出して装着すれば、巻き込み風は巧みに抑えられ、前席で会話が続けられるほど。ルーフを閉めて走ってもみたが、頭上スペースに圧迫感はなく、遮音や断熱もしっかりした手応えの幌で、室内の密閉感は体感上、クーペの0.5段落ち程度で済む。

グラントゥーリズモ・トロフェオの2998万円~に対して、日本では3120万円~の価格が設定されているが、この価格差ならカブリオにしない手はない。そう思わせる高い完成度と、圧倒的にエレガントな世界観を備えた一台といえる。

試乗車のスペック

全長×全幅×全高:4966×1957×1365mm
ホイールベース:2929mm
最高速度:316km/h
0-100km/h加速:3.6秒
駆動方式:AWD
車両重量:1958kg
パワートレイン:V型6気筒DOHC2992cc+ツインターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:550ps/6500rpm
最大トルク:66.28kg-m/2500rpm
ギアボックス:8速オートマティック
タイヤサイズ:265/30ZR20(フロント)295/30ZR21(リア)

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