コロナ禍とウクライナ情勢の影響で発売が遅れていたフォルクスワーゲン ID.5だが、ようやく試乗の機会を得た。今回は2022年5月初旬にオーストリアで行われた国際試乗会で試した。次代を担うBEV「IDシリーズ」の最新作の実力をレポートする。(Motor Magazine 2022年7月号より)
スポーティなSUVクーペ。航続距離は490km
ID.5はSUVボディのID.4をベースにルーフをクーペ状にリデザインしたモデル。全長が15mm延長されたが、全高は変わらない。ただし後方へ大きくスラントしたルーフによって軽快でスポーティな印象になった。また形だけでなく実際に空力特性(Cd値)もID.4の0.28から0.27へと改善された。
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試乗したのはもっともパワフルなGTXで、ゴルフやポロなどのGTIに相当するモデルである。前後2基のモーターによるシステム総合の最高出力は299ps(150kW)、最大トルクは460Nmを発生し、航続距離は490km(WLTP)と発表されている。
インテリアはこれまでのIDシリーズとまったく同じで、ドライバーの正面に5.3インチのディスプレイ、そしてダッシュボードには12インチのタッチパッドが備わる。インフォテインメントのOSはMIB-IIIでソフトウエアは大幅に改善されている。
GTXの走りは確かにGTIを彷彿させる。加速感は電気モーター特有のものだが、シャシセッティングはスポーツ志向で、ハンドリングもスポーティだ。ただし快適性へのマージンは十分以上に残されており、日常の使用にまったく問題がない。感動したのは改善された回生システムで、オートマチックモードではコーナーやランナバウトの前で自然かつ効果的に回生ブレーキが作動する。
ちなみに発表された航続距離はWLTPで490kmと通常使用には十分な距離である。またSUVクーペといえどもリアコンパートメントは広く、ヘッドルームとニールームは十分な余裕があり、大人3名がゆとりを持って後席に乗ることが可能だ。またラゲッジスペース容量は通常で649L、リアシートのバックレストを倒せば1561Lに拡大する。フル乗車でのロングツーリングでも十分な積載量が用意されている。
スタイリッシュで実用性を失っていないID.5は、自らのライフスタイルを極めたい人たちには正しい選択だと思う。ただし、フォルクスワーゲン ジャパンが2022年中の国内発売を表明しているID.4とは違い、ID.5の日本導入はまだ先の話になりそうである。(文:木村好宏/写真:キムラ・オフィス)
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