三菱自動車(以下、三菱)が5月20日発表した新型軽EV「eKクロス EV」。このプロトタイプを見た世良耕太の評価とは?
「EVの敷居を下げたい」
29歳、フェラーリを買う──Vol.150 今までありがとうございました(最終回)
三菱自動車は軽自動車タイプの新しい電気自動車(EV)「eKクロス EV」を発表した。販売開始は本年夏を予定する。
車名から推察できるように、既存の軽ハイトワゴン、「eKクロス」にバリエーションを追加した格好だ。2009年に発売した「i-MiEV」の後、長いインターバルを置いて満を持して発売する軽のEVだけに、独立したモデルとして発売するのかと思いきや、そうではなかった。
よく見るとガソリンエンジン仕様とはフロントグリルが違うし、前後バンパーの下部がボディ同色になっているし、フォグランプの形も違って、サイドには専用のバッジが付いていたりする。アルミホイールも専用デザインだ。
であるものの、当然のことながらeKクロスに“激似”である。訊くと、意図的にそうしたのだという。
「賛否はあると思います」と、商品戦略本部チーフ・プロダクト・スペシャリストの藤井康輔氏は説明する。
「これまで国内でEVを買われているお客さんは、ちょっと人と違うといった特別感を求めていたところがありました。私たちにはEVの敷居を下げたいという思いがあります。EVはこれから、特別な存在ではなくなっていく。軽のラインアップのひとつとしてガソリンモデルを選ぶかEVを選ぶかという時代になっていくし、そうなってほしいという思いがあります。そのため、新しい車種、新しい名前を与えるのではなく、(既存の)eKクロスを使うのがベストだと判断しました」
事前に調査もした。今からEVを買うとしたらどんなEVがいいか? アンケートをとったところ、「専用の外観にこだわらない」という回答が約6割に達したという。さらに、3割が「外観を変えてほしくない」と回答したという。EVに乗っていることをことさら主張したくないと考える潜在ユーザーが増えているのだ。
三菱はこうしたマーケットの動向を汲み取り、専用の外観と名前を与えず、eKクロスの1バリエーションとしてEVを設定することにした。それが、EVが市民権を得て広がっていくための最善の策だと判断したのである。
なぜeKクロスがベースに選ばれたのか?
eKクロス・シリーズには、スーパーハイトワゴンに分類される「eKクロス スペース」も存在する。EVを設定するにあたってeKクロス スペースではなくeKクロスを選択したのは、狙いとするターゲットや性能、それに構造の観点からだ。
軽EVは多人数で乗ることの多いモデルよりも少人数で乗ることの多いモデルの方が適していると考えたのが、eKクロスを選択した理由のひとつ。さらに航続距離を延ばすためにも、できるだけ重量を抑えたいし、高さを抑えて空気抵抗を減らしたかった。eKクロス スペースはスライドドアを採用するが、この機能をEVでも成立させようとすると、床下に積むバッテリーと干渉してしまう点も、eKクロスになびかせる要因だった。
エクステリアとおなじく、インテリアもeKクロスとの差異は小さい(ま、意図してそうしたわけだが)。上級グレードの「P」にオプション設定するプレミアムインテリアパッケージを選択すると、ライトグレーの内装色を基調に合成皮革と立体感あるダイヤ柄エンボス加工を施したファブリックのシート生地になる。
エクステリアからはEVであることをあまり主張しないが、オプションを選べば、室内では「他とちょっと違う」ことを体感できる設定だ。
前席の居住性はガソリンエンジン仕様となんら変わりない。後席も同様。容量20kWhのリチウムイオンバッテリーを床下に薄く搭載しているため、居住空間を犠牲にしていない。
ラゲッジスペースはガソリンエンジンの4WD仕様と同等だ。リアのサスペンションは重量増に対応するため、ガソリン4WDと同じ形式のトルクアーム式3リンクを採用する。
衝撃的な走り
取材時は「事前撮影会」ゆえ「撮影」を目的とする催しだったが、「撮影のために移動させる」名目のもと、できたてほやほやのeKクロス EVをほんの少し、運転出来た(もちろん、許可を得て)。会場には撮影の比較用にガソリン・エンジン仕様のeKクロスも置いてあったので、これも許可を得て少しだけ動かした。
乗り比べてみれば、おなじeKクロスでもガソリン・エンジン仕様とEVでは大違いだ。聞けば、販売の現場に対して「お客様には先にガソリン・エンジン仕様に乗っていただくこと」と、指示を出しているという。先にEVに乗ると落差の違いに衝撃を受けると予想されるからだ。その気持ちはわかる。
走り出す前からガソリン・エンジン仕様とEVでは、ずいぶん印象が違う。ガソリン・エンジン仕様は始動した瞬間に音と振動があちこちから伝わってくるが、EVは静寂に包まれたままだ。
アクセル・ペダルを踏み込むと、たとえそれが駐車場内で移動するスピードであっても、歴然とした違いに驚くことになる。EVの最高出力は47kWでガソリンエンジンのターボ仕様とおなじ。ところが、最大トルクは195Nmで、ターボ仕様(100Nm)の倍に近い。しかも、660ccのターボエンジンが2400rpmで最大トルクを発生するのに対し、EVのモーターは0rpmで最大トルクを発生する。発進時にアクセルを踏み込んだ瞬間からマックスの力を発生するのだ。
電気で動くモーターの特徴とガソリン・エンジン仕様との違いは、撮影会場内をほんの少し移動させるだけでも明確に、そして衝撃的なほどに体感出来た。そんなふうだから販売の現場には、試乗希望者に対し「アクセルはタイヤがひと転がりしてからジワジワ踏んでください」と伝える意向だという。これまでとおなじ感覚で踏んでしまうと、とんでもないことになりかねないからだ(もちろん、大げさなことにはならないような制御にはなっている)。
eKクロス EVの一充電走行距離は180km(WLTCモード)と発表されている。軽自動車のユーザーの8割以上が、一日あたり50km未満の走行距離というから、そういう使い方なら3日に1回程度充電すればいいだろう。とくに、ガソリンを入れに行くのに10kmも20kmも走らなければならないような環境では、魅力的な存在になるだろう。
下位グレードの「G」のメーカー希望小売価格は239万8000円であるが、各種補助金を受けた場合は実質的に100万円台(184万8000円)で購入できることになり、ターボ・エンジン仕様の最上級グレードに約16万円足せば手が届く。
日常使いをするのに充分な航続距離を備え、ガソリン・エンジンを積む軽自動車に対しひとクラスならぬ、ふたクラス上の静粛性と走行性能を備えているのがeKクロス EVだ。
日本ではハイブリッド車がフツーのクルマとして認知されるようになったように、軽自動車はEVが普通になるかもしれない。その起爆剤になるポテンシャルをeKクロス EVは備えている気がする。
文・世良耕太 写真・安井宏充(Weekend.)
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