7月9日、イタリアのモンツァ・サーキットでWEC世界耐久選手権第5戦『モンツァ6時間レース』の決勝が行われ、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)の7号車トヨタGR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組)がポール・トゥ・ウインを飾り、2023年シーズン3勝目を挙げた。
また僚友8号車トヨタGR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組)は、4位でチェッカーを受けたもののレース後に最大パワーの超過があったとして競技結果に50秒加算のペナルティが科せられ、正式リザルトでは6位へ降格になっている。
16秒差で可夢偉が逃げ切り。トヨタ7号車がフェラーリ下し今季3勝目【WEC第5戦モンツァ決勝レポート】
猛暑のなか、12時半より開始された6時間の決勝レースでは、1周目から激しい争いが見られる展開に。ポールポジションの7号車はコンウェイのドライブでトップをキープしたが、その後方では、3番手からスタートしたブエミのドライブする8号車が、狭い第1シケインへの進入でフェラーリ51号車と接触し、8番手へと順位を落としてしまう。
開始15分後、7号車のコンウェイはフェラーリ50号車とプジョー93号車を従え首位を走行していたが、8号車はLMGTEアマクラスに参戦しているDステーション・レーシングの777号車と接触し、アストンマーティンがクラッシュ。これによりセーフティカー(SC)が導入される。8号車には、スタート直後の接触と合わせて2度のアクシデントによるマシンへのダメージはなかったが、レーススチュワードより最初のコンタクトでピットストップに10秒加算、さらに2度目の接触で60秒のストップ・アンド・ゴーペナルティが科された。
序盤のSC導入により、首位7号車の後方には僅差でライバル勢が連なるかたちとなり、再スタートが切られると7号車のコンウェイは3番手に順位を落としてしまう。一方、8号車はペナルティを消化した結果、総合34番手まで大きく順位を落とし、コースに復帰してまもなく周回遅れとなった。
7号車のコンウェイは順位を落としたあともライバルに離されることなく前を行く50号車フェラーリにプレッシャーをかけ続け、1時間を経過したタイミングで最初のピットへ向かうが、隣のガレージも同時にピットインを行ったためタイムをロス。一方の8号車ブエミは、1回目のピット時にペナルティを消化し、ここから追い上げを開始する。
ハードタイヤを装着して3番手を走行する7号車は、その時点での最速タイムを記録しながら追い上げをみせ、コンウェイが首位を奪還。その後ロペスへと交代していく。ロペスも首位争いを続け、3時間過ぎに5号車ポルシェ963をかわしてトップに再浮上した。その直後LMP2クラスのアクシデントにより、この日2度目のSCが導入された。
■最終スティントでは3度目のSC導入でリード帳消しに
ピット戦略の異なるライバル勢がSC導入前にピットインを終えていたこともあり、首位に立ったロペスの7号車はファステストラップを2度更新する速さを披露しながら2番手の50号車フェラーリとの差を広げていく。8号車もブエミから平川へとドライバー交代し、猛烈な追い上げで7番手へと順位を上げた。
8号車は、的確な戦略と平川の好走で周回遅れから脱することに成功し、レース終盤にハートレーへと交代。ハートレーは、トップ6フィニッシュへ向けてさらなる追い上げを開始する。一方、首位を走る7号車は、ロペスの健闘により2台のフェラーリに対し大きな差を広げ、4時間過ぎに可夢偉へと最後のドライバー交代を行った。
しかし、このレースでデビューしたプロトン・コンペティションの99号車ポルシェ963が、トラブルによって第1シケイン先でストップ。この影響で三度SCが導入され、45秒あった2番手フェラーリが差が帳消しに。最後の1時間半、可夢偉はフェラーリ50号車から僅差での追撃を受ける。しかし7号車は、ファステストラップを更新する走りで後続を突き放し、2番手の50号車フェラーリに16秒520の差をつけてトップチェッカー。敵地モンツァでシーズン3勝目を飾った。
8号車は3度目のSC導入のタイミングで緊急給油ピットインを余儀なくされ、レース再開時には8位へと順位を落とすことに。それでも最後まで諦めることなくプッシュし、ハートレーが残り15分でタイトルを争うフェラーリ51号車とポルシェ5号車を次々にオーバーテイク。暫定4位でチェッカーを受けた。しかし前述のとおり8号車はレース後にペナルティを受けて6位に後退。その理由は190周目にパワートレインの出力制限が既定値を超えていたというものだった。
今大会で2023年シーズンWECヨーロッパ・ラウンドは終了。TGRにとって今季4勝目となった今回の勝利により、マニュファクチャラーズランキングでは2位フェラーリとの差を26ポイントへと拡げることに成功した。また7号車の3名は、この勝利で僚友8号車のトリオに次ぐドライバーズランキング2位タイへと浮上。ふたたびチャンピオン争いに加わることとなった。WECの次戦は、9月8~10日にTGRのホームである静岡県の富士スピードウェイで開催される第6戦富士6時間レースだ。
■TOYOTA GAZOO Racingドライバー:モンツァ6時間後コメント全文
●小林可夢偉 チーム代表兼ドライバー(7号車)
「今日のこの結果は本当に嬉しいです。非常に強力なライバルと大接戦だったので、ハードにプッシュし攻め続けなくてはなりませんでした。鍵となったのはレース全体をミスなく戦ったことと、タイヤマネジメントでした」
「私の最後の長いスティントは緊張しましたし、本当に大変でした。しかし、フェラーリとのバトルは素晴らしかったですし、今日の勝利でル・マンでの雪辱を少しは果たせたかと思います。チーム、そして、ル・マンの後も本当に多大な支援を続けてくれているパートナーの皆さま、及びサポートいただいている皆さまに感謝いたします」
「8号車も追い上げてポイントを獲得し、チームにとって良い結果でした。彼らは絶対に諦めないという大事な気持ちを示してくれました。シーズンも残り2戦となりましたが、両チャンピオン防衛へ向け全力で臨みます。残り2戦も厳しい戦いになることは間違いありません」
●マイク・コンウェイ(7号車)
「フェラーリのホームで彼らに打ち勝つことができて良かったし、チームのみんなには本当に感謝している。ピットストップは着実かつ迅速で、タイミングもすべて的確でした。とくに最後のピットは素晴らしく、おかげで首位を守ってコースに復帰できた」
「今回の勝利は嬉しいし、ポイント面でチームにも貢献できたと思う。本当に大変なレースだったよ。このレースはタイヤのマネージメントがすべてだとわかっていたし、選択肢は幾つかあった。僕たちの作戦はうまくいき、一時は順位を落としたものの、選択したハードタイヤで、路面温度の上昇やセーフティカーなどもあるなか、順位を取り戻すことができた。そして、ホセが後続とのギャップを築き、可夢偉が最後に素晴らしいスティントで勝利をもたらしてくれた」
●ホセ-マリア・ロペス(7号車)
「厳しい結果となったル・マンの後、ここで勝てたことはとても重要で、チーム全員が素晴らしい仕事をしてくれました。今日も大変なレースでしたが、GR010ハイブリッドは好調だった。ペースも良く、ピットストップもタイヤ戦略も完璧だった」
「今季3勝目を挙げ、チャンピオン争いに復帰できたのは本当に嬉しいよ。今日は走っていても気持ち良かったし、アタックして首位を奪還し、その後は差を広げることができた。同時に、耐久レースではせっかく築いたマージンがあっという間になくなってしまうこともわかっていた。セーフティカー導入により最後は可夢偉に厳しい戦いを強いることとなってしまったね」
「しかし、彼はその大変な役割を果たし、トップで戻って来てくれた。フェラーリの熱狂的なファンの皆さまの前で勝てて最高の気分だ」
●セバスチャン・ブエミ(8号車)
「複雑な感情の入り交じる1日だった。7号車が勝ったことはとても良かったですし、彼らの素晴らしいパフォーマンスを祝福する」
「我々8号車にとっては厳しいレースとなってしまった。僕はスタートで接触を喫し、ペナルティを受け、さらにGTクラスのアストンマーティンとも接触してしまった。彼らにはお詫びしたいと思う」
「もちろん、そこから全力で追い上げて、最終的には多くのポイントを獲得することができた。しかし、我々にとっては厳しい1日だったことは確かだ。次の富士ではもっと良い結果を狙うよ」
●ブレンドン・ハートレー(8号車)
「まず初めに、勝利を挙げたチーム全員へ祝福を送りたい。7号車は可夢偉のポールポジション獲得から、素晴らしい週末だった。彼らはフェラーリとの激戦を制したんだ」
「僕たち8号車は、序盤のアクシデントで周回遅れになってしまったこともあり厳しいレースとなってしまったが、後方から追い上げて、僕は最後にタイトルを争うフェラーリ51号車とホイール・トゥ・ホイールの素晴らしいバトルを楽しむことができた」
「この暑さのなか、3スティント連続で走るのは本当に大変で大きな挑戦だったけど、楽しかったよ。今日は表彰台に立つことはできなかったけれど、我々が見せることができたパフォーマンスには満足している」
●平川亮(8号車)
「フェラーリのホームレースで7号車が優勝してくれたことは良かったですし、彼らの素晴らしい走りに祝福を贈ります。残念ながら我々の8号車はレース序盤にペナルティを受けることとなってしまいましたが、決して諦めることなく追い上げ、順位を上げていきました」
「チェッカーまで諦めずに戦い続けたことで、レース終盤にブレンドンがフェラーリとポルシェをかわしてくれました。最終的にチャンピオン争いで重要なポイントを稼ぐことができましたし、自分たちが見せられたパフォーマンスには満足しています。次は我々のホームレースである富士なので、母国ファンの皆さまの前で多くのハイパーカーを相手に戦うのを楽しみにしています」
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