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スーパー耐久新法人『STMO』でモリゾウ理事長が目指すもの、そして守っていくものは

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スーパー耐久新法人『STMO』でモリゾウ理事長が目指すもの、そして守っていくものは

 4月20日、ENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONEを運営するスーパー耐久機構(S.T.O)は、第1戦SUGOスーパー耐久4時間レースが開催されている宮城県のスポーツランドSUGOで記者会見を行い、2024年6月に一般社団法人『スーパー耐久未来機構(STMO)』に事業を継承すると発表した。新たなSTMOが目指すもの、そして新たな理事長に就任したモリゾウの考えが記者会見内で語られた。

 年々エントリーが増え、多種多様な車種、多くのエントリーとともに、ST-Qクラスを使ったクルマづくり、カーボンニュートラルへの挑戦が続けられているスーパー耐久。ここ何年か、スーパー耐久シリーズの価値を将来に渡って高めていくために、シリーズを運営する体制そのものも強化していく必要があると考えた結果、新たに設立される新法人『スーパー耐久未来機構(STMO)』に事業承継することになった。

スーパー耐久機構が組織変更。新たな一般社団法人『スーパー耐久未来機構(STMO)』が誕生

 20日にスポーツランドSUGOで行われた記者会見には、新法人では副理事長に就任するSTOの桑山晴美事務局長、そして新法人のモリゾウ理事長、加藤俊行専務理事が出席し、新法人設立、そしてスーパー耐久の将来に向けた質疑応答が行われたが、この中でモリゾウ理事長から“未来”へのビジョンも語られた。

「この体制にしたからといって、すぐに未来が語れるということでもない」というモリゾウ理事長だが、見据えるもの、そしてスーパー耐久として守るべきものがあるという。まず見据えるものとして挙げられたのは、アジアへの展開だ。

■アジアからスーパー耐久、そして世界へ
 スーパー耐久では、2016年に『アジアプロジェクト』が立ち上げられたほか、2019年には香港を中心に『スーパー耐久アジア』を設立。コロナ禍等もあり積極的な展開にはなっていないが、アジアからのエントリーは毎年のようにあった。

 モリゾウ理事長は、アジアへの展開について「桑山さんからは、この草の根レースを日本だけでなく世界へ広げていきたい。特にアジアへ……という思いもうかがってまいりました」という。モリゾウ自身も、近年ドライバーモリゾウとして、トヨタ自動車豊田章男会長としてアジアを訪れており、「昨年はフィリピンや台湾、タイなどアジアの国々に参りまして、各国にいるクルマ好きたちの熱を体感してまいりました」とアジアでのモータースポーツ熱を肌身で感じてきた。

「アジアのモータースポーツ熱はすごいものがあります。スーパー耐久の良さは、“ワールドフェス”というより“村祭り”だと思っています。このカルチャーはアジアにもあると思うんです、モータースポーツというとヨーロッパが発祥で、私の世代はやはりヨーロッパのモータースポーツ文化に憧れてきたと思います」とモリゾウ。

「いまアジアのモータースポーツでは、まさに私がヨーロッパのモータースポーツに少年時代に憧れたようなときのような状態が始まっていると思います。まずはアジアの中には富士があり、その先にはヨーロッパがあるような、高いところに行きたい、速く走りたいという気持ちが満足できる場を提供し、世界に通じる道を作ってあげることが役割ではないかと思っています」

「スーパー耐久を海外で開催するというのも考えられますが、逆にアジアのクルマ好きたちが日本のスーパー耐久に出たいと思えるようなレースにしていくのも良いのではないかと話しております」

 モリゾウといえばニュルブルクリンクへの挑戦が挙げられるが、スーパー耐久はその多様な車種、耐久レースという要素をはじめニュルと似通っているところが多い。アジアからスーパー耐久へ、そしてニュルブルクリンクへと続くような「世界に繋がっているルート」を作りたいという。

■村祭りを守っていくこと
 一方で、モリゾウ理事長が例える“村祭り”には守るべきものがあるともいう。「村祭りの主役は参加者だと思います。このスーパー耐久という場では“手作り”、“顔なじみ”、“誰でも参加できる”といったことがキーワードになってくると思います。そういう方々が参加して楽しめる場として“融通が利くこと”がこのレースのひとつの特徴だとも思います」とモリゾウ理事長。

「STOからSTMOになったとしても、皆さんが集まってこられるので、その点はしっかり守っていきたいですし、桑山さんをはじめこのレースを支えてくださった方がほぼ全員残ってやっていただきますので、安心しています」

 そして、スーパー耐久がこれから取り組むべき内容のひとつが、各メーカーがST-Qクラスを使って開発を進めているカーボンニュートラルへの挑戦だ。「これまで音を出して排気ガスを出して……と、業界に関わる側としては、カーボンニュートラルからは少し遠いところにいて少し肩身の狭い思いをしていたと思います」とシリーズ全体についてモリゾウ理事長は語った。

「しかし、水素エンジンをはじめ、皆さんが観ている前で開発がどんどんアジャイルに進む、多くの仲間がレースの場で開発を進めるために集まってくることが、日本の未来に繋がると思いますし、エントラントとして継続していくこと、そしてSTMOとしても見守って欲しいと思います」

■スーパーGT、スーパーフォーミュラとの協力も
 さらにこの記者会見では、思わぬ“質問者”が現れた。モリゾウ理事長が笑顔で指名したその先にいたのはメディアではなく、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションの坂東正明代表だった。「STMOさんは今後スーパーGTと仲良くしていただけますか?」と坂東代表が質問すると、会場には笑いが起きた。

「私が答えさせていただきます(笑)」とモリゾウ理事長は答えた。

「スーパーと名がつくレースが日本には3つあります。それぞれスーパーGTはホンダ、ニッサン、トヨタの3メーカーのガチンコ勝負で、GT300は世界中のGT3車両がしのぎを削り、タイヤメーカーも競争をしているレースですよね。そしてスーパーフォーミュラはホンダ、トヨタがエンジンを供給していますが、ドライバーの選手権だと思っています」

「このスーパー耐久は参加型レースで、今は独立独歩でそれぞれ3つのシリーズが役割を担ってきたと思うんです。ただこの3つのレースがもつ日本のレース業界を盛り上げる共通の役割は同じだと思っています」

 そしてモリゾウ理事長は「まずお話し合いしたいのはスケジュールの件です。エントラントの立場で言いますと、けっこう大変なときがあるんですよね。ですから日本のモータースポーツが地域としてもカテゴリーとしても、もうちょっとバランス良くスポーツイベントとして観にいけるようにしたいと思います」と続けた。ROOKIE Racingのオーナーとして3シリーズともに参戦しているからこそ出てくる意見だろう。

「実は坂東さん、それとスーパーフォーミュラのマッチ(近藤真彦会長)と、これが終わったら早めに晩ごはんを食べることにしています。そのあたりで、仲良しであることを皆さんに示してまいりますので(笑)、ぜひとも一緒に協力してモータースポーツを盛り上げる、みんなをワクワクさせるスポーツにしていく、アスリートたちが参加しやすくするというのがミッションだと思っています」

 トヨタ自動車豊田章男会長として、そしてROOKIE Racingのオーナー、レーシングドライバーとしてとさまざまな顔をもつモリゾウ。新たに加わったSTMO理事長としての顔は、情熱を注ぐ日本のモータースポーツ、そしてスーパー耐久に新たな“未来”を作ってくれそうだ。

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