注目度高い カローラのSUV
執筆:Takahiro Kudo(工藤貴宏)
【画像】「共食い」起こる?【カローラ・クロス/C-HR/ヤリス・クロスを比べる】 全156枚
編集:Taro Ueno(上野太朗)
いま、自動車系のウェブメディアでもっとも盛り上がっているクルマ。それはトヨタの新型車「カローラ・クロス」だ。
その車名に馴染みがない人も多いのは無理もない。日本ではまだ発売されていない車種だからである。
正式発表は9月中旬といわれ、いまはそこへ向けてのカウントダウン状態。
一方、海外ではすでに発売されている地域もあり、日本デビューを待ち望む声も少なくない。
カローラ・クロスに関するウェブ記事が軒並み良好なアクセスを稼いでいることが、その何よりの証だ。
カローラ・クロスは、ひとことでいえば、「カローラ」の名を冠したSUV。そして「カローラの歴史においてはじめてのSUV」である。
プラットフォームはカローラをはじめ「プリウス」などとも同じタイプを活用し、全長4460mm×全幅1825mm(タイ仕様の数値で国内向けは変更される可能性もある)という車体サイズは「C-HR以上、RAV4未満」だ。
さて、そんなカローラ・クロス。トヨタ内でのカニバリゼーションはないのか?
カニバリゼーションとは、直訳すると「共食い」。同じメーカーの商品同士がぶつかって、客を奪い合ってしまう現象のことだ。
たとえば、スズキでいえば「かつてはワゴンRがたくさん売れたが、スペーシアやハスラーが登場したことで販売台数が減ってしまった」といった状況があてはまる。
では、カローラ・クロスがトヨタのSUVラインナップに加わることでどんな変化が起きるのか?
SUVが続々登場 刻みすぎ?
実は昨今、トヨタのラインナップに大きな変化が起きている。
セダンの車種が激減しているのだ。
2021年9月現在、トヨタの公式ウェブサイトに掲載されている日本向けに展開しているセダンはカローラのほか「カローラ・アクシオ」、「カムリ」、「クラウン」、「センチュリー」、「プリウス」、「プリウスPHV」そして「ミライ」の8モデル。
しかし、そのうちセンチュリーとミライは一般向けとは言い難いし、プリウスとプリウスPHVに関してはハッチバックなので「セダン」に分類していいか悩ましい。
それらを除外すれば、実質的にトヨタのセダンといえるのは、カローラ、カローラ・アクシオ、カムリ、クラウンの4車種だ。
「マークX」や「プレミオ/アリオン」はもう存在しないのである。
一方のSUVは「ライズ」、「ヤリス・クロス」、「C-HR」、「RAV4」、「RAV4 PHV」、「ハリアー」、「ランドクルーザー・プラド」「ランドクルーザー」そして「ハイラックス」の9車種が公式ウェブ上でSUVに分類されている。
RAV4とRAV4 PHVは同じモデルとしてカウントし、ハイラックスはピックアップなので除外しても、7車種となる。
そして、ここにカローラ・クロスが加わることで、8車種となるのだ。
セダンが縮小するかわりに、SUVの勢いが拡大。そしてサイズを刻んで多くのユーザーにすきなく対応する。
そんなラインナップの変化はもちろん、世の中の嗜好を反映したものである。
ここまで刻んだ展開については、あるメーカーの商品企画担当者が「トヨタほどの規模があるがゆえ。ウチではとても真似できない」と漏らすほどだ。
ただ、どう考えても、カニバリゼーションが起きないはずがない。
カローラ・クロス登場で共食い?
では、そんなトヨタのSUVラインナップを車体サイズごとに並べて整理してみよう。
ライズ:全長3995mm×全幅1695mm
ヤリスクロス:全長4180mm×全幅1765mm
C-HR:全長4385mm×全幅1795mm
カローラ・クロス:全長4460mm×全幅1825mm(タイ仕様)
RAV4:全長4600mm×全幅1855mm
ハリアー:全長4740mm×全幅1855mm
ランドクルーザー・プラド:全長4825mm×全幅1885mm
ランドクルーザー:全長4950mm×全幅1980mm
こうして各車のサイズを比べてみてわかるのは、サイズが綿密に刻まれていること。
「ライズが小さければヤリス・クロスがある」し、「RAV4が大きすぎるならカローラ・クロスがある」といった具合だ。
徹底した戦略のうえに、各車のサイズが決められている万全の布陣だということが読み取れる。
ただ、カローラ・クロスの登場がカニバリゼーションを誘発しないかといえば、必ずしもそうとはいえない。
上をみるとRAV4のサイズが大きめなので「RAV4だと大きすぎるからカローラ・クロスにしよう」という人は発生するだろうし、下をみると「C-HRだと荷室や後席が狭いのでひとまわり大きなカローラ・クロスを選ぼう」という人が多くなることは容易に予想できる。
とくに深刻となりそうなのは、後者だ。
C-HR/ヤリス・クロスが餌食に?
C-HRの全長や全幅はカローラ・クロスに対してわずかに小さいだけだが、実用性は大きく異なる。
クーペライクなスタイルを重視した個性派クロスオーバーSUVで室内を広くしようというパッケージングではないので、実用性重視のカローラ・クロスに比べると使い勝手が大きく劣る。
カローラ・クロスは、後席は足元こそ同様だが頭上のゆとりや開放感はC-HRの比ではない。
さらに荷室容量も487LとC-HRの318Lに対して大幅に広いのだ。
実用性を求めるユーザーの多くは、カローラ・クロスに流れるだろう。
そのうえ、価格も悩ましい。
C-HRの価格は238万2000円からだが、カローラ・クロスのボトムグレードは200万円を切るとうわさされている。
パッケージングと価格の関係から、この先、カローラ・クロスではなくC-HRを選ぶのは「好事家」を中心とした少数派となりそうだ。
ただ、約5年前にデビューしたC-HRは、そろそろ後方支援にまわる時期に差し掛かったともいえる。
SUVの販売ナンバー1に輝くなどすでに多大な実績を残したので、今後はカローラ・クロスのサポート役にまわるタイミングなのかもしれない。
価格での「被り」を考えると、実はヤリス・クロスにとってもカローラ・クロスはライバルとなる可能性がある。
カローラ・クロスのベーシックグレードの価格は200万円を切るようだが、ヤリスのベーシックグレード「X Bパッケージ」の価格は179万8000円と約20万円しか変わらない。
しかも、同グレードはカローラ・クロスのボトムグレードには標準搭載される衝突被害軽減ブレーキなど先進安全機能が備わらないので、実質的な価格差は10万円程度となる。
ヤリス・クロスは車体の小ささが魅力なので、実用面を理由にカローラ・クロスへ購入対象を変更する人は少ないかもしれない。
しかし、「10万円差」といわれたら、悩む人も少なくないだろう。
ただし考え方としては、必ずしもカニバリゼーションは避けなくてはいけないわけではなく、「1+1=2」とはならなくても、「1+1=1.5」となりトヨタ全体のシェアを拡大できれば成功ともいえる。
だから「トヨタ全体」という広い視点から見れば、カローラ・クロスの人気はトヨタのSUVラインナップを盛り上げるありがたい存在となるに違いない。
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みんなのコメント
ヤリスクロス
C-HR
微妙にキャラや価格帯も違うので消費者にとっては選択肢があるので良いと思いますよ。