もくじ
ー 最近のクルマは個性が薄いのか?
ー ケーターハム620S
ー マツダRX-7(FD)
ー アルファ・ロメオGTV V6
ー モーガン3ホイラー
最近のクルマは個性が薄いのか?
先日、英国編集部へ、読者から次のような意見が届いた。
「現代のクルマは客観的にみれば、10~15年前のクルマと比較すれば、性能は優れています。しかし、効率と性能を求め過ぎるあまり、個性というものが犠牲になっているのではないでしょうか。自動車メーカー各社が独自に創意工夫や妥協をしていた時代は、ときにはクルマの欠点でもありましたが、個性にもなっていました。このような工夫や妥協はもはや必要ないことですが、結果として個性は薄まってしまっているように思います。進化の代償と諦めるべきなのでしょうか」
この投げかけに対して、われわれは少し考察をしてみることにした。
個性とは何だろう。効率を求めた現代のクルマは、もはや心の底から愛車と呼べるような存在ではないのだろうか。
AUTOCAR英国編集部の腕利きモータージャーナリスト9名から、「個性」をキーワードに、クルマに対する見解を聞いてみたいと思う。
ケーターハム620S
アンドリュー・フランケル
クルマの持つ個性というのは、様々な形で表層化すると思うけれど、ぼくたちの感情や感覚を刺激してくれる、という点で共通している。視覚的に素晴らしいスタイリングだとか、聴覚に響くエンジンノイズだとか。あるいは、心地よい香りを感じることすらある。古いアストン マーティンなどが持つ、幸福感を与えてくれる独特の香りに勝るクルマは、かなり少ないと思う。
どんなクルマにも、上記のような個性は備えることができる。しかし、現代の自動車メーカーは、クルマを運転することとドライバーとの距離を取ろうとする傾向が高く、真の意味でのクルマの個性は、途絶える寸前にさえ思う。それは、お金で買えるというものでもない。
安価な大衆車でもありながら、わたしの自動車の所有歴でも最も誇れる1台が、1958年式のシトロエン2CV。クルマとの距離の近さも特徴的だったし、補強用リブの入ったボンネットなどは、現代のスーパーカーがよってかかっても、勝てない個性のひとつだった。何か物事がうまくいかなくなると、2CVを運転した。不思議と、辛い気持ちが和らいだのだ。
クルマとの関係性が濃く、運転に必要な操作が多いほど、個性もより強く感じられるように思う。それゆえに、英国製の小さなスポーツカー以上の優れた個性を持ったクルマは、現代には存在しないと考えている。
純粋にプロダクトとしての完成度では、アリエル・アトムより劣っていても、ケーターハムには、コリン・チャップマンから受け継がれた歴史的な特徴も備わっている。わたしが個性という視点だけで現代のクルマを1台選ぶなら、ケーターハム620Sということになるだろう。
マツダRX-7(FD)
マット・プライヤー
ぼくは、正直、コーヒーテーブルのような家具以上の個性をクルマが持つことができるのか、良くわからない。それに、人間以上にクルマを個性豊かなものとして表現することには抵抗がある。しかし、個性を感じる、その気持ち自体は理解できる。クルマが本当に個性を持っているのなら、退屈なことも個性といえる。
「プライヤーってどんなひと?」「彼は退屈なひとさ」ぼくはそんな人間だ。
さて、1998年のこと、金曜日の夜にロンドン北部のロンドンコロニーからワトフォードまで、トヨタ・アベンシスを運転した時のことをハッキリ覚えている。それは、当時、自分が経験した中で最もスムーズでリラックスしたドライブだった。忘れられないほど、深い記憶に刻まれたのだ。
しかし、1990年代の後半、トヨタ・アベンシスは個性を売りにしていただろうか。恐らく違う。個性とは、決して欠点のことではないと思う。もし欠点がクルマの個性なら、ぼくが今まで運転した中では、タタ・サファリがもっとも個性的なクルマになってしまう。
つまりクルマの個性とは、普通とは違う、もしかすると平均よりは悪いか、あるいは良いか、親しみを感じてしまうような特徴をいうのだと思う。
そうなれば、マツダRX-8のエンジン。アリエル・ノマドの乗り心地。クライスラーPTクルーザーのスタイリングと風変わりなシフトノブ。アストン マーティンV12ヴァンテージのハンドリングとステアリングフィール。BMW i3の、パワー感を除くすべて。
では、過去20年間で、ぼくが欲しいと思う、最も個性的なクルマは何かと聞かれると、即答はできない。しかし、複数台選ぶなら、アストン マーティンV12ヴァンテージSに、ホンダNSXタイプR、アルファ・ロメオSZ。これに、ホールデン・エフィジーが加われば、最も個性的なクルマ5台を揃えたコレクションが完成する。
もちろん、ぼくにはすべてを手に入れることはできないから諦めて、1990年代のマツダRX-7が、究極の選択肢となるだろうか。このクルマで充分かな。
アルファ・ロメオGTV V6
ダン・プロッサー
クルマの個性は、クルマの弱点から生まれる、という意見をしばしば聞くけれど、それは少し違うと思う。現代のクルマの場合は、正常に機能する中から個性を感じるように思う。濃密なサウンド、優れたステアリングフィール、興奮するようなパワーに素晴らしいシャシーバランス。これらは豊かな個性を生み出している。
その反面、信頼性の低さや、不自然なステアリングホイールのポジション、不格好なシフトノブといった欠点は、単純にクルマを乗りにくくし、個性を打ち消してしまうのではないだろうか。個人的な好き嫌いはあるとは思うけれど。
しかし時間が経つと、奇妙な変化も起きる。クルマが古くなるにつれ、ライバルモデルとの批判的な比較ではなく、自分がどう感じるのか、という視点で評価するようになってくる。だから、弱点は徐々に目立たなくなっていく。
アスリートに対しても同じことがいえる。例えば、旧西ドイツのテニスプレーヤー、ボリス・ベッカーは今でこそ偉大な選手と讃えられるが、彼が現役の頃の評価は、決して高くなかった。
クルマが古くなるにつれ、機能する部分は受け入れて楽しむ反面、うまく機能しない部分は、見てみないふりをする、ということだ。わたしがアルファ・ロメオGTV V6を3000ポンド(43万円)で買ったのも、そんな理由がある。
ステアリングホイールのポジションはおかしいし、ハンドリングも秀でたものではない。しかし、わたしの目にはスタイリングは美しく映っているし、V6エンジンも素晴らしい。確かに欠点もあるけれど、それは個性とは感じていない。
むしろ、クルマが古くなればなるほど、欠点はクルマの個性の邪魔をしなくなるのではないか、と思うのだ。
モーガン3ホイラー
マット・ソーンダース
誰もが認めるであろう、自動車界での個性のチャンピオンがいる。モーガン3ホイラーだ。日常的な走行には困ることがなく、常識的な速度域で鮮烈なドライビングの楽しさを味わうことができる。この2点は、現代においても、クルマを個性付ける上で重要な要素だと思う。
また、数は少ないが、小さなライトウェイト・スポーツカーの中にも、細部まで手の混んだ作りで、ただシートに座ってみたいと思わせるクルマもある。夏の夕方、自然豊かな海岸線を、飲み物片手にドライブするなど、最高だろう。個性には、この優れた面が必然的に重要な意味を持ってくる。そして、クルマは停止状態でも、個性を見るものに伝える必要がある。
でも残念ながら、ここ1年の内、ほとんどの日は、モーガン3ホイラーを運転することができなかった。太陽が出ていても、クルマの中では快適に過ごせないからで、先述と少し矛盾してしまっていているけれど。
実用性と利便性の高さという言葉は、わたしのクルマの願望リストには含まれていない前提で、わたしは次の3台をガレージのコレクショとして揃えたいと思っている。
まず1台目はBMW i3。運転自体も非常に楽しく、市街地の走行に最適で、電気自動車が個性的になり得る、と体現しているモデルだから。
次はアルピーヌA110。モーガンに次ぐ、素晴らしいドライビングを提供してくれ、しかも普通に運転することができるから。
最後は、子供心をくすぐる、オールドスクールな魅力に溢れた、アストン マーティン・ラピードS。最後の自然吸気V12エンジンを搭載したアストンだ。まさに宝物のような仕上がりで、周りに流されることのない存在だと思う。
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