富士山麓の静岡県裾野市で、トヨタ自動車東日本の東富士工場が閉鎖された跡地に建設される『ウーブンシティ』。その鍬入れ式を、2021年2月23日に行う予定と発表された。
自動運転サービスカーの「e-Palette(eパレット)」や、高度運転支援技術を備えた乗用車、また電動車いすや立ち乗り式移動体の「歩行領域EV」などが、ウーブンシティ内とその周辺の移動手段として活躍するという環境を作り出すという壮大な計画だが、トヨタはここで何を目指すのだろうか?
その計画から技術の進歩が期待されるが、壮大な計画なだけにそんなにうまくいくのか? という不安もある。今回は、そんな未来都市『ウーブンシティ』への期待と課題について語っていきたい。
文/国沢光宏
写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】日本一安全な街へ!? ウーブンシティ計画の一端を写真で確認!
■次世代都市は何を生み出す!? トヨタが描くその中身
次世代都市構想のベースとして企画されたトヨタの『ウーブンシティ』が2021年2月着工となる。
計画では175エーカー(約71万平方メートル)の土地に、2000人程度が暮らすところからスタートする
ネーミング(語感と言い換えてもよい)という点で日本人からすれば馴染みにくいけれど、内容を見ると非常に興味深い。日本の法規で認可されていないことは山ほどあります。その中の公序良俗に反しない事項なら取り入れましょう、ということ。
具体的に書くと「歩くと遠いけれどクルマやバイクを使うほどじゃない距離」を移動しようとすれば、電動キックスケーターや、トヨタが前回の東京モーターショーで試乗会を行った「立ち乗りEV」みたいな小型低速の電動モビリティが便利。今だって自分の敷地内や工場の構内などで使うには問題ないものの、公道じゃ乗れる場所なし!
ウーブンシティという、いわば工場の敷地内のような場所であれば、便利に使えるという寸法。そのほか、工場の敷地内を見ると無人走行車だってとっくに実用化されている。『e-Palette(eパレット)』のようなミニバスも公道で運用しようとしたらいつになるかわからないけれど、ウーブンシティの中のモビリティとしてならすぐ具現化できるというワケです。
「ラストワンマイル」は、『歩行領域EV』で楽々移動 ウーブンシティなら、普通車に恐怖しながら走らずに済む
『e-Palette』は街の幹線道路を走り、比較的長距離 / 高速な移動を担う
エネルギー問題の対応も可能。今や自動車工場の大半に太陽光発電や自家発電機が導入されている。いわゆるコジェネ(コージェネレーションの略)のため、お湯まで有効利用してます。その気になればウーブンシティの中だけでエネルギーの自給自足を目指せるから素晴らしい。カーボンフリー実現に向けてもさまざまな規制に足を引っ張られることがなく、一番の近道となりそう。
■一般社会では難しい「安全」に関する課題も解決できる可能性を持つ
これから社会問題になる高齢者の増加への対応は、一般社会だと十分なケアができない。認知症になってしまうと赤信号すら認知できなくなる。かといってクルマを奪ったら日々の生活に苦労します。それじゃ、とばかり高齢者が安いコストで安心して移動できるようなモビリティを実現しようとした場合、さまざまな制限があって難しい。
個人的には「安全」という環境を作れることが最も素晴らしいと考える。ウーブンシティの中に保育園や幼稚園を作ったとしよう。当然ながら外部から無許可の車両や人は入ってこない。小さい子供が歩いている真横をぶっ飛ばすトラックなど100%ありえない環境になります。交通事故ゼロの社会を作れるのだから素晴らしい!
この街の道は3種に分類され、高速なモビリティ用の道 /歩行者と低速なパーソナルモビリティが共存する道 /歩行者のみの道 が存在するという 領域を分ける事で安全性を向上、さらに住環境の静音化や自動運転などの技術的な実証実験精度を上げる狙いもある
もちろん変質者や強盗の類いだっていない。そんなことしたらすぐ捕まります。参考までに書いておくと、アメリカやブラジル、東南アジアでは「ゲーテッドコミュニティ」という塀で囲んだ住宅地が当たり前になっている。ゲートに警備員を配し、住民と許可を得た人しか入れない。この中は治安の悪い国と思えないほど快適。
今後、我が国もさまざまなことを考えなければならなくなるだろう。いわゆる2極化というもの。
治安の悪い地域だって出てくるに違いない。幸い私の家の近隣はよい環境にあるけれど、それでも監視カメラを付けているし、空き巣や泥棒を想定した防犯対応もしている。クルマのカギだってすべて金属ケースに入れてます。さらに治安は悪化するかもしれない。
もしウーブンシティが成功し、トヨタ得意のカンバン方式や、総合的なエネルギー運用などの導入により生活インフラに必要なコストを下げられるのなら、こういったゲーテッドコミュニティをいろんな場所に作ったらいいと思う。自分の”街”のゲートをくぐったら、自分の家と同じようにリラックスできる。住みたい人は多いだろう。
ウーブンシティの各住宅では、冷蔵庫を自動で補充したり、ゴミを捨てたり、あるいは健康状態を自動でチェックしたりと、日々の生活を支援する技術の実証実験が行われる
中には「カメラなどで記録を残されるからイヤだ」という人も出てくることだろう。私はそういった考え方をする人って悪いことをしようとしている芽を持っていると考えます。家の中以外の行動なら、誰に見られたって問題なし! 交通違反以外の犯罪行為、普通の人ならしない。むしろ酔っ払って寝込んでも助けてもらえる(笑)。
学生時代、警察の居ない沖縄の小さい離島で夏を過ごしたけれど、その間、何の犯罪もありませんでした! もちろんカギを掛けている家なんかなし。クルマだってキー付けっぱなし。皆さん自分で島や社会のルールを守っている。悪ガキもいるけれど、誰かにダメージを与えるような犯罪行為をしたら必ず怒られる。快適でした。
ウーブンシティの「ウーブン」とは直訳すると「繊維の織り方」。150m方眼の街作りやトヨタのベースになった織機にも関係しているのかもしれません。
唯一の「う~ん」はトヨタの人ばかりになることか? できれば外部の人も住んでもらったらいいと思う。私も近隣にウーブンシティのようなゲーテッドコミュニティできたら住んでみたい。
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