現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【試乗】初代メルセデス・ベンツCLSはフェイスリフトで独創性をさらに高めていた【10年ひと昔の新車】

ここから本文です

【試乗】初代メルセデス・ベンツCLSはフェイスリフトで独創性をさらに高めていた【10年ひと昔の新車】

掲載 更新 2
【試乗】初代メルセデス・ベンツCLSはフェイスリフトで独創性をさらに高めていた【10年ひと昔の新車】

2004年に衝撃的なデビューを飾った初代メルセデス・ベンツCLSが、2008年には初めての大幅なフェイスリフトを受けて日本に上陸している。Motor Magazine誌ではそのリフレッシュされたCLS350を早速フルテスト。今回はその時の模様をを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年11月号より)

CLSの流麗なフォルムは4ドアクーペと呼ぶに相応しい
自社ラインアップには存在しなかったカテゴリーへの初参入となるブランニューモデルとしてデビューを果たしてから、すでに丸4年。しかし、「誰もが振り向くメルセデス」としてのこのモデルが放つ独特のオーラは、現在でも決して薄れてはいない。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

CLSが備える他の4ドアメルセデスには真似のできないそんなパフォーマンスというのは、まずはその独創的、かつ個性的なエクステリアデザインによって実現されていることは言うまでもない。「このルックスでなければCLSの存在意義は失われてしまう」、そう表現ができそうなスタイリングこそが、CLS最大のセールスポイントであるというわけだ。

「前後に流線型」と比喩をしても良さそうな翼断面調プロポーションに、4ドアモデルとしては有り得ないほどに小さなサイドのウインドウグラフィック。これがまず、CLSというモデルならではの独特の見栄えを形成する。4.9mという全長には不釣合いなほどコンパクトにまとめられたワンモーションのルーフラインが作り出すキャビン部分は、4枚ドアを備えつつもこのモデルがありきたりのセダンではなく、むしろ「4ドアクーペ」と呼ぶに相応しいパッケージングの持ち主であることを見る人に強く印象付ける。

もはや到底「3ボックス」などとは呼べそうにないこうしたフォルムは、しかし大いなる実用性のトレードオフとの末に成り立っていることもまた間違いない。初めてこのクルマの後席に乗り込もうとした9割がたの人は、その際に強く前傾したCピラーへと頭部をぶつけることになりそうだし、何とか乗り込んだとしてもフロント部分からシートクッションへと連続するフロアコンソールのため、反対寄りのポジションへと横移動をすることも不可能だ。高いベルトラインと前出の強く前傾をしたCピラー形状のために、4ドア車の後席としては例外的なまでに閉塞感が強いこともこのクルマならではの「特徴」だ。

もっとも、それゆえにスモークガラスなどを用いなくても、車外からの視線を程良く遮断して高いプライベート性が保てるという点を歓迎するゲストもいるかも知れないが。

後ろ下がりのラインを描くトランクリッドは、それだけトランクルーム内の高さを削り取ってしまう理屈。また、こうしたローデッキ処理によるデザインが空力性能的には不利に働くというのも、デザイン界では常識だ。自分は後席には乗らないし、大きな荷物など積むことはないという人でも、やはり実用性とのトレードオフの影響から逃れることはできない。

ドライビングポジションを採ると妙な圧迫感を受けるのは、他車では経験がないほど顔面近くにルームミラーが迫るため。急傾斜で迫る低いウインドシールド上端に据え付けられたルームミラーがかくも近くに位置する点にも、このモデルの特異なパッケージングを教えられることになるのだ。

しかしながら、そうした様々なハンディキャップは先刻承知の上。それでも自分は「ファンクショナルなデザインよりもファッショナブルなデザインを好む」という人のためのメルセデスが、このCLSというモデルなのだ。そんなCLSにも、今年の5月に大幅改良が施された。グレー塗装が施された2本ルーバーのフロントグリルや新デザインのアルミホイール、「アローデザイン」を備えたドアミラーの採用などが、そうしたリファインの主なメニュー。ホワイト基調でコントラストが明快なメーターパネルや新デザインのステアリングホイールなども同様の識別ポイントになる。ミュージックサーバー機能付きのHDD式ナビゲーションシステムや12セグ地上デジタル放送対応テレビから成る「COMANDシステム」の採用によるマルチメディア機能の充実も、やはり最新モデルの売り物だ。

ハンドルから濃密に伝わるメルセデスらしい安心感
今回テストドライブを行ったのは、そんなこのモデルの個性をさらに引き立てるべく用意された「AMGスポーツパッケージ」をオプション装着のCLS350。ベース車に対する相違点は、AMGスタイリングパッケージと呼ばれるエアロパーツ類の取り付けやブルーティンテッドガラス、クロームエキゾーストパイプ採用などのドレスアップ項目に加え、エアサスペンションやAMG5本スポーク19インチアルミホイールの採用など直接走りの質感にかかわる部分など、かなり多岐に及ぶ。

各部素材を徹底して吟味し、そのデザインもメルセデスが本来得意とするビジネスライクなものへと寄り過ぎないようにとの配慮が感じられるインテリアの仕上がりも、エクステリアデザインほどではないにせよ、かつてのメルセデスのユーザーとは異なる層を獲得するための重要な原動力足り得るだろう。

ただし、ナビゲーションモニターが比較的下方に位置することや、同じ「COMANDシステム」でもその操作系がコンソール上のダイヤル方式となっていない点などに、そろそろ少々デザインの古さを感じさせられるのもまた事実ではあるのだが。

すでに述べたように、とくに後席へのアクセス性に関しては、とくに頭部の運びの点で4ドアモデルとしては相当なハンディキャップを抱えるのは事実。が、ボディサイズが大柄なこともあり居住スペースそのものは、大人4人にとって不満のない水準を確保しているのもこのモデルだ。それにしても、各部のデザインといい、色使いといい、とてもメルセデスに乗っているとは思わせないのがこのモデルでの居住感。すなわち、すでにこうしたテイストを演じているという時点で、既存のラインアップが持たないニッチなマーケットを開拓しようというCLSの狙いは、大いに成功していると言っても良いだろう。

2855mmという同一値のホイールベースも示すように、CLSがEクラスの骨格をベースに構築されているのはよく知られている事柄。そして、走りの感覚の点でも良くも悪くもそんな「出典」のイメージを強く受け継いでいるのがこのモデルでもある。

基本的な走りのしっかり感、信頼感が高いのは、メルセデス各車に共通の美点。とくに、フロントタイヤが路面とコンタクトする感触がステアリングホイールを通じて濃密に伝えられてくるのは、前輪が駆動力の伝達から解放されたFRレイアウトを持つクルマならではのメリットでもある。

一方で、微低速時に大舵角操作を行った後の「戻りの鈍さ」は、Eクラスの、というよりもメルセデス・ベンツ各車に共通の気になるポイントだ。もしもこれが日本車であったならば不評噴出となるはずの、こうしたポイントが長年にわたって「放置」されているのもまた、メルセデス・ベンツというブランド力の高さなればこそということだろうか。

コンフォート、スポーツ1、スポーツ2と3つの設定モードを持つ「AIRマチック DCサスペンション」は、後者になればなるほどサスストロークのダンピングが増す感はあるものの、いずれのポジションを選択してもその乗り味に極端な差は生まれない。サスペンションストローク初期の動きがマイルドなのはエアサスペンションならではと思えるものの、路面の凹凸を拾って時に突き上げ感が強かったのはフロント255/35、リア285/30と、エンジンパワーや車両重量からすると少々オーバーサイズ気味とも思える19インチシューズの影響も少なからずあるだろう。

轍など、路面外乱に対しては良い意味で「鈍感」なモデルが多いメルセデス車だが、このモデルではそうしたシューズの影響もあってか例外的にワンダリング現象がやや気になった。と同時に、50~60km/hといったタウンスピードを中心にタイヤ空洞音が目立ったのもこのモデル。走り、そしてコンフォート性の両面から、このシューズの選択には少々疑問が残る。

ボディに入った振動のダンピングにやや時間がかかり、結果としてややウエット感をともなう乗り味を示していたのは、エアサスペンションとボディ特性とのマッチングの問題でもありそう。「スポーツパッケージ」の名は与えられたもののコンベンショナルサスペンション+18インチシューズというオリジナルの仕様に対して、見た目はともかく走りのテイストで正直なところ格段にスポーティさが増したとは納得し難いのが今回テストの仕様だ。

一方、動力性能に関しては、そのデビュー当初から素性の良さが印象的だった3.5Lの4バルブDOHCユニットの実力の高さを、改めて教えられたという印象が強い。

1.8トンに近い重量に272psという最高出力ゆえ、その絶対加速力は格別に強力というわけではない。しかし、エンジンから効率良くパワーを引き出す7速ATの働きもあって、常用シーンで物足りなさを感じることはまったくなかった。

低回転域からしっかりとトルクを発してくれるこの3.5Lエンジンは、しかしいざ上まで回してみると意外なほどに高回転域も得意とするユニットであることに気付く。3800rpm付近から音質はよりスポーティに変わり、そのままパワフルに6400rpmのレッドラインを目指す。ただし、パドル操作に対する変速のレスポンスはさほど素早いとは言えないし、またAMGモデルのようなダウンシフトごとのプリッピング機能も備えていない。そんなわけで、敢えてトランスミッションのマニュアルモードを選択してまで走ろうとは思わないのもこのモデルではある。

いずれにしても、こうして3.5Lエンジンを搭載したモデルが実現させる動力性能を知ってしまうと、「V型8気筒エンジンを搭載」という記号性を必要としないのならば、敢えて5.5Lエンジンを積むCLS550など必要ないのではないかとも思えてしまう。その流麗なルックスこそがCLSの最大の価値、と考えれば、そうした思いはいよいよ強くなってくるものだ。(文:河村康彦/写真:村西一海)

メルセデス・ベンツCLS350 主要諸元
●全長×全幅×全高:4915×1875×1430mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:1740kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3497cc
●最高出力:200kW(272ps)/6000rpm
●最大トルク:350Nm/2400-5000rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・80L
●10・15モード燃費:8.5km/L
●タイヤサイズ:245/40R18
●車両価格(税込):898万円(2008年当時)

[ アルバム : メルセデス・ベンツCLS350 はオリジナルサイトでご覧ください ]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

斬新「日本の“フェラーリ”」に大反響! 「約700馬力のV8スゴイ」「日本なのに左ハンしかないんかい」「めちゃ高ッ」の声! 同じクルマが存在しない「J50」がスゴイ!
斬新「日本の“フェラーリ”」に大反響! 「約700馬力のV8スゴイ」「日本なのに左ハンしかないんかい」「めちゃ高ッ」の声! 同じクルマが存在しない「J50」がスゴイ!
くるまのニュース
本拠地の欧州で「メルセデス・ベンツのタクシー仕様」シェア急降下! なぜ? 「“ベンツのタクシー”に乗れたらラッキー」な時代が到来するのか
本拠地の欧州で「メルセデス・ベンツのタクシー仕様」シェア急降下! なぜ? 「“ベンツのタクシー”に乗れたらラッキー」な時代が到来するのか
VAGUE
「銀の皿」に「レジ横のガム&タバコ販売」に1000円以下のメニューと「ザ昭和」がたまらない! トラック野郎を癒し続ける「采女食堂」はぜひ立ち寄るべし【懐かしのドライブイン探訪その5】
「銀の皿」に「レジ横のガム&タバコ販売」に1000円以下のメニューと「ザ昭和」がたまらない! トラック野郎を癒し続ける「采女食堂」はぜひ立ち寄るべし【懐かしのドライブイン探訪その5】
WEB CARTOP
ラッセルが今季3度目のPP獲得。ガスリーと角田裕毅がQ3で健闘見せる【予選レポート/F1第22戦】
ラッセルが今季3度目のPP獲得。ガスリーと角田裕毅がQ3で健闘見せる【予選レポート/F1第22戦】
AUTOSPORT web
F1ラスベガスGPで追い上げ2位のハミルトン「予選がしっかりできれいれば、楽勝だったろうに」
F1ラスベガスGPで追い上げ2位のハミルトン「予選がしっかりできれいれば、楽勝だったろうに」
motorsport.com 日本版
中央道「長大トンネル」の手前にスマートIC開設へ 中山道の観光名所もすぐ近く!
中央道「長大トンネル」の手前にスマートIC開設へ 中山道の観光名所もすぐ近く!
乗りものニュース
ペレス、チームメイトのフェルスタッペンとは対照的に10位が精一杯「レッドブルは最高のチーム。来年は良いマシンが作れるはず」|ラスベガスGP
ペレス、チームメイトのフェルスタッペンとは対照的に10位が精一杯「レッドブルは最高のチーム。来年は良いマシンが作れるはず」|ラスベガスGP
motorsport.com 日本版
「ん、ここ工事してなくない?」 高速道路の車線規制“ムダに長い”場合がある理由とは?
「ん、ここ工事してなくない?」 高速道路の車線規制“ムダに長い”場合がある理由とは?
乗りものニュース
日本専用の新型「“MR”スポーツカー」初公開! 旧車デザイン×「ネットゥーノ」エンジン採用! 600馬力超えの「チェロSE」登場
日本専用の新型「“MR”スポーツカー」初公開! 旧車デザイン×「ネットゥーノ」エンジン採用! 600馬力超えの「チェロSE」登場
くるまのニュース
ピエール・ガスリー、予選3番手から無念マシントラブル脱落に「顔面平手打ちされたみたい」残り2戦にポテンシャルは確信|F1ラスベガスGP
ピエール・ガスリー、予選3番手から無念マシントラブル脱落に「顔面平手打ちされたみたい」残り2戦にポテンシャルは確信|F1ラスベガスGP
motorsport.com 日本版
モーターマガジンMovie 週間視聴回数BEST5 プラス1(2024年11月17日~11月23日)
モーターマガジンMovie 週間視聴回数BEST5 プラス1(2024年11月17日~11月23日)
Webモーターマガジン
F1マシンを脇に歌舞伎……来春鈴鹿のグリッドでも! 日本GPアンバサダーに就任した市川團十郎「息子と歌舞伎の扮装で踊る計画を」
F1マシンを脇に歌舞伎……来春鈴鹿のグリッドでも! 日本GPアンバサダーに就任した市川團十郎「息子と歌舞伎の扮装で踊る計画を」
motorsport.com 日本版
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
運営ブチギレ!? 一般車が「検問突破」何があった? 国際イベントでありえない"蛮行"発生! ラリージャパン3日目の出来事とは
くるまのニュース
遂に“冷却機能”も装備! ハイグレード・ワイヤレス充電スマホホルダーの注目作が登場【特選カーアクセサリー名鑑】
遂に“冷却機能”も装備! ハイグレード・ワイヤレス充電スマホホルダーの注目作が登場【特選カーアクセサリー名鑑】
レスポンス
“やっちまった”タナク、僚友ヌービルにWRCタイトル明け渡す痛恨クラッシュは「マジで大惨事」
“やっちまった”タナク、僚友ヌービルにWRCタイトル明け渡す痛恨クラッシュは「マジで大惨事」
motorsport.com 日本版
スバル新型「すごいフォレスター」登場に反響あり! 水平対向エンジン×本格ハイブリッド搭載に「楽しみ!」の声も! 日本発売は一体いつ?
スバル新型「すごいフォレスター」登場に反響あり! 水平対向エンジン×本格ハイブリッド搭載に「楽しみ!」の声も! 日本発売は一体いつ?
くるまのニュース
「えっ、4つのリングのマークじゃない!?」 アウディが新ブランドを立ち上げ なぜ“4リングス”を使わない? 世界最大市場での戦略とは
「えっ、4つのリングのマークじゃない!?」 アウディが新ブランドを立ち上げ なぜ“4リングス”を使わない? 世界最大市場での戦略とは
VAGUE
「山賊もやし炒め定食」はパンチの効いた味濃いめ! 東関道「湾岸幕張PA」
「山賊もやし炒め定食」はパンチの効いた味濃いめ! 東関道「湾岸幕張PA」
バイクのニュース

みんなのコメント

2件
  • 確かに登場したときは斬新なスタイリングだったね。
    若い兄ちゃんたちが乗ってイメージ。
  • サイドとケツのラインが美しかった。4人乗りと割り切った後部座席は快適だった。横幅1875は、当時のSクラス(W221)よりも20mm広かったけど、ほとんどが張り出したフェンダーデザインによるもので、キャビンはEクラス(W211)のままだった。
    もう次はないよ、という意味を込めてW219としたんだろうけど、売れすぎちゃって後継モデルがW218に逆戻りしたのも斬新だった。
    いいクルマだった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1017.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

35.0914.5万円

中古車を検索
CLSクラス (クーペ)の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1017.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

35.0914.5万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村