アルピーヌ・エンデュランス・チームからWEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦しているニコラ・ラピエールは、チームのマネジメント職に就くことも視野に、今年末でドライバーを引退することを検討していると明らかにした。
このフランス人ドライバーは、2007年にル・マン24時間レースに初出場し、WECには2012年のシリーズ発足以来参戦している。2012年から2014年の3シーズン、そして2017年のル・マンを含む2レースでは、トヨタから最高峰クラスへと参戦した経験を持つ。
WEC富士でアルピーヌがドライバーを変更。35号車に三度ジュール・グーノンを起用へ
アルピーヌとそのパートナーチームであるシグナテックとのつながりは、2016年にLMP2で初めて同チームへと加わり、その年の世界タイトルを獲得、LMP2でのル・マン4勝のうち、2勝目を挙げた時まで遡る。
ラピエールは、2021年にはオレカのLMP1マシンをベースにしたアルピーヌA480を駆ってハイパーカークラスへと参戦。さらに、今年デビューを果たした新型LMDh車両『アルピーヌA424』の開発も担ってきた。
しかし、40歳を迎えたラピエールは、ル・マンでの成功に加え、トップクラスでの8回の優勝を含む17回のWEC優勝、2018年のセブリング12時間レースでの優勝、A1グランプリでのタイトル獲得など、数々の栄光を手にしたキャリアに終止符を打つべきかどうか、現在検討中だ。
「僕にとって、今年レースに出場することは本当に重要だった。最初からこのプロジェクトに参加していたので、初年度はそこにいたかったのだ」とラピエールはSportscar365に語った。
「だけど40歳になったいま、キャリアの次の章を探している。クルマの外での仕事も楽しいので、検討中なんだ」
「いま、このチャンピオンシップはとても素晴らしく、多くのメーカーでドライブするのはクールだ。トップクラスで何年も過ごしたけど、当時はこんな状況ではなかったし、ドライバーとして本当に楽しんでいるよ。だから簡単な決断ではない。考えているんだ」
ラピエールはすでに、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズのチームであるクール・レーシングのチームマネジメントに関わっており、2021年初頭にはチーム代表に就任した。このクールでの経験が、早い段階でチームマネジメントへのフルタイムの転向を検討するきっかけになったと、ラピエールは認めている。
「チーム(クール・レーシング)とは本当にうまくいっていて、運転と同じくらいとても楽しんでいるよ」と彼は語った。
「確かに、そのことが少し早くレースを辞めさせ、僕をこれ(マネジメント職)に集中させるきっかけになるかもしれないね」
「僕はこれについて良い仕事をして、楽しむこともできると思っている。どうなるかは分からない、まだ決まっていないんだ」
「僕はブルーノ(・ファミン/アルピーヌ・モータースポーツ担当副社長)とフィリップ(・シノー/シグナテック代表)と話し合っている。これはオープンな議論だけど、年末までに決定する必要があるんだ。どちらの場合でも、僕は幸せだよ」
ラピエールが36号車A424のシートから退くことを選択した場合、現在のアルピーヌのリザーブドライバーであるジュール・グーノンが彼の代わりを務めるのが自然だが、チーム代表のシノーは、Sportscar365の質問に対し、グーノンが2025年にレースシートに昇格できるかどうかは時期尚早だと答えた。グーノンは今季、イモラとスパ、そして来る富士で、代役出場を果たしている。
「ジュールの仕事には本当に満足している」とシノー。
「このことについて話したり、示唆したりするのに適切な時期ではないが、今後数週間でさらに情報をお伝えできるだろう」
■ミック・シューマッハーの来季も不透明
アルピーヌのドライバーの中で、来季の名簿に残るかどうかが疑問視されているのはラピエールだけではない。同じく36号車のミック・シューマッハーは、フランスのブランドでの自分の将来について「本当に分からない」と認めている。
シューマッハーは、2022年末にハースのシートを失った後、F1のレースシートに復帰したいという願望を公言しており、アルピーヌのWECプログラムは、それ以降の彼にとって初のレースプログラムとなっている。
彼は来シーズンのF1でアルピーヌからエントリーする候補とされていたが、ジャック・ドゥーハンとの争いに敗れる形となった。また、シーズン終盤にローガン・サージェントの代わりが必要になったウィリアムズにおいても、フランコ・コラピントがそのシートを得ることとなった。
来シーズンのF1のシートが残りわずかとなったため、シューマッハーはグランプリ・パドックでの選択肢が「狭まっている」ことを認めたが、Sportscar365の質問に対し、F1でのシートを確保できなかった場合にWECでアルピーヌに残ると明言することは避けている。
「本当に分からない。分かっていたらそう言うだろう」とシューマッハーは答えた。
「モータースポーツのどこかには常に可能性があると思う。どこかには常に開かれた扉があり、うまくいけば僕にとってプランAがどんなものかが明らかになったとき、プランBに進むつもりだ」
他のスポーツカーレースに興味があるかどうかについて、このドイツ人ドライバーは「いまのところ、F1と同じ感覚を与えてくれるものは何もない」と述べている。
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