■クルマ好きなら生涯一度は訪れたいミュージアム
イタリアのみならず、ヨーロッパを代表する自動車ミュージアムのひとつであるイタリア・トリノの「MAUTO」こと国立自動車博物館では、2021年5月20日から9月12日まで、名門カロッツェリア「ピニンファリーナ」をテーマとした特別企画展「LA FORMA DEL FUTURO(未来のフォルム)」を開催することになった。
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世界でもっとも有名なイタリアのデザインハウスが、3つの世代と90年以上の歴史を超えて表現してきた天才的な名作たち。あるいはスタイルと機能を高度に組み合わせたコンセプトカーたちを多数展示することによって、名門が未来へのアプローチも図ろうとしていることを示すという、実に壮大な企画展がおこなわれているというのだ。
●イタリアを代表する自動車博物館の特別企画展
自動車文化の先進国のひとつであるイタリア。そのイタリアを代表する自動車博物館といえば、やはりトリノの「国立自動車博物館(Il Museo Nazionale dell’ Automobile)」、通称「MAUTO」の名を挙げるほかないだろう。
イタリアのモータウン、トリノ市内を流れるポー河左岸に位置するこの博物館は、フィアット社共同設立者のひとりであるロベルト・ビスカレッティ・ディ・ルッフィア伯爵のコレクションから始まったもので、その歴史は1932年、つまり日本でいえば昭和7年にまで遡ることができるという。これは、世界でももっとも早く創立された自動車博物館のひとつとされている。
その後、息子であるカルロ・ビスカレッティがコレクションを格段に充実させる一方、1960年には建築家アメデオ・アルベルティーニによる現在の建物が完成。中興の祖の名を冠した「カルロ・ビスカレッティ自動車博物館」として公開され、長らく世界中の自動車愛好家たちを楽しませてきた。そののち、イタリアが建国150周年を迎えた2011年には、もとの建築を生かしつつも大改装がおこなわれ、新たに「国立自動車博物館」としてリニューアルオープン。当代最新のミュージアムとして、高い人気を博している。
トリノ・ポルタヌォーヴァ駅や、かつてのフィアット工場を改造した巨大商業施設「リンゴット」からも近い都会的な環境にあるこの巨大ミュージアムは、展示車両の数・質ともに最上級を誇る。
もちろんこれらの常設展も素晴らしいのだが、さらに興味深いのは時々のテーマを定めた特別企画展だろう。自動車メーカー/ブランド別、あるいはイタリア自動車業界においては極めて重要な存在である「カロッツェリア」別にアイコン的なモデルたちを展示し、その足跡をたどるものである。
そして、新型コロナウイルス禍の長いトンネルの出口がようやく見え始めたイタリアにて、MAUTOも意欲的な企画展とともに復活を高らかに宣言することになった。
そのテーマとして指名されたのが、本来ならば昨2020年に創業90周年を大々的に迎えるはずだった名門、ピニンファリーナだったのである。
■イタリアの至宝、ピニンファリーナの名作が集結!
今回のMAUTO「LA FORMA DEL FUTURO」展は、ソーシャルディスタンスを維持するために来場者のスマートフォンを利用するビデオガイド付きでおこなわれ、音声ガイドはパオロ・ピニンファリーナ会長が自ら録画・録音したという。
●名門ピニンファリーナの過去・現代・未来が一堂に会する
16台の特別展示車両は、テーマ別に設けられたエリアに置かれる。まずはピニンファリーナの名を世界に知らしめた歴史的傑作「チシタリア202」が置かれた「ARTE(アート)」エリアから順路はスタートし、となりの「STILE(スタイル)」エリアでは「P6」や「BB」、そして中興の祖セルジオ・ピンファリーナの名を冠したコンセプト「セルジオ」からなるフェラーリたちが居並ぶ。
次の「RICERCA(研究)」エリアでは、1970年代の空力実験車「CNR Energetica1」からごく初期の電動シティカーである、スパイダー/クーペ/シティカーを単一のアルミ製シャシで互換性を持たせた「Ethosコンセプト」が並ぶ。そして今世紀初頭の「Nidoコンセプト」など、単にボディスタイルを追求するだけにとどまらず、ピニンファリーナがエンジニアリングの世界でも存在感を示してきた歴史を語るコンセプトカーたちが置かれる。
RICERCAエリアから先に進むと、展示は第二部となる。「Technolgia(テクノロジー)」エリアでは、F1マシンの安全性を模索した「シグマ・グランプリ」と、水素燃料電池技術を使用した最初のサーキット専用車両である「H2スピード」が置かれる。
その次は、映画「卒業」に出演した「アルファロメオ・スパイダー・ドゥエット」の復活を期したコンセプトカー「2uettottanta(ドゥエットッタンタ)」が置かれる「MITO(伝説)」エリア。そしてグランドフィナーレとして、ピニンファリーナがこれからの世界をどのように見ているかを示す「Futuro(未来)」エリアが現れる。
このエリアでは、各車輪に4つの電気モーターを備えた燃料電池ドライブトレインを動力源とするゼロエミッション車「シンテシ」と、高性能高級車セグメントにエコサステナビリティの新しい基準を設定すると謳う「カンビアーノ」が置かれる。
さらに今回の「LA FORMA DEL FUTURO」展とは別に、MAUTOでは開祖バッティスタ・ピニンファリーナが20歳を迎える前にデザインしたとされる「フィアット・ティーポ・ゼロ」を筆頭に、「チシタリア202」や「フェラーリ365GT4 2+2」、「フェラーリ308GTB」、「フェラーリ・モンディアル」、「アルファロメオ・ドゥエット1600」、「ランチア・アウレリアB20GT」、「フィアット130クーペ」、「キャデラック・アランテ」などのピニンファリーナ製ロードカーの傑作が勢揃いする。
さらにレーシングスポーツの「ランチアD24」、そしてイタリア共和国大統領専用車としてピニンファリーナが製作した「ランチア・フラミニア・プレジデンツィアーレ」なども常設展示されており、この巨大な博物館全体が壮大な「期間限定ピニンファリーナ・ミュージアム」へと変身を遂げてしまったかに映る。
長らくイタリアのカロッツェリア界の盟主として君臨し、もちろんこの会場にも展示される電動ハイパーカー「バッティスタ」を擁して、自動車メーカーとしても大きな一歩を踏み出そうとしているピニンファリーナは、この特別展を「未来を想像し、生来の能力を物語る特別な展示会」と位置づけているようだ。
パオロ・ピニンファリーナ会長は、開幕に際して以下のコメントを発している。
「私たちはそれぞれ独自の傑作に焦点を当てて旅を振り返ります。デザインは常に人々の生活を豊かにし、新しい未来を想像するための基盤を提供することができます。これが私たちの使命であり、今後90年間もそうあり続けるでしょう」
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みんなのコメント
車齢20年超ですが、眺めるたびにため息が出るほど綺麗です。飽きがきません。
ピニンファリーナの仕事は、デザインの耐久性が永遠なんだと思います。フェラーリ×ピニンファリーナは最高ですよ。