■三菱の今後を占うのは東南アジア市場か
三菱が自動車メーカーの先鋒になり、2020年4月から6月期(第1四半期)の決算報告をおこなった。
この期間、どこの自動車メーカーも、中国を除く世界中で吹き荒れている新型コロナ禍の逆風をまともに受けた内容になると思います。
赤字幅の大きさについて気にする必要無し。注目すべきは7月からの戦略です。果たして今後の三菱はどうなるのでしょうか。
三菱の第1四半期の赤字額は1762億円。決して少なくない赤字額ながら、会社の規模として大差ないANA(全日空)の第1四半期が1600億円程度の赤字ということを考えればある程度予想出来た数字だと思います。
一方、2020年度の見込みは3600億円の赤字と発表され、こちらについていえばどうでしょうか
詳しく説明すると、自動車メーカーの場合、業績を上げるのにもっとも重要なアイテムとなるのが「人気のある新型車の投入」です。
古今東西、自動車産業は売れ行き好調な車種を2モデルから3モデル投入するだけで決定的な効果を出せます。
だからこそ日産は今年後半から世界規模で次々と新型車を投入していき、当たれば業績アップに直結するなかで、三菱を見ると非常に厳しいです。
決算報告に盛り込まれた販売計画によれば、2022年までに発売となるモデルは、今年が「エクリプスクロスPHEV」だけです。
2021年に「アウトランダー」と「中国向けEV」。期待の「アウトランダーPHEV」は2022年に延期されてしまった。また、日産と共同開発予定の軽自動車EVの予定もあるというが、トヨタや日産の新車攻勢を考えるとちょっと厳しい。
ちなみに、ルノー・日産・三菱アライアンスの戦略内容を見ると、三菱が開発担当の新型車はアウトランダーPHEVのみになっています。
普通のアウトランダーについていえば、日産「エクストレイル」の兄弟車になると思われます。日欧では販売力と三菱自動車のブランドイメージが低下傾向のため、東南アジア市場向けと考えていいでしょう。
また、車両サイズの割に高価だと評され売れ行きが伸び悩んでいる現行エクリプスクロスにPHEVを追加しても販売台数伸びるとは思えません。
EVについていえば中国政府が補助金を大幅に削減したため、三菱以外の販売台数も大きく落ちていて、次期型アウトランダーPHEVは、RAV4に代表されるトヨタのPHVと激しいバトルになると思います。
■今後は東南アジア市場メイン? 次期型「パジェロ」復活もある?
総合して考えると、当面の三菱に起死回生のヒット作になりそうなモデルは見当たりません。
むしろ2020年6月に岐阜のパジェロ製造を閉じたり、開発予算を削減したり、赤字のディーラーを閉めるなど縮小均衡策で赤字幅を抑えようとしているように見えます。2年くらいすると、今より規模が小さい三菱になってしまっているかもしれません。
今回の決算報告を読み解くなら、次の方針が考えられます。
1) 三菱で独自開発するのはエクストレイルをベースとするアウトランダーPHEVのみ。
2) それ以外は日産またはルノーのOEMモデルになる。
3) 三菱のブランドを残すが主要市場は東南アジア。
4)現行モデルの販売を続ける。
5) 小さい規模の企業にして黒字化を目指す。
参考までに書いておくと、2020年7月上旬から三菱自動車の株価は不思議な相場展開になっており、少なく見積もって20%以上の株が波乱なく粛々と動いています。
三菱グループが集めているということだと思います。したがって三菱が経営破綻したり、買収されることは99%考えにくく、縮小均衡は寂しいけれど、無くなる心配は無いです。
また、東南アジア市場では2022年以降に新車ラッシュが続くといい、2022年にピックアップトラックの次期型「トライトン」、2023年に東南アジア市場で人気の現行「エクスパンダー」のHEV車、そして次期型エクスパンダー、次期型パジェロスポーツが続くと決算報告資料にあります。
そして気になるのが新型車とだけ書かれた2台のシルエット。1台は少し小ぶりなSUVと見られ次期型「RVR」ではないかと予想。
もう1台はシルエットを見る限りパジェロスポーツに似たボンネットながらショートボディとなれば、生産終了がニュースになったばかりですが、これは次期型「パジェロ」の復活かもしれません。
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