R35 GT-Rの進化にはまだまだ「続き」があった!
東京オートサロン2023での最大級のトピックは、日産R35「GT-R」の2024年モデルの発表だろう。最後のピュアガソリンエンジンのGT-Rと言われてきたR35 GT-Rだが、2022年5月に「NISSAN GT-R(2022年モデル)は、注文台数が予定販売数量に達したため、オーダーを終了いたしました」というアナウンスが日産からあったため、もう2023年モデルや次期GT-Rは出ないのではと噂された。というのも、R35 GT-Rでは2022年9月より適用される最新の騒音規制をクリアできないことが明らかだったからだ。
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新構造のマフラーを開発して騒音規制をクリアした
日産の田村宏志ブランドアンバサダーも、
「2022年9月から適用される、国連欧州経済委員会の自動車基準世界フォーラムで提言されたUN_R51-03の騒音基準を達成するには、従来の技術では、R35のトランクスペースを半分にして、サイレンサー容量を増やすしかなく、そのためにはフロアの大改修も必要で、当初は実現不可能と思った」
と言うほど、ハードルの高い案件だった。しかし、「技術の日産」は、新構造のマフラーを開発し、この難題を解決した。
GT-Rのチーフ・ビークル・エンジニアの川口隆志氏によると、この新構造のマフラーは、ジェットエンジンのタービンブレードからヒントを得て作られたという。
排気管の途中に分岐構造があるのが特徴で、伝わってきた音をレゾネーター(消音室)に流すことで低音域のサウンドのみを消音し、非常に厳しい車外騒音規制に対応。一方で排気効率は一切犠牲にしていないため、動力性能はまったくスポイルされない。それどころか分岐の配管形状を工夫することで、排ガスの小さな渦をたくさん作り、低音域から高音域まで音のエネルギーをきれいに分散させてボリュームを下げつつ、高回転になればなるほど迫力あるジェットサウンドを生成させることに成功した。
田村ブランドアンバサダーも「このエキゾーストの開発で、エンジン出力も妥協せず、タイヤのサイズ、グリップ力も一切犠牲にしなかった」と胸を張っていた。
空力面を刷新してダウンフォース13%アップ
もちろん、R35 GT-Rの2024年モデルでの進化は音量対策だけではない。「人の感性に気持ちよく。それでいて速い」、「トータルバランスをもっと高い次元へ」というのが2024年モデルの狙いで、NISMOに関しては「GT-R史上最高のトラクションマスター」として駆動を極めることを目指して設計。
フロントにLSDを組み込んで4WD制御のアップデートをはかったほか、空力面を刷新。フロントまわりは水平基調を軸にしたデザインでスタンスの良さを強調し、バンパーの開口部をタイトにして空気抵抗を減らしつつ、クーリング性能はキープ。カナードを深くしてホイールハウス内の空気を引き出し、揚力を軽減する。
リアはバンパーサイドとトランクリッドの上面にエッジを設け、車体後部に巻き込む風をシャットアウト。ウイングはスーパーGTのGT500クラスマシンでもおなじみのスワンネック形状を採用し、ウイングを上から支える形状に。これらの改良で、NISMOはトータルで13%もダウンフォースを向上させることに成功している。
シートもカーボンフレームが向き出しになったレカロのニュータイプで、重量を増やすことなく横剛性を50%アップ。ホールド性も一段と進化させた。
これらの改良で、NISMOのハンドリングは過去最高レベルになり、テストを行ったヘアピンコーナーの立ち上がりでは、コーナーひとつで従来型より0.6台分もリードするほどのパフォーマンスを得ているとのことだ。
スタンダード仕様のリアウイングも初めて刷新
一方スタンダード仕様は、「R35史上最高の洗練された乗り味」がテーマだ。フロントはNISMOと同じく、水平基調を軸にしたスタンスのいいデザインで、新しいシグネチャのDTL(デイタイムライト)がアクセント。カナードも取り付けられている。
リアはバンパーサイドにエッジが設けられ、ディフューザーからの空気の流れも最適化。ウイングも2007年の発売以来、初めての改良が施され、幅を広げると同時に、ウイングの位置を少し後ろに下げて揚力を軽減。こちらも車体トータルで10%のダウンフォースアップを達成している。
* * *
いずれにせよ、R35 GT-Rが延命されたというのは、スポーツカー好きにとっては大きな朗報で、騒音規制の問題がクリアできたことで、2024年モデルだけでなく、2025年モデル以降も数年間は命脈を保てる見込みが出てきた。日産は、もうしばらくR35 GT-RとRZ34フェアレディZの二枚看板が続くと期待しよう。
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