新型「RZ 34」は、VRエンジンを積んだ「Z34」
先日、この7月末をもって国内受注が一時停止されることが発表された新型フェアレディZ(以下、Z)だけに、ほしい人と思っている人は待ったなしである。というわけで、ここでは日産北海道陸別試験場で試乗した印象を、オーダーをお急ぎの皆さんのために、グレード選びのちょっとしたポイントとともにご紹介したいと思う。
新型フェアレディZに乗ってみた。MTならVersion S、ATならVersion STを選びたい!
すでに伝わっているように、新型Zの型式名は「RZ34」である。Z31、Z32、Z33、Z34……と続いてきたこれまでの流れとは異なるが、新型Zを「新しいV“R”30 DDTT型エンジンを搭載した“Z34”」と考えると理解しやすいかもしれない。実際、新型Zのプラットフォームは先代Z34の流用改良型である。ホイールベースも同じで、サスペンション部品も一見すると変わっていない。
スカイライン400Rにも採用されたVR30DDTTを搭載。405ps、475Nmのパフォーマンスを誇る。参考までに前型「Z34」のパワーユニットは、VQ37VHR(V6 3.7L NA)で、336ps、365Nmだった。しかし、実際にはバネ類やモノチューブ式となったダンパーはもちろん、ブッシュ類もほぼすべてが新しいそうだ。また、フロントダブルウィッシュボーンのアッパーAアームを設計変更して、フロントキャスターを少し寝かせているという。これは直進性の向上とともに、フロント方向から入ってくる路面入力をしなやかに吸収するためのジオメトリー変更だ。また、アッパーボディも徹底的に強化されている。
全長4380mm×全幅1845mm×全高1315mm。全幅と全高は全型と同じ。全長のみ120mm延長されている。しっとりと濃厚な接地感が醸成されている
というわけで、新型Zのフットワークはいい意味で、熟成感が漂う。開発キーワードは“ダンスパートナー”で「絶対的な速さより、操りやすくて、音がよく、素直にカッコいいこと」がねらいだったいう。
その言葉どおり、豪快なハンドリングが売りだった先代Z34に対して、新型Zはステアリングの正確性が向上するとともに、全体にしっとり濃厚な接地感が醸成されているのが美点だ。エンジンも明らかにパワフルになっているが、リヤの接地感が高まっているので、安心感も新型Zのほうが圧倒的に高い。
今回の試乗ではときおり雨にもたたられたのだが、ウェット路面でグリップ限界は低下しても、怖さや不安感はまるで高まらないのはありがたい。そこにはシャシーの改善に加えて、リヤのリフトを9%低減した空力効果もあるのだろう。新型Zはドアアウターハンドルがフラッシュサーフェス化されているが、これもリヤリフト低減に効いているのだそうだ。
同時にパワステもより軽快な操舵感となり、新設計のステアリングホイールも先代より円形に近づき、グリップがほどよく細めなのも好印象だ。エンジンもスカイライン400Rからさらに手が入っており、吸気系にリサーキュレーティングバルブを追加することでスロットルオフでの減速レスポンスを引き上げている。スピードは明らかに上がっているが、アマチュアドライバーの筆者でも、着実に“手の内感覚”が得られるのが新型Zである。
ATは9速へ。3ペダルMTの続投はありがたい
新型Zでも古典的なMTが残されたのは素直に感謝である。シフトフィールも改良されているというが、強い横Gがかかると、変速機の動きがシフトレバーにも伝わり、変速操作がシブくなるクセは隠しきれていない。さすがに500Nm近い大トルクを許容するMTで、しかもダイレクトに操作するFRレイアウトは世界的にも希少。良好な操作性を実現するのはむずかしそうだ。
対するATは日本初出の9速式である。同変速機は北米向けのフルサイズピックアップトラックのタイタンなどにも使われているが、当初から新型Zへの転用を念頭に置いて開発されたらしい。それもあってか、その変速はとても滑らかでキレがいい。
さすがにMTとギヤ数が3つもちがうと、自慢のエンジン音が心地よく響く頻度、そしてドライバビリティ面でも明らかに優位である。「どうしてもMTでないと萌えない」という頑固一徹マニア以外なら、純粋なスポーツカーとして乗る向きにも、個人的にはATをオススメしたい。
6MT仕様もしっかりとラインナップ。ベースグレードからVersion STまで、すべてのグレードで、MT/ATを選べる。ATは前型の7ATから一気に9ATへと進化した。「ATシフトノブ」というよりも電動車のシフトセレクターのようなスマートなデザイン。タイヤはグレードによって18インチと19インチがあり、それぞれ銘柄も決まっている。18インチは先代でもおなじみのヨコハマ・アドバンスポーツ、先代より前輪が幅広化された19インチは新開発のブリヂストン・ポテンザS-007となる。また19インチ仕様は、ブレーキもアルミ対向キャリパーとなる。
乗り心地は意外にも19インチのほうが好印象だったが、ハンドリングは好みと路面のよるところが大きい。ドライ路面では少し限界の低い18インチのほうがグリップ感覚も分かりやすく、振り回す楽しさがある。対する19インチは速さでは当然ながら18インチを上回るほか、ウェットになると、安定感・安心感がさらに際立つ。
ただし、サスペンションチューンそのものはタイヤサイズにかかわらず共通という。そう考えると、最初から購入後の交換を前提に、あえて比較的安価な18インチグレード(本体価格はすべて500万円台)を選ぶ手はあるかもしれない。
18インチは、ヨコハマ・アドバンスポーツ(前後 245/45R18)。ベースグレードとVersion Tが採用する。 一方の19インチは、ブリヂストン・ポテンザS-007(前 255/40R19、後 275/35R19)。Version S、Version STに装着される。メーターは12.3インチカラーディスプレイ。速度計の300km/hフルスケールだ。スポーツモードでは、中央に大型の回転計。さらに、ブースト計、油温計、水温計を配置する。日産 フェアレディZ Version ST全長×全幅×全高 4380mm×1845mm×1315mmホイールベース 2550mm最小回転半径 5.2m車両重量 1620kg駆動方式 後輪駆動サスペンション F:ダブルウイッシュボーン R:マルチリンクタイヤ F 255/40R19 R 275/35R19エンジンタイプ V型6気筒DOHCエンジン型式 VR30DDTT総排気量 2997cc内径×行程 86.0mm×86.0mmトランスミッション 9速AT最高出力 298kW(405ps)/6400rpm最大トルク 475Nm(48.4kgm)/1600-5600rpm燃費消費率(WLTC) 10.2km/l価格 6,462,500円
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