2020年のMotoGPは新型コロナウイルスの影響によって中断された。そうした状況でもライダー市場が完全に閉まることはなく、早々に仕事を済ませた3チームと、そうでないチームに分かれた。
ヤマハは今年1月にマーベリック・ビニャーレスと契約を延長し、ファビオ・クアルタラロを昇格させることを決定すると、ホンダもマルク・マルケスとの契約を4年間延長。そして5月にかけてはスズキもアレックス・リンスとジョアン・ミルらと契約を延長。早くもファクトリーのうち既に2チームの席が埋まり、チャンピオンが移籍する線も消失した。
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■距離を置くドヴィツィオーゾとドゥカティ
ドゥカティに関してはライバルが素早くライダー確保に動いたことで選択肢が狭くなっている。彼らはリンスやミル、クアルタラロ、そしてマルケスの獲得に興味を持っていたためだ。
ドゥカティのゼネラルマネージャーであるジジ・ダッリーニャは、チームのエースであるアンドレア・ドヴィツィオーゾとの間で緊張が高まっているとも言われていたが、彼らはその噂を認めたため、ドヴィツィオーゾの将来についての憶測が広がることになった。
しかしライバルチームが早々に契約をまとめていくことも影響したか、ダッリーニャは「すぐにでもいくつかの理由によって、ライダーとの話し合いを始めるつもりだ。チャンピオンシップの再開を待っていては遅すぎるかもしれない」と、先週になってシーズン再開前に契約をまとめる可能性を示唆した。
またドヴィツィオーゾのマネージャーであるシモーネ・バティステラも話し合いを始めている事を認めている。彼は「最善のケースでも、チャンピオンシップは7月末まで開始されないだろうが、それでは遅すぎる」と述べ、6月までにはクライアントの契約状況を明らかにするべきだとの考えを語っている。
しかしドゥカティとドヴィツィオーゾの経済的な条件面での隔たりは今のところ大きい。ドヴィツィオーゾ側は3年連続ランキング2位という結果を反映した“スーパースター契約”を要求しているのに対し、ドゥカティは“アフター新型コロナ時代”の世界では、そうした契約は過大な物だとみなしているためだ。
「起こったことによって、我々の生き方や物事、そして考え方は変わる。(新型コロナウイルスは)世界経済、そして当然スポーツにも悪影響がある、MotoGPもそこから逃れられはしない」と、ドゥカティのスポーティングディレクターであるパオロ・チアバッティは語った。
バティステラは「ドゥカティがドヴィツィオーゾの価値を認めていない場合、金銭面は問題となりうるだろう」と条件面での警告を発している。
■KTMはエスパルガロをキープできる? ホンダが高評価
ドヴィツィオーゾとダッリーニャの不仲は、彼のKTM移籍という噂を引き寄せることになった。またダッリーニャは「ライダーとチーム責任者との間の関係が幸せなものである必要はない」とも認めている。
しかしいくつかのメディアでは飲料メーカーのレッドブルから支援を受けるKTMからのオファーをドヴィツィオーゾが握っているとの報道がされている。
こうした動きはドゥカティに疑念を抱かせ、契約更新のための交渉を早めることになるだろう。ただKTMのCEOステファン・ピエラは交渉を巡るゲームへの参加は望んでおらず、2021年も現在のKTM勢4名のラインアップを維持することを望んでいる。
「我々はシーズン開始前の期間を現在の4名のライダーと契約を延長するために利用するつもりだ」とピエラCEOは9日に語った。
シーズンが早くとも7月末まで中断されている現状もあり、ピエラCEOは2020年シーズンを移行の期間と見積もっているようだ。
「我々の狙いは2021年シーズンのスタートにある。危機のあとに来る通常の年に現在のライダーたちと一緒にチームを維持して始めたい」
しかしKTMがラインアップを維持するためにはエースライダーのポル・エスパルガロを陣営にキープする必要がある。
「僕が最初にKTMに来て、マシンを降りた時、メカニックに『ポルはかなり速く走っている』と話したんだ」
そうエスパルガロを高く評価しているのは、昨年からKTMのテストライダーに就任したダニ・ペドロサだ。
KTMは2016年にMotoGPクラスへの参戦を開始した新興だが、トップチームとギャップを徐々に縮めつつある。そうした中でエスパルガロは自身の果たしている役割を契約でも主張していく事を望んでいる。
エスパルガロについてはレプソル・ホンダのチームマネージャーであるアルベルト・プーチも「彼はホンダのマシンで非常に速く走れるだろうと思う」と、賞賛の言葉を発している。そしてエスパルガロもホンダのマシンは自身のスタイルには合致するだろうと語っている。
ホンダは2021年以降のマルク・マルケスのチームメイトを確定させていない。そのためエスパルガロ獲得に動く可能性が“噂”として語られているのだ。
なおエスパルガロは「ホンダなら僕にとって良い選択肢のひとつになるだろう。あそこのバイクはアグレッシブで僕のライディングスタイルに合うだろうからね。でも僕はKTMがとても良い感じだし、継続が僕の最初の選択肢だ。快適に感じているし、彼らとの将来も見えている。すぐに話し合いを始めて、落とし所を見つけるだろう」と語っており、第一目標はKTM残留だとしている。
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