ボディパネルは先代と共通なのにプラットフォームは一新の不思議
ホンダの軽自動車「N-ONE」のフルモデルチェンジが発表されました。しかし、ティザーサイトを見ればわかるとおり外観は完璧なるキープコンセプト。それも現行型に似せたというレベルの外観ではなく、ドアパネルやボンネットのキャラクターラインも寸分違わないように見えます。ボディのスチールパネルはそのままで、ヘッドライトやテールレンズといった灯火類、そして前後バンパーの意匠を変えただけと考えられるわけです。
通常であれば、この程度の外観変更はマイナーチェンジと呼ぶレベル。しかしN-ONEのリーフレットをみると、そこには「変わってないようで、すごく変わりました」というキャッチコピーが大きく書かれています。正式にメカニズムについての発表はありませんが、アッパーボディは従来型をそのまま利用しつつ、プラットフォームやパワートレインといった主要メカニズムは現行の「N-BOX」や「N-WGN」と共通の最新世代にアップデートしている、というのがもっぱらの噂です。
衝突安全構造ひとつとってもボディパネルの再利用は難しい
ただし、新世代のプラットフォームと旧世代のアッパーボディを組み合わせるには、衝突安全性(とくにBピラーが関係する側突)における整合性をとる必要があるなど、一筋縄ではいかないはず。にわかには信じがたい話ですが、軽自動車という規格に合わせて開発されたプラットフォームであれば、そのあたりの融通が利くのかもしれません。
たとえば現行のトヨタ・プロボックスの場合、2014年の改良によりプラットフォームの前半分を世代交代させましたが、アウターパネルはそのまま活用されています。トヨタはマイナーチェンジと主張していましたが、このような前例を考えても、旧世代ボディと新世代プラットフォームを組み合わせることは、一概に不可能な話ではありません。ホンダは本気で新世代プラットフォームに旧型のアッパーボディを載せてきた可能性があります。
そもそもN-ONEのスタイリングは「タイムレスデザイン」といって時代に左右されない形を目指していたのはご存知の通り。初代N-ONEのモデルライフ途中で、歩行者保護性能をアップデートするためにボンネット形状を変えた以外は、最小限の進化に留めてきた経緯がありました。
新型N-ONEで、そうした進化の最終形態をそのまま活用するというのは「タイムレスデザイン」というコンセプトを継承するということでしょう。それにしてもボディそのまま中身一新のフルモデルチェンジというのは聞いたことがありません。はたして、市場はN-ONEのフルモデルチェンジをどのように評価するのでしょうか、それも気になるところです。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
※写真
白ボディ:初代N-ONE、赤ボディ:新型N-ONE
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