7世代目となった新型BMW3シリーズの日本上陸を待ち望んでいた人はとても多いだろう。開発コードG20と呼ばれる最新セダンをBMWマイスターのこもだきよし氏が解説&試乗する。(Motor Magazine 2019年4月号より)
BMWの最新技術が惜しみなく投入されている
7代目になったBMW3シリーズ(G)がいよいよ日本へ上陸した。日本仕様のパワーソースは320iと330iの2種類から導入が始まる。これらは2L直列4気筒ターボエンジン(B48B20B型)でハードは同じだがチューニングが異なり、前者は184ps/300Nm、後者は258ps/400Nmを発生する。
すべてのクルマが運転できる。フルビット免許とフル免許って、いったい何だ!【くるま問答】
今回は、320i/330iのそれぞれにサスペンションとタイヤ、装備が異なるMスポーツが用意されたが、数年以内には2L直4ディーゼルターボ、3L直6ターボ、xDrive、バッテリー容量を増やしたプラグインハイブリッド(PHEV)などのラインナップが揃う予定である。さらにワゴンボディの「ツーリング」も当然、用意されるはずだ。
この3シリーズはBMWの大事な屋台骨なので、メルセデスベンツCクラスやアウディA4というライバルたちの先頭を走るべく、BMWの持つ最新技術の粋が惜しみなく投入され、3シリーズでありながら、5シリーズや7シリーズに匹敵する装備を持ち、快適性、静粛性なども上級車に劣らないレベルに仕上げている。
それはジェスチャーコマンドであり、音声で乗員とクルマとのコミュニケーションができる機能、自動駐車機能、衝突予防のための近中遠を見る3眼カメラ、最後の50mの走行軌跡を自動ステアリングで戻る機能など、この3シリーズで初搭載のシステムも多く含まれる。オプションだが、騒音を低減して音声操作をしやすくするアコースティック(2重)ガラスもフロントに用意されている。
320iの標準タイヤは205/60R16だが、Mスポーツになると前225/45R18、後255/40R18と2インチアップになる。今回試乗した330iMスポーツはさらにオプションで3インチアップの前225/40R19、後255/35R19(すべてランフラットタイヤ)を履いていた。
18年11月にポルトガルで開催された国際試乗会で乗ったときは19インチ+スポーツサスペンション、19インチ+Mスポーツサスペンションのどちらも硬すぎる乗り心地だったが、改めて日本で試乗してみると当たりに丸みがあるので不快な硬さは感じなかった。タイヤの違いなのか、正式な生産ラインに入ってセッティングを変えたのかは不明だが、これなら日本の道を走るのにインチ+Mスポーツを選ぶのも悪くない。
乗り込むと8シリーズから採用された最新のインパネが目に入る。本国仕様は3種類のインパネがあるが、日本仕様はその最上級が標準装備になっているのだ。タコメーターの針は反時計回りに上がっていくような仕様となったが、実際に走ってみると違和感を覚えない。
スピードメーターとタコメーターの針がインパネの両サイドにレイアウトされることにより、インフォメーションを中央部分に広く出すことができる。これならヘッドアップディスプレイを装備しなくても地図画面の案内が見やすい。また地図画面を中央に出しながらも、タコメーターの内側には様々なインフォメーションを出すこともできる。
標準はセレクターの表示だが、スイッチで切り替えていくと、瞬間燃費、トリップコンピュータ、アクセル開度に合わせてトルクとパワーを示すスポーツ表示、オーディオ情報、前後左右のGメーターなどの情報を見ることができる。
走った50mをそのままの軌跡で戻る後退アシスト
100%新しくなった7代目3シリーズは、乗り込んでドアを閉めるときからその違いを感じることができる。ドアのアームレストにある引き手を持つと、ちょうど指に引っかかるように丸い膨らみがついた。さらにドアの閉まり音は「ドスッ」という感じで、ボディ剛性がしっかりしていることが走り出す前から感じられる。
エンジンスタートストップボタンは、センターコンソール上のATのギアセレクターの横に移った。パーキングブレーキは、3シリーズとして初めて電動式になり、そのスイッチはギアセレクターレバーの後方にレイアウトされている。さらにオートホールドモードも備える。
試乗車の330iMスポーツのダイナミックドライビングコントロールは、コンフォート、スポーツ、エコプロ以外に、3シリーズでは初めてアダプティブが付いた。これは一般走行で一番走りやすいように、アクセルゲイン、トランスミッション制御をするだけでなく、カメラで先の路面を読んで一番快適になるようにダンパーを制御するものだ。
また新しく採用された50m軌跡をなぞってバックする機能だが、これを使うには、エンジンスタートストップボタン前方のPとパイロンマークのボタンを押し、ダッシュボード上のモニター画面から後退アシスト」にチェックを入れるか画面タッチすればいい。
ブレーキとアクセルペダルはドライバーが担当するが、ハンドルはクルマ側がやってくれる。入り組んだ路地の奥に駐車場があるような場合や、行き止まりでバックしなくてはいけない時には便利な機構である。さらには日本ではあまり見かけないが、クルマの前方から駐車した場合なども有効な装備だと言えるだろう︒
日本仕様の3シリーズの車幅は1800mmから1825mmに拡がったが、車重は55kg軽くなっている。ボディ、シャシ剛性は50%アップしている。重心点は10mm下がり(Mスポーツではさらに10mm下がる)、高い剛性のボディ、シャシと低重心により、ハンドリング性能は格段に向上した。
市街地や高速道路の走行では、ダイレクトなステアリングフィールがクルマとドライバーの一体感を作り、無駄なふらつきがない正確なドライビングがしやすい。
高回転まで軽く吹け上がるエンジンは反応も向上した
ワインディングロードに出れば、“駆けぬける歓び”を誰もが感じることができるだろう。直線からカーブに入っていくとき、ハンドルの切り角にノーズがダイレクトに反応するから気持ちがいい。
通常の走行スピードなら前荷重にするなどのターンインのきっかけをわざわざ作らなくてもスーッとノーズが入っていくからだ。攻めていったときでも、ズルズルとフロントが逃げていくことはなく、ハンドルさえ正確に操作できていれば曲がってしまう。
エンジンは先代に比べて軽快になった。これまでは6000rpmのゼブラに届く前にシフトアップしていたが、アクセルペダル操作に対する反応が良くなり、高回転まで軽く吹け上がる。
Dレンジのままでもアクセル全開だと6500rpmからのレッドゾーンに飛び込んでからシフトアップする。ツインスクロールターボチャージャーのイナーシャを下げレスポンスをよくしているのと、コモンレールの燃料噴射の圧力を350バールに上げてさらに効率の良い燃焼ができるようになったのである。
キドニーグリルは7/55シリーズと同じように自動開閉シャッター付きになった。エンジン温度が上昇するとシャッターが開き風を多く取り入れ、高速になると空気抵抗を減らすためにシャッターは閉じる。高速ではシャッターを閉じても下から入る風だけで冷やすことができる。住宅地や市街地ではエンジン騒音を外に漏らしにくくなり、冬場は一度暖まったエンジンの保温効果もあるという。
またオプションでレーザーライトが採用されている。これはオートライトを選んでおくと75km/h以上で走行中に500m先を照らしてくれるというもの。もちろん対向車や先行車を確認すればすぐに通常のハイビームかロービームに切り替わるのだ。
どこを取り上げても驚くほどレベルアップを果たした7代目は、歴代3シリーズの中でビンテージカーになりそうな予感がする。(文:こもだきよし)
■BMW 330i Mスポーツ 主要諸元
●全長×全幅×全高=4715×1825×1430mm
●ホイールベース=2850mm
●車両重量=1630g
●エンジン= 直4DOHCターボ
●排気量=1998cc
●最高出力=258ps/5000pm
●最大トルク=400Nm/1550-4400rpm
●駆動方式=FR
●トランスミッション=8速AT
●価格=632万円(税込)
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