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日産セダン黄金期を支えた一翼「セフィーロ」は何がそんなによかったのか?

掲載 更新 95
日産セダン黄金期を支えた一翼「セフィーロ」は何がそんなによかったのか?

 日産には、すでに廃盤となってしまった名車が多く存在する。「セフィーロ」もその一台だ。1988年に初代が登場して以降、2003年にティアナへとバトンチェンジするまで、3世代にわたって日産のラージセダンとして君臨していた、セフィーロ。そのスタイリッシュなデザインには、今でも道ですれ違うと、「はっ」とさせられる。

 今回は90年代の日産セダン黄金期の一翼を担った、「セフィーロ」を振り返ってみようと思う。

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文:吉川賢一/写真:NISSAN

【画像ギャラリー】「スポーティのスカイライン・ラグジュアリーのローレル・スタイリッシュのセフィーロ」日産黄金期を支えたセダンたち

「日産版三兄弟」としてデビュー

初代 A31型セフィーロ(1988年-1994年)
 1980年代のバブル期、トヨタが同じプラットフォームで、マークII、クレスタ、チェイサーの3兄弟で、一世を風靡していたなか、このブームに遅れまいと、日産が1988年9月にデビューさせたのが初代「セフィーロ」だ。

プロジェクターヘッドライトは、当時最先端のアイテムだった。

 当時、日産の2枚看板であった「スカイライン」「ローレル」と共用する後輪駆動のシャシーをもち、「日産版の3兄弟」としてデビューした。今では考えらないが、メインターゲットは30代前半の「ヤング」層。カッコいい大人に憧れた若者たちが、カッコいいセダンに夢中になる、そんな時代だった。

 スポーティな「スカイライン」、ラグジュアリーな「ローレル」に対し、先進的でスタイリッシュな「セフィーロ」として、当時の最新式プロジェクターヘッドライト、シャープなフロントマスク、伸びやかなサイドビューなど、今見ても、なかなかにカッコいいと思えるスタイリングで登場した。

 「セフィーロ・コーディネーション」と呼ぶ、ユーザーがエンジンやミッション、サスペンション、内装素材や内装色、外装色など、好きなようにカスタマイズして購入できる、という、自由度のある販売方式は、当時としては画期的であった。

2代目 A32型セフィーロ(1994年-2000年)
 2代目セフィーロでは、ラージFFセダンとして国内外で販売されていたマキシマと統合されたことにより、FF(前輪駆動)となった。ラグジュアリー志向の「エクシモ」と、スポーティ志向の「Sツーリング」の2シリーズ構成とし、新開発のV型6気筒エンジンを搭載、4速ATもしくは5速MTが用意された。

ボディサイズが大きくなったことで、室内が飛躍的に広くなった2代目セフィーロ。

 先代セフィーロのイメージにあったスタイリッシュなボディスタイルから、汎用で大柄な、オーソドックスなセダンスタイルになったことで、後席の居住性や走行の安定感が大きく増した。

 2代目セフィーロは、「アッパーミドルサルーン」として、セドリックやグロリアまで高級車志向ではない、それでいてローレルやスカイラインよりはややサイズが大きく程よい価格、という、ちょうどいい立ち位置を見つけ、販売も成功した。

 しかしながら、FRでなくなってしまったことは、セフィーロファンにとっては悲しいことだった。

3代目 A33型セフィーロ(1998年-2003年)
 セフィーロとして最後のモデルとなった、3代目セフィーロ。この3代目もまた、北米を中心に世界中で販売されるアッパーミドルサルーンとして販売された。キャッチコピーは「イルカに乗ろう」。ヘッドライトの波打つような形状など、イルカをモチーフとした造形を入れており、フレンドリーな印象を与えた。

波型のヘッドライトが3代目セフィーロの特徴。

 ボディサイズは相変わらず大柄で、2001年のマイナーチェンジでインフィニティI30と同じ前後バンパーとしたことで全長が4920mmと、フラッグシップのシーマに近い長さまで拡大した。

何か新しいことをやってくれる期待感

 3世代にわたるセフィーロを振り返ってみると、やはり初代の印象が色濃く残っている方が多いのではないだろうか。商業的には、成功したとは言えなかった初代セフィーロだが、いまだに人々をときめかせるのには、いくつか理由があると考える。

・ユーザーが自分の好きなように選択できるカスタマイズ性
・「スポーティ」や「ラグジュアリー」といった公式にとらわれない新しさ
・何か新しいことをやってくれるという期待感

 2代目・3代目では、世代を追うごとに快適性や広さといった機能が高まりコストパフォーマンスに優れたクルマへと成長し、ビジネス的には成功を収めるようになったが、代わりに、初代セフィーロが持っていた特殊性は失われてしまっていた。

「商品の魅力を磨いてさらに売れるようにする」のは、どんな商売にせよ当たり前にやることだ。しかしながら、ビジネス的には成功しなかった初代セフィーロが、いまだに「いいクルマだった」と語りつがれる背景には、やはり「売れるクルマ」と「ファンの心に残るクルマ」とはイコールとはならず、初代セフィーロは、ファンをわくわくさせる目新しさや個性が特別光っていた、ということなのであろう。人間は、感情を揺さぶられると、長い間記憶に残る、といわれている。

 2003年にはローレルとも統合し、新世代のFF-Lプラットフォームを採用したティアナ(北米名アルティマ)へと切り替わったが、このティアナも、生産を終えることとなってしまった。惜しくもブランド名は消滅してしまったが、セフィーロは確実に、日産の一時代を支えた、名車であった。

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