8月22~23日の週末にブラジル・インテルラゴスで開催された同国最大のツーリングカー選手権SCBストックカー・ブラジルの第2戦は、土曜レース1でネルソン・ピケJr.(フルタイム・バッサーニ)が2018年のフル参戦以来、待望の初勝利を獲得。続く日曜の高額賞金“ミリオンレース”は開幕勝者のリカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ)が制し、今季シリーズデビューを果たしたTOYOTA GAZOO Racingブラジルの新型『トヨタ・カローラ』が開幕から4戦4勝を飾っている。
7月末にゴイアニアで幕を開けたSCBの2020年シーズンは、いまだ終息の見えない新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの影響で、ここサンパウロのアウトドローモ・ホセ-カルロス・パーチェでも無観客の開催が決定。ドライバーやチームクルーも徹底した防疫対策のもとでレースウイークを進めた。
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40分間の土曜レース1に向け、予選で最前列を獲得したのはセザール・ラモス(イピランガ・レーシング)で、元イタリアF3王者と並ぶ2番手にはピケJr.が自己最上位グリッドを確保し、トヨタ・カローラがフロントロウを独占。セカンドロウ3番手にも開幕戦に続き速さを見せるラファエル鈴木(フルタイム・バッサーニ)が入り、4番手にはゾンタと、カローラがトップ4を占拠するスピードを見せた。
序盤は雨がらみのコンディションで各車レインタイヤでのスタートを切ると、義務ピットの時点でレコードラインが乾いていく状況を判断したピケJr.がいち早く動き、迅速な作業でドライタイヤへとチェンジ。この結果、ポールシッターのラモスをアンダーカットすることに成功し、21周のチェッカー時には5.833秒ものマージンを築いてフィニッシュ。
多彩なキャリアを誇るピケJr.は、GP2やABBフォーミュラE選手権、NASCARにGRC(グローバル・ラリークロス)などざまざまなカテゴリーでの勝利に、ストックカー・ブラジルでの勝利を加える待望のシリーズ初優勝を決めた。
「本当に待ち望んでいた勝利だ。この(フル参戦以降の)3年間は勝利を渇望して窒息するような気分だったし、ついにそれをこうしてクールな方法で手にすることができた。後半スティントは夢のような時間だったよ」と、喜びを語ったピケJr.。
2位には惜しくも勝利を逃したポールシッターのラモスが続き、最後の表彰台となる3位には陣営内対決を制してラファエル鈴木を逆転したゾンタが入っている。
明けた日曜は完全ドライコンディションで始まり、午前の予選では「土曜の決勝、後半スティントからこのときのためにドライタイヤの感触を確かめていた」と語ったラモスが連日のポールポジションを確保する。
セカンドロウには隣国アルゼンチンのトップドライバーで、今季から初のフル参戦プログラムでSCBに挑むマティアス・ロッシ(フルタイム・スポーツ)が自己最上位グリッドを獲得。3番手にゾンタ、4番手にシボレー・クルーズのディエゴ・ヌネス(ブラウ・モータースポーツ)と、またしてもトヨタ勢が上位を占める結果となった。
■カローラ駆るバリチェロが後方から18台抜き
例年なら100万レアル(約1900万円)相当の高額賞金が掛けられるシリーズ恒例の“ミリオンレース”だが、今季は詳細な金額のアナウンスはなく日曜の決勝40分間がスタート。
この日の主役はゾンタで、前日のピケJr.を再演するかのように首位のラモスを追い詰め、SNSファン投票で使用上限回数の決まるオーバーテイクボタン“FAN PUSH”を活用して差を詰めると、義務ピットで首位に立ちそのままクルージング。25周で6.117秒にギャップを広げ、早くも今季2勝目を飾った。
「本当に素晴らしい結果だ。スタートは良かったけど、2周目にミスを犯して貴重なタイムを失った。あれは完全に僕のミスだった。でもマシンは非常に良くてラップごとに首位に近づくことができた」とカローラの完調ぶりを称えたゾンタ。
「それにオーバーテイクボタンも本当に有効だった。FAN PUSHを使わせてくれたファンに改めて感謝したい。ピットストップの後は約7秒のマージンが築けたから、あとはマネジメントするだけだったよ」
一方、2日連続のポールポジションから連日2位フィニッシュのラモスも「2回のポールポジションがある週末は、もちろん少なくともひとつの勝利を望むものだけど、自分がこうしてトップチームにいる機会に満足している」とコメント。3位には8番グリッドから浮上のデニス・ナバーロ(カヴァレイロ・スポーツ)が入り、これがシボレー陣営にとって週末で唯一の表彰台となっている。
さらにこのレースでもうひとり主役級の活躍を演じたのがルーベンス・バリチェロ(フルタイム・スポーツ)で、2014年のSCB王者は予選で22番手に沈んだものの、決勝ではトヨタ・カローラで怒涛のチャージを披露し、実に18ポジションを挽回しての4位フィニッシュ。さらに最終ラップでのアクシデントがなければ「表彰台も可能だった」と振り返った。
「最後の逆転に賭けてFAN PUSHを温存していたけど、残念ながら最終ラップで後続のアクシデントに巻き込まれ、危うくレースを失うところだった。表彰台は逃したけど、僕のグラスの中は空っぽじゃない。インテルラゴスはいつだって、僕の心の中心にある」と満足げに語った、2020年開幕ウイナーのバリチェロ。
一方で、シリーズ3連覇中の王者ダニエル・セラ(ユーロファーマRC)は前日を13位で終え、日曜の“ミリオンレース”出走を取り止めた状況を次のように説明する。
「日曜午前の予選Q1途中で2速ギアに入れたとき、奇妙な音が聞こえた。それでギアボックスが壊れたのが分かった。Q2に向けてマシンをコースインさせたが、3速にスタックしたままで歩くような速度しか出せなかった。チームには『レース前までの修復が厳しい』と告げられ、スタートは見合わせるしかなかったよ」
これでランキング3位71点のバリチェロ、同2位で78点のラモスに対し、82点でゾンタが首位に立つSCBの2020年シリーズ。続く第3戦の開催は9月13日の週末が予定されているが、開催地は追ってアナウンスされる見込みだ。
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