以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「マツダ ファミリア」だ。
マツダ ファミリア(SSA型):昭和39年(1964年)10月発売
所得分布は低所得者ほど幅広いという独自のピラミッドビジョンに則り、R360クーペ~キャロル~キャロル600と乗用車のバリエーションを下から拡大してきたマツダが、次のステップとして800ccクラスにファミリアを投入したのは1963年(昭和38年)9月だった。市場の動向を探るため商用車(バン)からスタートしたのは、ダイハツ同様、商用車製造で力をつけてきたマツダらしい選択だった。そして1年後の第11回東京モーターショーで待望の2ドアセダンがお披露目される。しかも参考出品ではなく開催期間中の10月1日に発売された。
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ルーチェでカロッツェリア・ベルトーネを起用するなど、当時から「自動車のもっとも重要な要素はデザイン」と考えていたマツダだが、ファミリアについては社の発展のために若手を登用したのが興味深い。セダンはバンのボディ後部をノッチバックに改良したもので、ボンネットからトランクまでボディ全周を廻るウエストラインが完成して、スタイル上の肝となる「フラットデッキ」が本来の輝きを放つことになった。
ボディ骨格はセミモノコックで、A/B/Cピラーを基本にアーチを作り、下部を閉断面のサイドレールを3本のクロスメンバーで補強したフロアボードに溶接して、環状骨格を作るというもの。前後にサブフレームを持ち、フロントにエンジンをマウントするほか、前後サス取り付けのためのサスペンションメンバーがボルト止めされている。
エンジンはキャロル用の発展型だ。キャロル600に対し、ボアを4mm/ストロークを10mm拡大して782ccのロングストロークタイプとした。マツダお得意の「白いエンジン」は継承され、シリンダーブロック&ヘッド、クラッチハウジング、ミッションケースに高度な製造技術を要するアルミ合金を採用。冷却効率アップと同時に、ミッションアッセンブリーも含めてエンジン重量を約113kgに収めるという軽量化も実現している。
バルブ駆動はOHVだが、半球形燃焼室に各45度の角度で吸排気バルブを配置するクロスフロー方式や、5ベアリング クランクシャフトなど、800cc級にはオーバークオリティともいえる技術が投入されていたのも特徴のひとつだ。公称の連続最高時速は115km/hで、この時のエンジン回転数は5200rpm。最大許容回転数が6500rpmなので、十分な余裕を持った数字といえた。
トランスミッションがフルシンクロの4速コラムMTというのも、1速をノンシンクロにしたクルマが多い時代、マツダのこだわりといって良い。全体にローギアードなセッティングだがエンジン特性とのマッチングも良く、路上で出せるスピードにおいては欧州小型車の感覚に似ていると、国産車離れした動力性能が高く評価された。操縦性能については荒れた舗装路でも忠実に弱いアンダーステアのまま安定したロードホールディングを見せ、とくにフロントのスタビライザーが良く効き、素直なハンドリングが評価された。
ファミリアは4ドアセダンに続き1964年11月に2ドアセダンを、1965年にはクーペを追加する。新設計の1000cc直4 SOHC(68ps)エンジンを搭載し、最高速度は145km/h、0→400m加速は18.9秒(公表値)の俊足を誇ったクーペは若い世代に注目されたが、1966年にサニーとカローラが出現。ファミリアはシリーズ全体の抜本的見直しが求められることになる。だが、当時のマツダは持てる資材のほとんどをロータリーエンジン開発に投入していたこともあり、大幅な改良を受けることなく、1967年11月に2代目にバトンタッチしていく。
マツダ ファミリア800 デラックス 主要諸元
●全長×全幅×全高:3765×1465×1385mm
●ホイールベース:2190mm
●重量:740kg
●エンジン型式・種類:SA型・直4 OHV
●排気量:782cc
●最高出力:42ps/6000rpm
●最大トルク:6.0kgm/3200rpm
●トランスミッション:4速コラムMT
●タイヤサイズ:6.00-12 4P
●価格:54万8000円
[ アルバム : マツダ ファミリア はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
今こんなの出したら、すぐオラオラ顔とか言われちゃったりするんだろうがw