■FIAとの技術協力をとおして実現されたシャシ
アウトモビリ・ランボルギーニの40台限定サーキット専用モデル「エッセンツァSCV12」のカーボンファイバー・モノコックシャシが、FIA(国際自動車連盟)ハイパーカー安全規格認証を市販車で初めて取得した。
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アウトモビリ・ランボルギーニのモータースポーツ部門の責任者であるジョルジオ・サンナ氏は次のようにコメントしている。
「エッセンツァSCV12は『Laboratory of ideas(アイデアの実験室)』として誕生しました。そのため、荷重を支えるギアボックスにサスペンションを直接取り付けるなど、通常はレージングプロトタイプで採用するような、GTカーとしては画期的な要素を採用することを可能にしました。また、スチール製ロールケージを搭載しないカーボンファイバー製の新しいモノコックシャシを特徴としています。これはFIAとの技術協力をとおして実現したもので、将来のGTレーシングドライバーの安全性が飛躍的に向上する一歩を踏み出すことができました」
エッセンツァSCV12のカーボンファイバー・モノコックシャシは、サンタアガタ・ボロネーゼにあるアウトモビリ・ランボルギーニCFK部門のオートクレーブ装置を用いて製作されている。CFK部門は、「アヴェンタドール」のシャシ製作も担当する部門だ。
FIAがシャシのホモロゲーションの際に求めるテストは、静的・動的テストの両方を含む、極めて厳しいものである。そのため、ランボルギーニ・スクアドラコルセの技術者たちは、エッセンツァSCV12の基となった市販車のシャシ構造に大幅な変更を実施。カーボンファイバー・モノコックシャシは、FIAの認証試験で12トンを超える力に対し大きく変形することなく耐える必要があったため、いくつかのポイントで補強された。
また、シャシのほか、ペダル、ベルト、燃料タンクなどを対象とした静的テストは20項目を超える。さらに衝突テストでは、最大14m/sの衝撃が加えられることになる。これらのテストでシャシに外装パーツが侵入してドライバーと接触することや、燃料タンクの漏れは許されない。
そのためランボルギーニ・スクアドラコルセの技術者たちは、スチール製ロールケージを搭載せず、カーボンファイバーの構造体を用いることを決断したという。そしてシャシ内で革新的なラミネートフォーム(ROHACELL 71XT)を使用したことで、全体重量の面でメリットを得られただけでなく、コックピットスペースを大幅に拡大することができ、最高の快適性を実現することができた。
■「ウラカン GT3 EVO」よりも20%高いねじれ剛性を達成
エッセンツァSCV12のシートはFIA 8862対応認定のOMP製で、スクアドラコルセが設計し、ランボルギーニのCFK研究施設で製作されたカーボンファイバー製のクレードルに取り付けられた。また、一般的なロードカーに比べるとシートは低く設置されており、運転席と助手席のドア側は、レーシングカー従来のスチールチューブに代わり、複合素材から成るサイドインパクトガードで保護されている。
ランボルギーニのファクトリードライバー、マルコ・マペッリ氏は次のようにコメントしている。
「エッセンツァSCV12は高揚感をもたらすスピードが出せるだけでなく、驚くほど快適でゆったりしたキャビンも備えられています。これは、すべてのジェントルマンドライバーに満足いただける、他にはない特徴です」
もうひとつの新しいソリューションは、モノコック後部に設置されたクレードルで、これにより縦軸に沿ってエンジンが収納されている。ギアボックスには荷重を支える構造的な機能があり、この特性によってウラカンGT3 EVOよりも、20%高いねじれ剛性が達成されたという。
マペッリ氏は次のように説明する。「最高速度で1200kgを超える空力負荷と車体のねじれ剛性が、抜群のドライビング精度につながっています。これにより、ドライバーはステアリングの角度を大きく修正することなく高速でカーブに挑むことができます。エッセンツァSCV12は、830hpというパワーによって非常に速いクルマでありながら、比較的簡単に運転することが可能です」
なお、エッセンツァSCV12は2021年4月からデリバリーが開始されており、オーナー限定のサーキットイベントが、6月末に開催予定となっている。
* * *
ランボルギーニ社内では、Laboratory of ideas(アイデアの実験室)と呼ばれているエッセンツァSCV12。今回開発されたカーボンファイバー・モノコックシャシのテクノロジーが、今後登場するモデルにフィードバックされるのは容易に想像できる。そろそろモデル末期となり次期モデルの噂も囁かれている「アヴェンタドール」の後継モデルに、エッセンツァSCV12で得たテクノロジーが採用されるだろうか。
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