ケータハムの「3本柱」計画に2シーター?
英国の自動車メーカーであるケータハムは、2030年以降の電動化時代に向けて、野心的な「3本柱」の計画を進めている。この計画では、多くの人に愛されているガソリン車のセブンを少なくともあと10年は製造し(1本目)、その間にセブンEVを開発(2本目)、そしてケータハム伝統の軽さとシンプルさを生かした全く新しい電動ロードスター(3本目)を発表する予定である。
【画像】軽量&シンプルなブリティッシュ・スポーツ【ケータハム・セブンを写真でじっくり見る】 全78枚
ケータハムのボブ・レイシュリーCEOは、AUTOCARの独占インタビューに応え、近年好調な事業について語ってくれた。ケータハムは昨年、500台規模の生産体制に対し670台を販売したが、この「余剰」によって現在約1年分のキャンセル待ちが発生している。そこで、短期的には年間生産台数を従来の500台から拡大し、余剰分に対応しようとしている。英ケント州ダートフォードの主要生産ラインに加えて、最近ではケータハムの旧クローリー中古車センターを新車の組み立てに再利用しているのだ。
レイシュリー氏は、現行の環境規制ではエンジン搭載車を2034年まで製造できると考えている。2030年に英国が提案するディーゼル車とガソリン車の新車販売禁止が実現しても、輸出需要の拡大により販売が維持されるだろうと同氏は予測する。ここで重要なのは、米国が最近行った自動車登録法の改正「Show and Display」で、セブンのような「伝統的または技術的に重要」な輸入車の米国内での販売と、年間2500マイル(約4000km)までの走行が可能になったことだ。
その一方で、エンジン搭載車の英国での需要も非常に強く、EV(電気自動車)の販売を求める人はまだ少ない。だが、実験的なモデルはいくつか試作されており、レイシュリー氏もセブンEVのプロジェクトが順調に進行中であることを認めている。
しかし、一番の衝撃は、「2シーター」の電動モデル計画である。レイシュリー氏は、現時点では「頭の中のアイデアにすぎない」と主張するが、2021年半ばからケータハムのオーナーとなった日本のVTホールディングスがその実現に意欲的であることも明言している。ケータハムは以前、ルノーとの共同開発で2ドア・クーペ「C120」の導入を計画していたが、実らなかった。C120は結局、ルノーとの提携解消後にアルピーヌA110として昇華した。
新型車は、新工場でセブンより大量に生産され(年間1000台も視野)、販売価格は現在のセブンより高くなる見込みである。レイシュリー氏は発売時期の明言を慎重に避けたが、VTホールディングスが生産開始を強く望んでいることから、早ければ2026年にも発表される可能性がある。場合によっては、セブンEVよりデビューが早いかもしれない。
全く新しい電動モデル でも軽量かつシンプルに
日産自動車に25年間勤務し、マーケティングに長け、サプライヤーとなりうるOEM企業とも良好な関係を築いてきたレイシュリー氏。新型車についても多くを考え、計画を練ってきた。「これは間違いなくセブンではありません」と彼は言う。
「しかし、ケータハムのお客様がよくご存知の、軽さ、シンプルさ、敏捷性、そしてパフォーマンスといった特徴をすべて備えているはずです。セブンと同様、スチール製のスペースフレームを採用します(ただし、別のもの)。ボディは2枚のシル、2枚のドア、フロントとリアのクラムシェル・オープニングの、アルミニウムまたはカーボンの6枚パネルからなります」
「セブンよりも美しくてモダン、それが大きな差別化ポイントになるでしょう。当初から純粋なEVとして設計しており、後輪駆動のみでSVA(型式認定のない車両に対する英国の車検制度)に基づいて登録される予定です」
ケータハムの伝統に則り、パワーステアリングもABSもエアバッグもなしで発売したいが、EVの瞬発力を活かすため、トラクションコントロールは搭載されるかもしれないとレイシュリー氏は言う。しかし、現実にはパワーステアリング、ABS、その他の安全装備が必要である。なぜなら、SVAの新基準に適合するため、前方衝突警告や車線逸脱警告といった機能を載せなければならないからだ。
それでもレイシュリー氏は、可能な限り軽量でシンプルなクルマになるとしている。おそらく車載システムの多くは、ドライバーのスマートフォンから操作することになる。「内蔵式のダイヤルはほとんどないでしょう」と彼は言う。「あるいは、(まったく)ないかもしれません」
セブンEVの軽量化実現には時間が必要
一方で、セブンEVについては発売を急ぐつもりはないと言い切る。ケータハムのアイコンである軽さ、シンプルさ、楽しさに欠けるかもしれないからだ。「ケータハムの歴史は、当初からOEM部品を想像力豊かに再利用することが中心でした。それをセブンEVで実現しようと思ったら、軽さはどうすればいいのか。小型EVの開発は、まだ黎明期なのです。部品は保守的で重い。1000kgのセブンを発売しようとは決して思いません。むしろやらないほうがいいでしょう」
レイシュリー氏が理想とするセブンEVは、車重700kg未満、かつ「20-15-20」と呼ばれるパフォーマンスを実現する。サーキットでフル充電し、20分間高速走行を楽しんだ後、お茶を飲みながら15分間充電し、またコースに出るというものだ。彼いわく、「これができないのであれば、発売すべきではない」とのこと。これらのことから、セブンEVの登場は少なくとも5年先のことと思われる。
たとえ軽量で高性能だとしても、ケータハムが絶対に発売しないのは、ハイブリッドのセブンである。「わたし達は軽さにこだわっているのです。なぜ、2つのパワートレインを必要とするクルマを作るのでしょう?それは、とんでもない妥協です」とレイシュリー氏。
ケータハムの喫緊の課題は、大手メーカーと同じ部品供給問題に対処しながら、年間最大200台の増産を実現することである。レイシュリー氏は、次のように述べている。
「部品サプライヤーには、何十年も前に設立された会社もあります。昔、親がコリン・チャップマンと握手していたような人たちと取引しているんですよ。30年前から年間500台の配線盤を製造している人にとって、1日の労働時間が足りないだけかもしれない。これらは、一見単純な問題に見えるかもしれませんが、すべて解決しなければならないのなのです」
大手メーカーと同じような問題に直面しているにもかかわらず、レイシュリー氏は、135人の従業員からなる自社の繁栄に誇りを持ち、その事業をさらに発展させることに胸を躍らせている。「自慢ではありませんが、今、わたし達が抱えている最後の問題は、ケータハムをもっと売ることなんです」
現在、セブンは推定1万5000台が流通し、その需要はとどまるところを知らない。65年もの間、一度もその名を超えることがなかったという事実は、オリジナルの正しさと開発者の才能を何よりも物語っている。
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みんなのコメント
限定的な走る場所での航続距離
実はスポーツカーにこそBEVは向いてるかも知れないw