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グランエースはアルファードよりもデカイけど小回りがきく理由

圧倒的なデカさの全長5.3mボディ

2019年の東京モーターショーに姿を見せた新型フルサイズワゴンのグランエース。すでにアジア地域で新型ハイエースなどとして登場していたモデルが、グランエースとして19年12月から発売が開始された。珍しくメディア試乗会は大幅に遅れ、発売から1カ月以上が経過した20年1月下旬に開催された。

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ハイエースと聞くと商用バン的なイメージが先行し乗用ミニバンとは結びつきづらいが、グランエースはセミボンネットタイプのフルサイズミニバン。日本国内では異例ともいえる全長5300(海外仕様のロングはなんと5915)mm、全幅1970mm、全高1990mmというワイドでビッグなボディサイズを持つ。ハイエースワゴンのワイドでも全幅は1880mmだから、いかに幅が広いかがわかる。全長はハイエースのグランドキャビンが5380mmと80mm上まわるが、グランエースはホイールベースが3210(海外仕様ロング3860)mmと100mmも長くなっているため、後席の居住空間に大きな余裕が生まれているのが特徴。ミニバンの雄であるアルファード/ヴェルファイアとノーズを突き合せた写真を見ていただければ一目りょう然だが、アルヴェルは全長4935mm、全幅1830mm、全高1950mm、ホイールベースが3000mmだからひと回り小さい。実車を見比べるとスペック以上に差があり、グランエースのほうが圧倒的に大きく見える。フロントシート上のルーフには通信用のDCMのアンテナが帽子のように載っているが、この位置は全高の数値を2m以下に抑えるための苦肉の策。通常のようにルーフのリヤにマウントすると数値が2mをオーバーしてしまうため、立体駐車場などの制限を受けるためアンテナ類をフロントにレイアウトしているわけだ。

ボディの大きさは運転席に乗り込む際にさらに実感することになった。フロア下に大きなステップがあるが、ここに足を置いて1段上がってからAピラーに付けられているアシストグリップを右手で握り、体を引き上げてシートに座る必要がある。着座ポイントがアルファードなどと比べると圧倒的に高いため、こうした゛作法゛をしないとスムーズに乗り込めない。フロアが高い要因は、ベース車が貨客両用であることと駆動方式がFRだからだ。セミボンネット下に縦置きされた直4 2.8リットルディーゼルターボエンジンからプロペラシャフトがフロア下を通り、リヤデフを介してリヤタイヤを駆動するためもともと低いフロアにすることが難しい。

想像よりもずっとイイ!

シートに座ると当然だがアイポイントも高く、マイクロバス的な視点になり視界がいいことがわかる。さらに、助手席を見るとかなり離れていることで車幅が2m近いクルマであることを実感する。ボディが大きいため死角が気になるが、パノラミックビューモニターで周りを確認できるから心配ない。取りまわしは、駆動方式がFRのためフロントタイヤの舵角を45度も切ることができ、最小回転半径が5.6mと小回りが利く。アルファード系は3.5リットルガソリン車などが235サイズのタイヤを装着するため、最小回転半径は5.8m。撮影のため片側2車線の交差点をUターンしたが、余裕で転回することができた。ボディサイズは大きいもののステアリングがよく切れるため意外に扱いやすい。

もう1つ意外だったのが乗り心地のよさだ。グランエースを名乗るがベース車は貨客両用で、純粋に乗用車として開発されたミニバン並みの乗り心地を実現できていないだろうという先入観があった。それはサスペンション形式も事前にして知っていたからだ。リヤはコイルスプリングを使うもののトレーリングリンクのリジッド。ベースのバンタイプはリーフスプリングを使う典型的なバン用設計。だがグランエースは、街なかでの段差や高速道路でジョイントを乗り越えても突き上げ感が少なく、アルファード並みの乗り心地を実現しているのだ。これはカヤバ製の周波数感応型のショックアブソーバー「ハーモフレック」を装着した効果も大きい。段差を斜めに通過するとリヤサスがリジッドらしい横揺れが発生するが、それ以外はアルファードとそん色ない乗り心地だ。

さらに静粛性が高いことも意外だった。プラドと同じエンジンを搭載するため車外騒音はそれなりに大きいと思っていたが、グリル前に立ってもディーゼルであることがわからないくらいなのだ。エンジニアによるとメカはプラドとまったく同じだが、噴射タイミングなどを微妙にチューニングしているという。車内へのエンジン透過音もよく抑えられているが、これはバルクヘッドに吸遮音材を使用しているのはもちろん、効果的なのがアンダーカーバーだという。グランエースの床下はカバーでおおわれる部分が多く、リヤのスペアタイヤの部分までカバーしている。また、バックドアは内部に隔壁を設けてロードノイズが進入するのを防いでいる。プレミアムグレードはスライドドアのガラスを遮音性に優れる合わせガラスを採用しているのも高級車らしい点。静粛性という点ではミニバントップクラスと評価できる。

正直アルファードよりもイイのでは?

居住性というか乗車中のリラックス度は、プレミアムグレードならアルファード系を凌駕したといっていいだろう。アルファードのエグゼクティブラウンジの2列目シートにおける快適性は、ミニバンの最高峰だと思うが、グランエースのプレミアムは2列と3列目の4人がフルリクライニングさせて快適なポジションを取ることができる。アルファード系では最高の空間を2人しか楽しめないが、グランエースは上質な乗り心地を4人が楽しめる。これはVIPの送迎用リムジンとしては重要なポイントでもある。じつはプレミアムのエグゼクティブパワーシートは、前述のアルファード系のシート骨格と共通。リクライニングとオットマン、シートヒーターの操作スイッチをアームレストの内側に1つにまとめることで、初めて乗った人でも迷わず使えるようになったのもグランエースのいいところだ。

ハンドリングもFRらしさにこだわって開発されたのがわかる。ステアリングの動きが滑らかで、直進からほんの少し操舵しただけでもスムーズにノーズが動く。この微小舵角でのパワーアシストのフィールは油圧パワステならではで、コストを削った電動パワステでは味わえない操舵感だ。油圧を使う理由は、ベース車がバンと共用としているため必要な操舵力が大きいことだが、開発時には操舵フィーリングを入念にチェックしたという。コスト高の周波数感応ショックアブソーバーを採用したのも、FRの高級ミニバンらしいハンドリングを求めたからだという。

日本ではワゴンとして投入されたものの、装着タイヤはライトトラック用の109/107T LTの荷重指数を持つタイヤ。LTタイヤでこの乗り心地を実現したのはすばらしい。LTタイヤを装着する理由は2.7トンオーバーというヘビー級の車両重量にある。車両総重量は3列シートのプレミアムで3070kg、4列シートのGは3210kgにも達するため荷重指数が高いタイヤが必須なのだ。タイヤの負担が大きいため運転席のモニターでタイヤの空気圧をチェックでき、搭載されるフルサイズのスペアタイヤの空気圧まで表示される。この機能についてエンジニアに装着理由を聞くと、グランエースは送迎用に使われるためパンクしてもタイヤ交換すればそのまま運行ができるためだという。まさに開発の視点は“商用車両”のそれと同じだ。

キャンピングカー向けにはどうなの?

グランエースを日本に投入した目的は、プレミアムホテルや高級旅館の送迎用車両としてのニーズの高まりに対応したからだ。インバウンド需要もあってこうした富裕層の送迎にはメルセデス・ベンツのVクラスなどが用いられているが、この車両をグランエースにスイッチしてもらうことが導入の目的。実際、現在の受注状況は法人が7割を占めるという。今年は東京オリンピック/パラリンピックが開催され、トヨタはIOC(国際オリンピック委員会)とモビリティ分野のクルマやモビリティサービスでトップパートナー契約を結んでいる。そのためオリ/パラの送迎用として導入されたのでは、という見方もあるが、どうやらまったく違うようだ。というのも、導入計画は早くからあり、ベース車の開発はプリウスなどから採用されたTNGAの開発時期よりも前だったらしい。フルの新規開発車にもかかわらずTNGAを名乗らないのはそうしたわけがある。また、異例なことに開発エンジニアはグランエースのライフ設定が11年を予定していることも明かした。2031年ごろまでこのボディを使った車両が生産されるわけだが、こうしたスケジュールは通常明らかにされることはない。

また、フルサイズボディのミニバンのためキャンピングカーのベース車両として導入したとの見方もあるが、これも違うという。架装車両の検討は今後の課題で、まずは送迎用の法人需要にしっかりと応えていくことが先決だそうだ。寒冷地向けの4WDの導入も、今後のニーズに対応して検討されるらしい。グランエースはアル/ヴェルを製作するトヨタ車体株式会社のいなべ工場で生産されるため、今後日本独自の車両がリリースされることも期待できる。

<文=丸山 誠 写真=山内潤也>

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